第2話 酒∞ in アイテムボックス
『.............あ!聖女様がお目覚めになりました!』
『おぉ...聖女様は瞳も宝石のようにお美しい。』
『国王様はもうすぐご到着なさるそうです。』
「...はぁ??」
アル中予備軍社畜独身女は豪華絢爛な部屋のふかふかベッドに寝かされていた。
もちろん女の知らない場所であり、知らない人だらけである。
女が周りをキョロキョロ見回していると、扉を叩く音がした。
コンコン
『国王様がいらっしゃいました。』
[これはこれは...なんと美しい聖女だろう。まさに神がお送りになられたお人だ。]
「ちょいまち、アンタ誰なん?あとここどこ?」
[そうだね、名乗りもせず失礼した。わたしの名はロベルト・アンヴィテレス。ここ、レノーヴァ王国の国王だ。]
「レノーヴァ王国ぅ?聞いたことないわ。日本からどんくらい離れてんの?」
[ニッポン...とは、聖女様がもともとおられた場所ですかな?]
「そうだけど。そもそもなんでアタシここにいるわけ?日本に帰りたいんやけど。あとその"聖女様"って呼び方やめてくれん?」
[それは失礼。では聖女様のお名前を聞いても?]
「アタシの名前は早川 瑠偉《はやかわ るい》。」
[ルイ様、綺麗な響きだ。それでは、全てお話すると長くなってしまいますから、結論から言いわせてもらうと、ルイ様はわたしたちの"聖女召喚の儀"により、レノーヴァ王国100代目の聖女として召喚されたのです。]
「へぇ〜、なんか凄いんやね。それで?なんでアタシ召喚されとん?」
[実は、5年前に神様からのお告げで魔王復活の予告が知らされたんですよ。]
「あ、じゃあさ、アタシは魔王さん倒す為にここに来たってことよな?」
[えぇ。そのとおりですルイ様。お告げがあった5年前から魔王はだんだんと力をつけているのです。今まさにレノーヴァ王国は危機に直面しています。ルイ様は勇者一行と魔王討伐を成し遂げて頂きたい。]
「行かん。」
[......ん??聞き間違いかな?今行かんって...]
「聞き間違いちゃうよ、アタシ行かんって言った。」
[なんとっ...!?]
ザワザワ...
瑠偉の返事に、この部屋にいる執事やメイド、護衛騎士が少しずつ騒ぎ始めた。
[皆静まれ。]
国王の一言で部屋は静まり返る。だが困惑の視線は瑠偉に向けられたままである。
[ルイ様、行かれない理由を教えて下さい。]
「魔王さん倒しに行くなんていかにも面倒くさそうな話やん。絶対大変だし忙しいやろ?そうなったら酒、飲めれんし。」
[は???]
部屋にいるものは皆開いた口が塞がらない。
なぜなら聖女としてはありえない単語ばかり出てきたからだ。
特に酒。
[酒...ですか?]
「そ、酒。アタシお酒大好きなんよ。日本の酒はホンマに美味いけん。」
[いやでも、このままだとこの国は血の海になってしまう!だからどうか魔王討伐に行ってくれませんか??この国で1番旨い酒も用意しますよ??]
「このままだと人が死ぬん?それは嫌やなぁ。でも酒も捨てるわけにはいかんのよな。しかもこの国の旨い酒やなくて日本の酒用意してくれたんなら考え直したんやけど...」
[お願いです...!そこをなんとか...!.........あ、そういえば]
「?」
[ルイ様は聖女なので、とても高い魔力をお持ちのはず。つまりアイテムボックスが使えるはずです。その中に"故郷の一品"という名のアイテムが入ってませんか?ルイ様は話を聞く限り、相当な酒好き..."故郷の一品"がニッポンの酒である可能性があります。]
「ホンマ?!そのアイテムボックスってどうやって出すん?!それ王様も使えるん?」
[はい、わたしも使えます。アイテムボックス・オープンと唱えれば出ますよ。]
「アイテムボックス・オープン!」
(日本の酒よ...また会いたい...!)
瑠偉は酒のことしか頭になかった。
フォンッ
「すごっ!出た!えーと、あ、あった!"故郷の一品"!」
[その中身は..?]
「酒∞って書いとる!!すごっ!これ画面タップしたら出てくる?」
[え、あ、はい。]
(((まさか本当に聖女様の"故郷の一品"が酒だとは...)))
そう思う一同であった。
ピッ ヴンッ
「あぁっ!!これやこれ!日本の酒や!!これが無限に出てくるとか...嬉しすぎるわぁ!!」
プシュッ
瑠偉は早速缶ビールを開け、豪快に飲み干した。
「〜プハァっ!うんまっ!!味も変わってないやん!あと3本飲んだろ〜!」
そう言って次々と缶ビールを飲み干していく。
その様子を目の当たりにしている人は皆、こう思った。
(((酒をイッキ飲みしてるこいつ、聖女だよな...???)))
召喚された100代目の聖女、アル中予備軍。 まーらく @ma-rakukuma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。召喚された100代目の聖女、アル中予備軍。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます