召喚された100代目の聖女、アル中予備軍。

まーらく

召喚された100代目の聖女、アル中予備軍。

第1話 アル中予備軍社畜独身女、四畳の狭い部屋で。

深夜、人気が無くなった道を終電を逃した女が歩いていた。

......なぜかウキウキ気分で。


女は立派な社畜だった。

今日も睡眠時間が1時間半のくせに、馬車馬のように仕事に取りかかり、終電を逃してまで残業をこなした。現在時刻は午前1時30分。


少し歩いて女は通行人とすれ違った。通行人は驚いた顔をして女を見る。

女は美しい容姿をしていた。

身長は170センチと女性にしては高身長で、モデルのようにスラッとしたスタイル。

綺麗な二重に高い鼻、プルッとした唇に透明感のある肌、黒髪のサラサラロング。

これを美人と言わない人はいないだろう。


通行人は財布を落とし、気づかずそのまま歩いていた。

すると女がすぐに財布を拾い届けた。


女は優しかった。


通行人は、こんな美人と付き合ってる男ってどんだけイケメンなんだろうと、去り際に想像する。


女は31歳独身だった。

仕事ができて(社畜)、容姿端麗で優しい。

こんな優良物件なかなか無いのに、なぜ恋人がいないのか。


答えは簡単。


女はアル中予備軍であった。

ワイン、ビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、テキーラさらにウォッカにラムetc.

度数の弱いものから強いものまでほぼ経験済みだ。

しかもこの女、酒にすこぶる強い。なんと恐ろしいことだろう...。


残業こなして終電逃した身でも、家でありったけの酒が待っている、頭の中にはそのことしかないから女はウキウキなのだ。


女はこのアル中予備軍であるせいで、今まで何人もの男に振られてきた。

「彼氏より酒を優先するお前にもう耐えられない」と。

だがしかし、いつも酒の優先順位を上げていたのは紛れもなく男側であった。

浮気だ。

どれも、男が「こんなイイ女が自分を好きになってくれたなら、他の女もイケるだろ。」と自惚れた結果だった。


そして昨日、女は2年付き合っていた男に振られたばかりだった。


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帰宅した女は手も洗わず冷蔵庫に直行。

そして中からキンッキンに冷えた缶ビールを取り出し、ちょっとお高いオキニのジョッキに注いだ。



「アタシ、生きててエライッ!かんっぱーい!!!」



女はオリジナルの乾杯をして、いつも通りビールをイッキ飲み。



「ぷはぁ〜っ!!さいっこ〜やわぁ!やっぱり酒は男と違って裏切らんなぁ!www............ハハハ...ほんっとなにやっとんやアタシ...またおんなじ事繰り返して...」


「なんか、どっか行きたいなぁ、そんでもう帰ってこんわ。」



パァァァァァ



「へっ、はぁっ?!」



女がボソッと呟いたとき、床が突然光った。



「ちょっと?!なんやコレ!いたずらやめや!」



だんだん周りも光輝き、最後には女を包み込んだ。



「出してや!なぁって...!...あれ、これ...なんや...眠く、なるわ...」



遠のく意識の中で、アル中予備軍社畜独身女は一言、



「......酒だけはぁ...どうしても、離さん...からなぁ...」



最後に言い残して、この世界を離れた。










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