『初心(ウブ)な恋愛はいかがですか?』
アル
第1話 恋愛リアリティーショー
2022年現在、若者を中心に流行っているものがある。それが、高校生恋愛リアリティーショー『初心(ウブ)な恋愛はいかがですか?』通称『ウブ恋』。ADAMA TVというものに契約することで見ることができ、月額980円。今や契約者数が2000万人を超え、『ウブ恋』のフォロワー数は1500万人越えと、4分の3は『ウブ恋』のために契約してると言っても過言では無い。SNSのフォロワーも合わせればもっといく。
『ウブ恋』が人気な理由は様々だ。出演者のレベルが高かったり、その辺のバラエティ番組より面白かったり、何より高校生のウブな恋愛を応援しながら観てみたり。大バズりしているだけでなく、SNSでの情報解禁、公開もマメに行われている。その為、『ウブ恋』総合プロデューサー兼ADAMA TV取締役社長の黒宮零は「令和の天才」と何度も雑誌やTVなどで特集が組まれているほど。
黒宮零はただの天才ではない。その美貌も凄まじく、40代とは思えないほど若々しい肌に背中まで伸びた綺麗な黒髪、大きな胸に引き締まったお尻。それも相まってTVや雑誌に引っ張りだこ。まさに令和を象徴する1人と言っても過言ではないだろう。
そんな黒宮零の息子、黒宮蒼真は今年から高校1年生となるのだが、今、大きな問題に直面していた。
「..母さん、今なんて言った?」
「だから、蒼真、次のシーズンの『ウブ恋』に参加して欲しいの!」
「いやいや、急に何言ってんだよ!無理に決まってんだろ!」
「次のシーズン、今までで1番盛り上がるものを作りたいの。女子メンバーは決まってるんだけど、男子メンバーのあと一人が決まらなくて。どうしようってなってたんだけど、蒼真がいるじゃん!ってなってね」
「待ってくれ、なんでそこで俺が出てくるんだよ...俺なんて母さんが有名人である以外、普通の高校生だぞ?俺が出たところで盛り上がりにかけるのは目に見えてんだろ」
「あんたが普通だったら男子高校生みんなカナブン以下よ。前から言ってるでしょ、髪を切って服装を整えれば蒼真は超イケメンだって」
「母さんはそう言うけどさ、中学の時1回それを実践してみたけど、女の子1人も目も合わせてくれないし、話しかけても顔を真っ赤にしてどっか行っちゃうし。挙句の果てに街を歩いてたら変なおじさんとかお姉さんに名刺を渡されるし、散々だったんだから...てかカナブン以下は言い過ぎだろ」
「はぁ、相変わらず自己評価の低すぎる子。とにかく、蒼真を参加させることは決定なの。拒否権は無しよ。」
「断ったところで無理やり参加させるんだろ?わかったよ、やればいいんだろやれば」
「よし!これで次のシーズンの『ウブ恋』は過去一で盛り上がること間違いなしよ!うふふ...楽しみだわ...」
という感じで、何故か俺があの『ウブ恋』に参加することになってしまった。最悪だ、これからの高校生活は穏やかに、楽しく過ごそうと思ってたのに。目立つことが確定した今、その未来は崩れ去ってゆく。
そもそも俺なんかが出たところで叩かれるに決まってる。『ウブ恋』に過去参加していた人達は皆キラキラしていて、後に俳優やアイドルなど多方面で活躍している人達ばかりだ。次のシーズン、母さんは過去一で盛り上がること間違いなしって言ってたから、参加者のレベルも高いはず。俺は確実に浮くだろうな。
参加するにあたって、母さんから「美容院と服屋に行ってきなさい。店は私が選んでおいたから。服のピックアップも終わってるから、それ買ってきなさい」と言われたので、すぐに行動する。まず髪を切りに行き、その後は母さんがピックアップしてくれた服や小物を買う。気づけば、明日から撮影の日となった。
撮影日に向けての準備はなにも身だしなみを整えることだけではない。同じ出演者の情報を調べることも準備のうちのひとつだ。『ウブ恋』は放送開始と同時にSNSなどで出演者の情報が解禁されるシステムなのだが、もちろん出演者は事前に知ることが出来る。今回俺が参加するシーズンは男女4人ずつとなっており、その内の女の子の1人がリベンジメンバーらしい。
「まじかよ、今回のリベンジメンバーって、真珠ちゃんなのかよ!」
なんと、リベンジメンバーは俺の推しである白川真珠(しらかわまじゅ)ちゃんだった。これは嬉しい誤算であり、これで参加への意欲も十分だ。
真珠ちゃんと言えば、前回の弾で男子の参加メンバー全員から告白されるほどの可愛さ、美貌を兼ね備えた女の子である。身長は155cmと小柄だが、推定Gカップと言われている大きな胸をもっている。顔も可愛く、たわわな胸を持ちながら非常に穏やかで謙虚な性格から人気が大爆発。今現在ミンスタのフォロワー数は300万人越えで増え続けていることを考えると、今回の弾でまた一気に増えることは確実だろう。
「でもな〜、なんか真珠ちゃんみると懐かしい気持ちになるんだよな...うーん、気のせいだと思うけど」
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「...これ、夢じゃないよね?」
時を同じくして、今回の参加メンバーを見て喜ぶ者がいた。
「そーくん...やっと会えるね。ふふ、もう絶対離さないよ?」
『初心(ウブ)な恋愛はいかがですか?』 アル @arufred
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