坂の途中に住むすみれさんと坂の上に住むひかるさん。
横恋慕をしてしまった女性とされてしまった女性。
思う人は違えど、そんな二人が出会って……
対照的な二人の織りなす心情とその変化が印象的でした。
「不倫」は決して肯定されるものじゃないけれど、
奪いたい壊したいなんて思いはなくてそうしたくない自分と恋う心を自由にできない自分への葛藤。
それを認めることなんてできない当然で、でも囚われてしまっている心。
恋に傷付く女性達が描かれながら読了後は爽やかに前向きな気持ちになれると思います。
坂の途中も坂の上も、海は見えて。心の曇りが晴れたなら、きっと輝く星を見つけられる。
過去の恋愛、今の恋愛。これは、様々な立場でその厄介な感情に囚われ揺れ動く女性たちが、前を向けるようになるまでのお話です。
この作品の最大の魅力は何と言っても、恋を知る人なら誰もが共感できるような高い文章力、そして読み終わった後は必ずポジティブな気持ちになれるような爽やかな読後感、この二つにあると思います。
一つ一つはシンプルな表現なのに、どれも的確に繊細な女性の心情をありありと浮かび上がらせていて……スッと心に入ってくるのに忘れていた古傷を容赦なく抉ってくる。この感情移入しやすい文章がとにかく素晴らしいです。
同時に、何かしら問題を抱えた登場人物たちが、お互いの心の隙間を埋め合うことで少しずつ前を向いていくという構成もまた、素晴らしいとしか言いようがありません。
落ち込んだ時、自分を責めたくなった時。読めばきっとあなたも、海の見える街の住人たちのように少しだけ、自分自身を認めて、許してあげられるのではないでしょうか。
現代ドラマが好きな方はもちろん、苦い恋愛の経験がある方には特に刺さること間違いありません!是非、ご一読ください!!