第17話エピローグ

 大将軍老弦の謀反は、帝国全土に不安影を落としてしまう、同時に帝都に対する不信感まで与えてしまった。 

 さらにこの状況中で武臣とうたわれた昌景の死が止めとなり帝国内部は三カ国に分裂する内乱状態へと発展してしまう。


 この状況に対して皇帝は昌景の遺児である。昌月を侍大将に昇進させると同時に近衛府の指揮任せるという。前代未聞の決断を下す、さらに大将軍府を解体をさせ新たに侍所という新たな部署を作り上げる。この決定の後、皇帝は心身の疲労により倒れてしまい、代わりに息子が継ぐことになりさらに帝国は不安定な時期にはいる。


 軍の八割方を収める形になった昌月は事実上この国の軍事部門トップとしてこの帝国を支えなければならなくなってしまう。


 「まさか、自分がこの国を命運を握る立場になるとは夢にも思わなかったな……」


 帝国の少し外れにある小さな墓地で昌月は手を合わせている。そこには父親の墓と根室の墓が並んでいる。


 あの後根室は出血多量で失血死した為に近衛府をまとめる者がいなくなってしまい。代わりに昌月が継ぐことになってしまったのだ。


 「父さん、これから自分は何をすべきかな?」


答えるはずの無い墓地に向けてボソリと呟く、何か喋っていないと不安で押しつぶされそうになってしまいそうになる。


 自分の立場、存在意義を改めて確認してしまい深い溜息を零してしまう。今更どうにかなる事では無いのだが少しだけ父の気持ちがわかるかも知れないと思えてしまう。


 「今度はいつになるか、わからないけどまたそのうち遊びに来るよ。その時は楽しい話が出来ることを祈っているよ」


それだけ告げて、昌月は墓地を後にし新しくできた侍所へと向かいその門を開く。


 「遅いぞ、昌月!待っていたぞ!」


そこには鎧をつけたたくさんの兵達の出迎えで陽気に話しかけるのは忠幸だった。


 何も言わずに、無視しようとするが横でクスッと笑っている女性がいた。


 「お父さんに挨拶はしてきたのですか?帝国の侍大将軍殿?」


憎らしげな笑みを浮かべ志帆はからかってくるのだが今は少しだけ助かってしまう。少しだけ重くのしかかっているものが和らいだ気がするのだ。


 「まぁな、それより今はどういう状況になっているんだ?」


志帆の皮肉をサラッと流しつつ、ひとりの兵士に尋ねる。


 「現在我々は、帝都より離れた国境線での防衛線に苦戦しております。なので応援が必要かと思います」


「よし、ならこれより我々は彼等の援軍として向かう、皆の者出陣の支度をしろ!!」



「「「おう!」」」


大量の兵士達の声と共に戦支度を始め皆自分の取り掛かる中、志帆が昌月の方に足を進める。


 「どうした?志帆」


少し不機嫌そうな志帆に聞くが何も答えない。顔を覗こうとしたらプイッとそっぽを向かれてしまう。


 「しょうがない奴だな。」


さっきのを無視された事に腹を立てているらしくこ仕返ししている様だ。


 「行くぞ!相棒!頼りにしているのだからな」


肩にポンっと触れてそれだけ告げると彼女は機嫌を良くしたらしく目をキラキラさせながらついてくるみて、彼女に笑顔を向ける。


 「(父さん、これからは自分がこの帝国の為に必死に戦います。多分父さんと同じ様にはできないかもしれないでも、この責任の重さは同じだと思っています、だからな父さんと同じようにこの重責に悩んで苦しみます。だからよく見てください!自分の生き様を!!」)


昌月は、馬に跨り全員に出陣の合図をかけ、先頭を駆けていく。それは己が重責を全うする為に焦っている様にも捉えられてしまう。だが今の彼はただ純粋に目の前の困難に立ち向かう、英雄にも見えてくるのであった。


 その後の彼は、生涯のほとんどを戦場で過ごす事になる。「昌景の再来」といわれ帝国の名将録にも載るが、死因がわかっていない。行方不明扱いなってしまっていて彼の墓もわからない。


 唯、わかることは、父親の重責を背負って必死に足掻いて、帝国を復活させた人物として語り継がれている。


 


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

受け継ぐ者の重責 @kasugamasatuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る