蜘蛛の巣

高黄森哉

少年


 僕は、蜘蛛の巣を、見つけました。その蜘蛛の巣の真ん中には、鮮やかな、ジョロウグモがいました。そして、その隣には、蛾が捕まっていました。蛾は、三センチくらいで、茶色で、毛が生えていました。


 僕は、その蛾はなぜ、蜘蛛の巣に、引っかかってしまったのだろうか、と、考えました。なぜなら、蜘蛛の巣は、朝露できらきら光っていて、蛾が見えなかった、ということは、ありそうになかったからです。


 不可解なことは、ほかにもあります。例えば、フラフープを設置したとします。一日に、蛾は、どれだけ入るのでしょうか。僕は、それほど入るとは思いません。


 つまり、蜘蛛の食事に間に合うだけの量の蛾が、あんなに小さな蜘蛛の網に、偶然、かかることなんてことは、考えにくいと思うのです。それでも、蜘蛛の巣に、蛾は、かかります。それは、どうしてなのでしょうか。


 もしかしたら、蛾は、なにか別の物と蜘蛛の巣とを、勘違いしてしまうのでは、ないでしょうか。僕は、蜘蛛の巣が、何に似ているか考えました。


 僕は、蜘蛛の巣は、ヒビ割れみたいだな、と思いました。


 まるで、宙に浮かぶ、ひび割れです。そう考えると、朝靄で光る蜘蛛の巣は、ひび割れて、その隙間から、奥の光が射しこんでいるように見えます。


 僕は、こういう仮説を立てました。蛾は、別の世界の生き物で、別の世界に、帰ることがあるのです。蛾は、世界のひび割れから、行き来するのです。蜘蛛はそれを知っていて、ひび割れに似た、網を張ります。蛾は、勘違いして、蜘蛛の巣に引っかかってしまうのです。


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蜘蛛の巣 高黄森哉 @kamikawa2001

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