第38話 (最終話)見えたこの先。

今回の訓練は大成功だった。

もう少しロゼと居たいマアルの欲ぼ…もとい乙女心でカラーガで1週間の延長が決まる。

エスカ達はカラーガに行けばナハトの親、アルマとマアルの講師として歓迎されるし、スード達は家族旅行気分で着いてくる。

現に週一回の訓練以外は自由行動で、ミチトのお金とカラーガの手配で1ゴールドも使う事なく豪華なもてなしを受け続けた。


カラーガの街で妊婦が産気づくとプロ顔負けでアルマ達が赤ん坊を取り上げて妊婦にヒールを使う姿にナイワは泣いて喜ぶ。

サンクタも「アルマが男の顔で帰ってきた」と喜び、ロゼ相手に女の顔をするマアルをみて「娘が…」と少し嘆いていた。


だが薬学も料理もスイーツも貴族の令息令嬢の域を超えていて、更には戦闘訓練ではカラーガ騎士団に遅れを取らない…否、圧倒する内容にサンクタは本気で感謝を口にして礼をしたいと言い出す始末だった。


礼が嫌いでならないミチトはそれを全力で断って逃げるようにトウテに帰ろうとした時、エスカがナイワに「マアルさんとお約束をしたことがあって、良かったら今晩はトウテにお泊まりをさせて貰えませんか?もしダメでしたらロゼ君が送ります」と言う。


流石のサンクタもいい加減に渋い顔をしたが、それはミチト達が仕込んだ串焼き用の漬けダレが最初の味見に適した時期になっていて自身が捌いた鹿肉を漬け込んでサンクタ達に食べて貰いたいと言うものだったので送り出す事になった。


まあ、サンクタに関しては適当な発言であったがサンクタは嬉しそうに送り出す。


マアルはキチンと「母上、味が気に入ったら闘神様に作り方を教わってカラーガでも作りたいです」と言う。


嬉しそうに微笑んだナイワは「ええ、でも大変ではないの?」と聞くがマアルは「私、料理も好きになりました!メロお姉ちゃんみたいにはなれなくても頑張りたいんです」と言う。


もうこの言葉を前に誰もマアルの邪魔をしない。

アルマに行かないのかとジェードが声をかけると「いや、行きたいのは山々だったが、先程の事でカラーガの出産レベルは話にならないとわかったからこれから父上と話し合いをしたいんだ」と断られてしまった。



マアルは入り口から初めて入るスティエット村の敷地に感動をする。

冬が近づいても花は綺麗で夢の国みたいになっている。


マアルは口元を両手で押さえて「わぁ!先日は気付きませんでした!とても綺麗です」と喜びを口にするとロゼが自慢気に「へへ、俺とママとパパでやったんだよ」と教える。


マアルは「こんな素敵な場所がロゼくんのお爺様達の土地なのですね!」と言うのだが、ミチトは聞きながら「素敵って、住んでるのは初老の老人が3人だよ」と呆れるがマアルは関係なくエスカと共に鹿肉を切り分けると漬けダレに入れてしばらく寝かせる。


そしてエスカとミトレ、スティエット家10人とマアルを加え、ナハトとナノカも参加して皆で漬けダレに漬けこんだ肉を食べる。


皆大喜びでイブとライブは子供よりも喜ぶ。

その時にまたトゥモ達が「山爺ちゃん、山婆ちゃん、新しい家をもらってこの家を俺達に頂戴!」と言う。


この言葉にジェードが「パパがこの家をズメサまで運ぶけど新しい家を山爺ちゃん達に作ってもらうからさ!」と言い、シアが「お願い!」と続ける。


返事に困ったエスカが「そんな事…、ミチトはやれるの?」と想像もつかない話なので確認をするとミチトは「まあ、それくらいなら余裕ですけど…」と言ってから子供達を見て「欲しいって別荘にするんだよね?この家古いから手間だよ?」と確認をする。


ロゼが「大丈夫!俺達が掃除に来るよ!」と言うとトゥモが「パパなら場所とか考えてんじゃないの?」と聞く。

ミチトは家を見てから「まあ…考えてるよ」と言った。


「ソリードさんと母さん達の家の真ん中に置こうかなと思ってるけど…、でも決めるのは母さん達だよ」


ミチトはそう言って子供達がエスカを見た時、エスカは既に決めていた。


「ズメサにこの家があればミチト達は来てくれるかしら?」


ミチトが答えに詰まるとイブとライブを筆頭に子供達が「行くよ!」と言う。

これだけでエスカは涙を見せながら「嬉しいわ」と言った。


何となく色々なモノが見えたミチトは「…冬を超えて春になったらにしましょう。新しい一年からキチンと始めればすぐに村人になれますよ。ズメサの人達はいい人達です」と言った。



この言葉に皆が沸きライブが「ミチト!また家族の日がしたいよ!」と言うとリナが「私もだよ」と続き、イブが「ミチトさん、私も!」と言うとアクィも「勿論私もよ」と言った。


ミチトは家を見ながら「わかったよ。第二の別荘にしよう。ロゼの日にマアルもくる?」と聞くとマアルは「いいのですか!?」と喜び、ロゼは「俺はお兄ちゃんだからね」と答える。


ジェードが「じゃあ俺たちの日にアルマも呼ぼうぜ」と言うとベリルが「アルマ!お兄ちゃんしてくれるから嬉しい!」と続いてミチトはヤキモチの顔になっていた。


遠くカラーガでアルマは悪寒が走っていた。

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剣術大会と山での暮らし。~俺、器用貧乏なんですよ。外伝~ さんまぐ @sanma_to_magro

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