ド甘

失恋した若いOLと、ぶっきらぼうな甘党小説家のラブコメです。
物語は会社員・糀谷胡桃が恋人に振られたことをきっかけに、隣に住む変人小説家・佐久間凌に手作りタルトを差し入れるところから始まります。

作者はこの出会いを通じて、ふたりの距離が徐々に縮まっていく様子を巧みに描いています。
佐久間も胡桃も恋に対してはこなれていないというか、その辺の小学生のほうが上手に恋をしていそうなレベルなのですが、そのポンコツっぷりがコメディ部分として秀逸です。

物語の進行に伴い、胡桃が佐久間にお菓子を差し入れることが習慣化し、ふたりの関係は次第に深まっていきます。
その過程で胡桃は失恋の痛みを徐々に忘れ、佐久間も彼女の存在を受け入れ始めます。
お互いの心の距離が縮まるにつれ、読者も胡桃と佐久間の関係を応援せずにはいられなくなります。

この物語の魅力は、甘いお菓子を通じて描かれる心の変化と登場人物たちの成長です。
胡桃のお菓子作りは彼女自身の心の支えであり、佐久間に対するコミュニケーション手段としても機能しています。
また、佐久間のぶっきらぼうに見せかけた極度の気遣いしいな性格と甘党というギャップが、彼の魅力を引き立てています。

さらに、登場人物たちの周囲には、個性豊かなキャラクターが揃っており、彼らの人間関係も物語の楽しさを増しています。
また、本作には勿論二人の恋の山となり谷となる役目を与えられたキャラクターも存在しますが、そういったキャラクターでも読者の不快感を刺激する性格ではないという点が評価に値します。

余計なヘイトを発生させないため気持ちよく読めるかと思われます。

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