第10話 臭い沼は油田だった

「シャイアン酋長、明日からの調査目標はミシシ川から離れ東、あちらの方向に変えて下さい」

 何を考えて居るのか、不明の錬金学者アボガドロが夕食時突然話し掛けて来た。

「東に行けば、森の深部に向かう事になる、かなり危険な調査になるぞ」

「承知して居りますが、私の…錬金学者の感と言いますか、素通りすると後悔しそうで、ままは承知の上で是非東を調査させて下さい!」


 簡単な流し調査のつもりで、小集団の調査だったがアボガドロの熱意に負けて、調査方向を変更する事になった。


 翌日僕達は、大森林の深部にわけ行った。


 アボガドロは先を急ぎたいようだが、植物学者のエミリーと鉱物学者のロドルフが度々たびたび立ち止まって動かない。


 そんな調子なので、其ほど深部に入れず3日目、辺りに異臭が漂い出した。

 アボガドロが、僕の制止を振り切って走り出した。

「もう!何なんだよ!」

 僕達もこの未開地の調査は興味が有ったけど、もうこの学者達と行動を共にするのは嫌だよ!


 放置も出来ないので、異臭が濃く漂う方向に向かった。


 暫く臭いのきつい方に行くと、アボガドロが沼に手を突っ込んで凄い笑顔をしてる場面に出くわした。

「臭っさ!!」

 何なんだよ!気でも違えたか?正気とは思えん奇行のアボガドロにちょっと引いた。


「この臭い沼の話は聞いた事がある、ナマズも住まん毒沼だ」

「酋長!!大発見です!自然に涌き出た油田です!!!」


(ユデンンとは何だ?臭い毒沼が其ほど嬉しい発見か?)

 もう帰りたいよ!

「大急ぎ帰りましょう!!機材を揃え即、油田開発を行います!」


 エミリーとロドルフも意味が分かって居るようで、帰る事に賛成みたいだ。

「急ぎ帰還する!」

 訳は分からんが、帰れるなら問題無い。

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西部のシャイアン 犬時保志 @ysxyz

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