12月2日金曜日
私は
***
今日ものんびりとテレビを見る。
ファンヒーターのほんのりとした温かさが昼寝でもしようかと思うほど心地よい。少しガスの匂いがする。自分の変化も感じる。
感じなかった頃を思い出し胸が締め付けられる。こうして干渉に浸るのも有意義な時間、とでも言うのだろうか。
『陶芸は、極めると手触りと音でわかる。土の感触とろくろの音。作っている時は邪念を捨て土と向き合う。これこそ陶芸の魅力なのです。』
テレビを見ていると昼の情報番組からこんな文言が聞こえた。陶芸は極めると見なくてもわかる。ならば、見えなくなった後の趣味にできるかもしれない。
ネットで調べてみると、今家にあるものでできるかもしれない。やってみようかな。
***
パソコンと長らく向き合い、必要な道具を揃えることができた。
今回ろくろは使わずに手びねりと言う方法で作ってみる。冬は手びねりが主流らしい。
手びねりをする木の板を庭に行って調達する。
今日の天気は快晴だ。今まであまり気にしなかったが、私の家の庭はよく手入れがされていることに気づいた。母が手入れをしているのを子供ながらに見ていたが未だに継続していたのか。
ここで写真を一枚。雲ひとつない快晴に明るく咲くクリスマスローズ。
クリスマスには目が見えなくなるのも実感が湧かないな。クリスマスローズが綺麗に咲いている。儚いようで慈しみを感じる。
土は倉庫にあった陶芸用の土を用意。なぜ、あったのだろう。
いざ、陶芸の世界を体験してみよう!
***
格闘すること、30分。まずは土を柔らかく練ることに苦戦。
叩いて丸めるのはかなり体力を消費する。腕がつりそうになったところで練るのは終わりにした。
次は土を細長く伸ばして一段ずつ積み上げていく。今回はコップに挑戦。
三段ほど積み上げると、案外形になってきているような気がした。
なので次は目を閉じて4段目を積み上げてみる。
目を閉じて、三段目の層に沿って手を円形に描いてみる。
目を開けてみると少し不細工だが積み上がっていた。今までに類を見ない満足感だ。自分にはこれからできないことばかり増えると思っていたが、できることもあった。この満足感は陶芸の醍醐味であると深く感じた。
***
結果的に二十段ほど積み上げて細長いコップになった。
ここで写真を一枚。いや二枚。
「やればできるじゃん。私。」
完成したものは一度乾燥させるため窓際に放置。
後片付けを済ませてひと休み。
まだお昼だけど、日記を書こう。
太陽が眩しいダイニングで、写真をノートに貼り付ける。
色ペンで日付と天気、場所を書いてひとこと感想。
「陶芸の道ははるか遠いことを知った。でも、この後の趣味を見つけた感じがする。あと太陽と土の匂いが好きになった。」
ノートを閉じて深呼吸。紙の匂いもほのかにする。
今度こそ昼寝しよう。少しの罪悪感と大好きな匂いに包まれて気づいたら眠っていた。
明日はコップを焼こう。楽しみが増えたことを早く家族に話したいな。
つづく
30日のアルバム 猫の達人 @j_drmor1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。30日のアルバムの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます