明太子パーク

めへ

明太子

私達の住む都市メイヘムは、中央に広大な湖を囲うようにして成り立っている。

昔は田んぼや林だらけであったのが最近は都市開発が進み、日用品が比較的何でも手に入るスーパーや銀行などが建ち、ベッドタウンとして快適に過ごし易くなってはいる。

しかしそれでも、湖側へ少しでも車を走らせれば田んぼや林が広がっており、隣近所の都市モレクに比べればかなりの田舎と言える。

そしてカフェ巡りを趣味とする友人曰く、メイヘムにはチェーン店しか無いから駄目との事だ。


そんなベッドタウンとしては優秀だが遊び場としては劣るとされるメイヘムに、明太子パークというアミューズメント施設ができた。

元は「バクハ食い駅」という道の駅であり、メイヘムの湖の畔にあった。バクハと呼ばれる、湖で捕れる魚を全面に押し出したその道の駅はあまり繁盛しなかったのか、買収されたのか知らぬがいつの間にか取り壊され「明太子パーク」という湖の畔に相応しからぬ施設に成り代わったのである。


カフェ巡りを趣味とする友人に誘われ、二人で明太子パークにやって来た。

どんよりとした曇り空の日曜日であった。

休日なだけあって広い駐車場は九割埋まっている様だったが、案内人の指示のおかげで、そして店の回転が早いのかスムーズに車を入れる事ができた。

まだ比較的新しい建物は白米の様に真っ白で、入り口には明太子を模したとされる、赤いウインナーの様な姿のマスコット人形が出迎えてくれる。

中に入ると、調味液に浸された明太子のサンプルがある。

まだ調味液に漬かり切っていないスケトウダラの卵のサンプルは、人間の肌の色をしていた。丸々太った大きな蛆虫を思わせる形のそれらが、大量に白い調味液に浸された様は美味しそうというより気持ち悪いと感じさせる。


しかし考えてみれば明太子というのは、妊婦の腹を捌いて引きずり出した胎児を調味液に漬けて食べる、そういうものなのだ。


私達は明太子丼と呼ばれるものを買って食べた。

この後カフェでケーキを食べる予定があるので、一つの丼を二人で食べる事にした。

店先で展示されたサンプルに違わず、明太子丼は明太子が大量に乗っており私も友人も満足した。

白米の上に大量に乗せられた明太子、それはまさに引きずり出された血まみれの胎児たちを思わせる様に真っ赤に白米を覆っていた。

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