セリフでノベル。

維 黎

お後がよろしいようで。

「――現場からの生中継です。本日は激辛らーめん専門的で有名なここ『この世の果て』さんからお送り致します。さて『この世の果て』さんでは週末恒例の超激辛地獄企画『偽物の仮面フェイクフェイス』を開催しており、本日も続々と挑戦者が集まっております。それではここでこの『偽物の仮面フェイスフェイク』の内容を簡単にご説明させて頂きます。この企画には5名1チームで参加して頂き、それぞれ同時にらーめんを食べてもらいます。ただし、5人の中の1人にだけ普段店では出さないほどの超激辛らーめんが出されます。そして別チームの代表者1名が5人の中で誰が超激辛らーめんを食べたかを当ててもらい、当てられたチームは負け、当てたチームが勝ちの勝ち抜き戦でチームバトルをして頂きます。激辛らーめんを食べるチームは、誰が激辛を食べているかバレないようにポーカーフェイスをする、もしくは全員が激辛を食べている風に演技をして回答者を欺いてもらいます。まさしく『偽物の仮面フェイクフェイス』の名の通りの企画となっております。さぁ、それでは準備が整ってきたようです。店内には目がつーんとなるようなヤバい香辛料の空気が漂い始めました。風雲急を告げるかのように先ほどから店の外ではバケツをひっくり返したような、100年に一度とも思えるすごい雨が降っております。さぁ、対決するチームの先攻後攻が決まったようです。まずは先行、チーム名『カク』さん。後攻、チーム名『スケ』さんと決まったようです。ここは『ヨム』さんじゃねーのかというヤジが飛んで参りましたが、私もそう思います。さて、5名の前にらーめんが運ばれ――おぉぉぉっとぉぉ! これはすごい! なんとらーめんが宙に浮いているではありませんか! なんという光景! ほんとうにすごい! 実はこれには秘密がありまして、こちらのお店では高透過ガラス丼を使用することによって、このようにらーめんが宙に浮いているように見えるのです。グルメレビューサイト『食べゲロ』では『らーめんから丼を除いたようだった』との感想も度々書かれているとか。さぁ、それではそろそろ始まるようです。おっと、ここで5名全員がコップに水を注いで、一回、二回と頭にぶっかけております。これは――はい。はい。なるほど……。え~現場での聞き取り取材によりますと、どうやらこれは5人全員がトチ狂った訳じゃなく、汗対策とのことです。なるほど、一人だけ大量に汗をかいたら即バレですからね! よく考えられています。バカなのは舌だけのようです。ちなみに店主に辛さの度合いを聞いたところ『おーっほっほっほ♪ 私の辛さは53万です』と訳の分からない答えが返ってまいりました。さぁ、ここで全員が箸を持ちました。いよいよ――スタートぉぉぉおおっとぉ、一人が悶絶してひっくり返りましたぁぁ! 彼です! 彼が53万辛さのらーめんを食べたのでしょう! 床をのたうちまわっています! まさに地獄です! そして企画としては何の面白味もありません。生中継としても地獄企画となりました! 後日の幹部会議が心配です。それではここでスタジオと繋いで天気予報を聞いてみましょう。スタジオの気象予報士さ~ん!」

「は~い♪ こちら気象予報士で~っす♪ それでは天気予報をお伝えしてまいりま~っす♪ 本日は日本全国で晴れ♪ 雨は一滴も振りませ~ん♪ どこでも超お散歩日和でぇ~っす♪ 以上でぇ~っす♪ リポーターさ~ん、お返ししま~っす♪」

「ちょ、ちょっと待ってください、気象予報士さん! こちらでは雨が降っていますよ、ものすごく! 店の外は数メートル先も見えないくらいのすごい豪雨ですよ?」

「そんなのありえませぇ~ん♪ 日本全国都道府県どっこも雨は降りませ~ん♪ リポーターさんは一体どこにいらっしゃるんですかぁ?」

「この世の果てです」



――了――

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