エピローグ 平和な世界

 魔王との戦いが終わり、一か月が経過した。


 東京は今日も何もなかったかのように、いつも通りの平和が続いている。


 道には笑みを浮かべて走り回っている子供たちと、誰かは分からないけれど幸せな笑みを浮かべて電話をしながら足早に歩く男性、時計塔の下で自身の時計を見ながら嬉しそうに笑みを浮かべる女性。


「にぃ~これはどう?」


 七海が呼ぶ声に答えるように見下ろしていた景色から目を離して後ろを向く。


 照明の下で可愛らしいふりふりのミニスカートを披露してくれる七海に思わず笑みがこぼれた。


「相変わらず何でも似合うな」


「え~にぃってさ。いつも可愛いとか似合うしか言わないよね!」


「それはな。全部七海のせいなんだぞ?」


「えっ!? 私のせい!?」


「そうそう。七海が世界一可愛すぎるから、寧ろ似合わないモノを探す方が難しいんじゃないかな。彩姫に頼んで探してもらおうかな」


「え~! う、嬉しいけど、そんなもの探してもらわないでよ!」


 複雑な表情を浮かべた妹を見て、笑いが自然とこぼれた。


「にぃってさ。ここから見下ろした景色って好きだね~」


「そうだな。みんなが平和に生きている景色がな。お父さんたちが守りたかった世界ってこういう世界だったんだろうなと思ってさ」


「うん! 私もそう思う!」


 すぐに俺の腕に絡みついて一緒にビルの外の景色を見下ろす。


 中には泣き出している子供もいるが、すぐにお母さんに抱きしめられ泣き止むと、また友達に向かって走っていく。


 転んでケガしてもまた立ち上がり走る。それは人本来の姿だ。


 魔物に怯えて都から出ることなく、不安に震えながら生きる毎日だった俺達人類には大きな一歩が起きた。


 魔王を倒した世界日本は大きな平和が訪れてエリアも魔物から奪い取っている。というのも挑戦者としてエリアに向かうのは俺と七海と――――


「二人とも~そろそろ行くわよ?」


 腰まで伸びている美しい赤い髪をなびかせて入って来る美女は、入るや否や優しい笑みを浮かべて俺を見つめる。


「あ~! ナギ姉はにぃに近づくの暫く禁止だからねっ!」


「そうだったわね。七海ちゃんに許してもらえるまでは近づきません!」


「七海に許可もなく、にぃに、き、き、きっ…………キスしたのは許さないんだから!」


「うふふ。蒼空くんは悪くないからね? でもそれってことは――――七海ちゃんに許してもらったらしてもいいの?」


「え~! だ、ダメっ!」


 凪咲にいたずらに誘導されて七海が焦り始める。


 実は戦いの全貌はテンペストを通して七海と彩姫も見ていたようで、最後に俺が凪咲にファーストキスを奪われた場面としっかり映っていたそうだ。と、凪咲もファーストキスだったらしくて、それがまた七海にとっては大きな衝撃だったらしい。


 実は今でも凪咲を直視できない。


 あの日に伝わって来た唇の柔らかさが思い浮かぶからだ。


 それに最近は七海がいないところではわりと大胆に腕に絡んで来たりもする。いつも「七海ちゃんと違って当たる部分もあるわよ!」と敵意を剥き出しにしていたりする。俺からするとあまり当てないでもらいたいんだけどな。


 七海が俺と凪咲の間で一緒に腕を組んで外に出ると、待っていたように着物を着ている彩姫が笑顔で出迎えてくれる。


 すぐに俺の左側に来て、腕に絡みつく。最近彩姫も容赦がない。


 どうやらキスの一見から七海と彩姫で俺の両手を塞ごうとして、凪咲VS七海と彩姫の図になっているけど、実は彩姫が一番得していると自分で言っていた。


 まあ、これももう少しすると大丈夫だと思うけど、凪咲は現状を非常に楽しんでいて、最近は小悪魔のようにも見えて来た。


 俺達は彩姫のお店を後にして、エリア攻略の休日を堪能するために街の中に入っていった。


 多くの人波が流れる中、俺達もその一員となり、街の人波を彩る。


 両親が守りたかった世界は、俺達がゆっくりと平和に暮らせる世界で、街を堪能していると両親と会える気がする。


 俺も七海も凪咲も彩姫も、毎日この平和を堪能しながら、これからも守っていくと誓った。





 ――――【完結】――――


 ここまで『最強天能を持つ無能の成り上がり~試練を乗り越えて世界の救世主となるか魔王となるか~』を読んでくださりありがとうございます!


 最後は少し駆け足になったエンディングになりましたが、いかがだったでしょうか? 皆さんにとって何か一つ記憶に残る作品になったなら非常に嬉しく思います。


 当作品は作者の2023年の初めての完結作品であり、長編12作品目の完結作品になります。


 ここまで文字数を重ねて来てもまだまだ足りない部分が多いなと感じる作品でした。2023年も面白い作品を追求して、より多くの皆さんに届く作品を作っていきますので、これからも御峰の応援をしてくださると嬉しいです!


 他にも完結11作品があったり、連作中の作品があったりと楽しめる作品が沢山ありますので、覗いてみてください!


 それでは、またどこかで会いましょう!


 最後まで読んで頂きありがとうございました~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最強天能を持つ無能の成り上がり~試練を乗り越えて世界の救世主となるか魔王となるか~ 御峰。 @brainadvice

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ