第一章 エーファ王国編  「冒険者」

"MONDO"に転移して2日目、

俺は冒険者ギルドにいる。

これから冒険者登録を行うのだ。


昨晩、疾風の狼の面々と食事を共にしながら、

教会での洗礼やスキルのことなどを話した。


スキルの件では痛く同情されたが、

今後何かしら有用なサブスキルを手にすることを期待しようと

励ましを受けたのだった。

(もちろん"クラファン"や"ウィンドウ"の詳細は伏せている。)


「スキルもだが、当面はレベルを上げることに専念したほうがいいな。見た目と相反して赤子並の体力だと今後の生活が大変だぞ」

ノエルに諭された。

ウンウン、とライ・レイラ・セイラも頷く。


「明日冒険者ギルドに行くだろう? その時にそのまま冒険者登録をするんだ。そしてギルドにレベル上げの依頼をするといい。」


たまにお貴族様のレベル上げに冒険者が同行してサポートするそうだ。


俺が冒険者登録までする理由としては、徐々にレベルがあがれば、

薬草採取など一人でもできるだろうからだ。

まずは薬草採取まで一人で出来れば、金銭面の収入が安定してくる。


「この街では薬草の採集者があまりいなくてさ。ギルドでは常時薬草採取の依頼がでている。食いっぱぐれることは少ないはずだぜ!」

ライも初心者にはおすすめだ!と背中を押してくれた。


俺は頷き、明日冒険者登録と依頼を出すことを決めたのだった。





「では冒険者登録をこれから行いますね、ミクさん」

昨晩のことを思い出しながら、冒険者ギルドのエリザさんと話していた。


「・・しかし、”クラファン”ですか? 英知の書にも記載されていないスキル?」

ここでもスキルのことを最初に話し、エリザさんに一瞬残念な表情をされたが、

その後少し考え込むように


「”特技”扱いのスキルなのか、それとも・・・」

エリザさんは一瞬考え込むように呟き、言葉を終えた。


「ノエルさんがおっしゃるように、レベル上げしつつ、体力をつけることが大事ですね。」

薬草採取もできるようになれば、ギルドととしても助かりますとも付け加えられた。

やはり採集者は少ないようだ。


「それでは、このプレートにミクさんの血を一滴垂らしてください。」


エリザさんから渡されたシルバーのプレートに、血を一滴垂らす。

するとプレートが一瞬光り、俺の名前とランクが記載される。


"ミクトーマ Fランク"


「名前とランクが表示されるんだ。ランクはどこまであるんですか?」

エリザさんへ質問をすると


「ランクは、下からF・E・D・C・B・A・S・SSまであります。ギルドでの依頼は、そのランクに合うものまでしか受けることはできません。一般的には、Dからが一人前の冒険者という扱いになりますね。」


なるほど、シンプルでわかりやすい。

まぁ俺の体力(現代のころも含めて)Dまでいければ十分だな。


「ちなみに"疾風の狼"の皆さんは、パーティランクはBですね。皆さん個々でもBランクとなっています。」

あの若さでBランクはかなり優秀なのそうだ。


「ミクさんのレベル上げに"疾風の狼"に依頼するのが、事情もご存知な分早いのですが、さすがにBランク冒険者に依頼となると、高額になってしまいます。なので、Dランクの冒険者に依頼されるのがいいですね。」


レベル上げは、一般成人男性レベルまで上げるとしてレベル15が目標。

現在がレベル1だから、およそ一週間もあれば上がるだろうとのことだ。


ただ一週間も冒険者をキープするとなると、Bランクでは金貨5枚は必要となる。

それは流石に無理だな。。


ちなみレベル15までは5歳の洗礼式を受けた後、成長ともに普通は勝手にあがるそうだ。成人する年齢にはレベル15までは上がり、それ以上は日々の鍛錬や魔物との討伐でしかレベルは上がらないという。

ちなみにこの世界の成人年齢は、16歳。


自然とレベルが上がるとは言え、洗礼式から数年もかかるレベル上げが

ことも簡単に一週間程度で上がるのは

やはり魔物と戦うことでの経験値の習得が非常に大きい。


育つ環境によっては、幼い頃から魔物の討伐をすることで

成人時には高いレベルに達している者もいるそうだ。

(疾風の狼の面々がそうなんじゃないだろうか?)


「それではDランクの冒険者で、よさそうな人はいますか? できれば安く請け負ってくれる人がいると助かるのですが。。」


これから"クラファン"のスキルを実行するにあたり、できるだけ軍資金を確保しておきたい所だ。

この異世界も現代も変わらず、商品の仕入れに金は必須なのだから。


「そうですね、Dランク冒険者となると、ソロ冒険者のユーイさんがいいですね。魔法のスキルをお持ちですので、魔物との戦闘時は後衛から支援してくれますので、レベル上げがしやすいかと思います。」


魔法!それはとても興味深い。やはり異世界なら魔法だよなぁ!


ちなみに一週間の依頼料として、銀貨7枚程だ。

貨幣で換算するとランク付けでの差が、大きいことがよく分かる。


おれはエリザさんに依頼を正式にお願いすると、

お昼すぎにまたギルドへ来るように言われた。

その時に"ユーイ"さんとの顔合わせになるようだ。


俺は了承し、冒険者ギルドを後にした。


「さて、と。時間的にはあと二時間はあるし、少しこのネルソン街を探索したいところだ。」


ちなみにこの異世界も現代と同じ1日24時間、一週間が7日で、一年が365日となっている。

ネルソン街へ訪れる道中に、ローラから教えてもらった。

ただ時計のような現代機械はもちろんない。

その代わり魔道具としては存在しており、街の中央広場に大きな時計台が設置されていて、

人々はそれをみて時間を判断している。


貴族等は、個人で時計を所持しているようだが。。

(ギルドにも時計が設置されていた)


ギルドから街の中央広場まで出ると、そこには露天が数多く立ち並ぶ。


現代で言う"蚤市"ようだ。行き交う人々も多い。


「今後のクラファンに出品する上で、異世界での市場調査は重要だな。」


何か現代の世界でも興味を惹きそうな物がないか、露天の商品を物色する。

「うーん、生活用品ばかりだ。鍋や刃物に衣料品しか目につかないなー。」


嗜好品が少なそうな世界だし、そもそも蚤市なのだから仕方ないか・・ん?


香ばしい、お茶の匂いがする。

周囲に目を凝らすと、行き交う人に飲み物を振る舞う露天に目が留まる。


喉も乾いていた所だったし、店主からお茶を一杯購入する。


「おお。。ほっこりするなぁ。これは日本でいうお茶のような風味に近い。苦味が少なく、後味がさっぱりとしてとても飲みやすい。何だろ、背中の張りが引いていくようだ。」


昨晩宿屋の慣れないベッドで(くそ硬い)、背中や腰が痛かったのだが、それが嘘のように引いた気がする。


「店主、この飲み物は何ていうんだ?」


「ああ、これはネルソン茶だよ。ここの街の特産さ。なんだあんた、初めて飲んだのかい?なら身体の節々の痛みが引いたろ? これは痛み止めの効能があるからな。」


どうやらネルソン街周辺で採取した薬草を煎じた薬茶のようだ。


これはいい。。この薬茶は現代でも売れそうな気がする。

薬草採取を自分でやって、露天の店主に茶葉を煎ってもらおうか?

それかレクチャーしてもらって自分で作ってみてもいいな。

どちらにせよ、コストは抑えることができそうだ。


こんなに薬効が強力で、味もいいとなると

現代の世界でも恐らくウケるだろう。


ぶつぶつの金勘定を頭の中で思案する。

最初のクラファンのネタが出来た気がする。



「あとはこれがスキルレベルに応じた、"出品できる商品"なのか、だが。。」

ふと中央広場にある時計台を見上げると、

冒険者ギルドでの待ち合わせの時間が近づいていることに気づいた。


「とりあえずはレベル上げが先決だな。クラファンのことはそれからだ。」


俺は急ぎ冒険者ギルドへと向かうのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クラファンから始まる異世界冒険譚 クラファンおじさん @riku3939

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ