モヤモヤとするバカップルだけど、応援したくなる不思議な世界です。

思いつくまま綴らせていただきます。
 
この小説にはモヤモヤとしながら、ほのぼのとする作風が感じられる。その秘訣は三つずつの小説の舞台と登場人物のキャラではないだろうか。

作品の舞台は武蔵野台地にある……
武蔵境すきっぷ通り商店街。
主人公が同棲する最寄りのアパート。
ピクニックデートを楽しむ井の頭公園。
 
作品の愉快な登場人物は……
のんきでありながら健気な主人公の泉。
優しさ感じる彼氏となるプー太郎の光。
ふたりの関係を心配する親友の巴菜。
 
冒頭でアラサー同士の女性が商店街を歩きながら何気なく交わす言葉。ひとつひとつにふたりの仲の良さを感じてくる。

合わせて、プー太郎の光と主人公の泉の関係が読んでいて心地良い。ここには暗い雰囲気など微塵もない。まさに、作品のタイトルとなる「結局愛に理由なんてない」
そんな繋がりだ。少しだけ、現実離れしていても良いじゃないですか……。ふたりに愛という夢があるならば!
 
作品に描かれるピクニック、エプロン、サンドイッチなどのカタカナ言葉の響きが小説に優しさを添えてくれる。女性作家ならではの心弾む言葉遣いである。
 
井の頭公園でのピクニックの為にプー太郎が作るランチボックスの中身は如何に? 興味がそそられてゆく。開けたら、驚くパンドラの箱になってしまうのも知らずに。でも、泉の健気な姿勢が素晴らしい。若いふたりには希望があってもいいよね。

 
けれど、エンディングで立ち込めるモヤモヤするコーヒーの香りにも親友の優しい気持ちが込められていたのではないでしょうか?
 
「仲良くイギリスへ行ってらっしゃい」と応援したくなる作品でした。