菜の花の夢のように
三九ななな
第1話
目が覚めると、目の前には、名前も知らない女性がいる。
僕は、その女性の上にはだかで乗っている。
この女性の顔には見覚えがある。
ここ1か月、夢に出てくるのだ。
僕は3時間以上眠ることが出来ない。
必ず夢に起こされるのだ。
僕の夢には音声が無い。
無声映画のフィルムのように断片的な映像が流れる。
良い夢も。悪い夢も。
声も出ないし、周りの音も聞こえない。
ずっと嫌な夢ばかり見て起こされていた。
でも、最近は温かい夢。幸せな夢を見る事が増えた。
その夢にはよく、目の前の彼女の姿があった。
これも夢かな。
気持ちいいな。
また、夢精してしまったかな。
「どうして泣いてるの?」
夢に声が出た。
僕は彼女に聞いた。
彼女は泣きながら答えた。
「生で出された!」
「え?」
「なんで?」
夢じゃなかった!
僕のあれが、彼女のあそこに刺さっている。
ビクビクと脈打っている。
「イったんなら抜いて!」
「え?」
「なんで?」
家で寝てたはずなのに、なんでこんな所で、
この女性とセックスしてるんだ?
僕は彼女から抜き、呆ける。
全く、記憶がない。
確かに家で寝ていたはず。
「ここはどこ?」
「あなたは誰ですか?」
「何言ってるの?」
「あんたが強引にホテルに連れてきて、やった。」
「生で!しかも中で出された!」
「責任取って、私と付き合いなさい!」
彼女は泣きながら,そう言った。
1か月前、私の彼、まさきが事故で亡くなった。
私の初めての彼だった。
大学から4年間付き合い、将来は結婚しようと約束していた。
それが、突然、一人ぼっちになってしまった。
突然、スマホが鳴った。
知らない電話番号だ。
怖いので1度目の電話には出ない。
もし、2度目がかかってくるようなら、電話に出る。
また、同じ番号から着信だ。
電話に出てみる。
「のり!俺だ、まさきだ!会いたい!」
「明日、夜22時以降、時間ははっきりとは言えない!」
「でも、きっと行く、柏駅の南口を出て階段を降りたところで待ってて!頼む!」
電話が切れた。
絶対にいたずらだ!とてもたちの悪い、いたずらだ!
まさきは死んだ!
声も違った。
でも、私を“のり”と呼ぶのはまさきだけ。
柏駅はとても大きな駅だが、私はあまり利用しない。
私の住んでいる場所からなら、東京に出たほうが早いからだ。
知らない街。
しかも22時。
正直、怖い。
でも、気になって来てみた。
1時間経つ。だれも声をかけてくる人はいない。
1時間30分待った。やはり、いたずらだ。
2時間経った。“でも”、という気持ちが私を帰らせようとはしなかった。
終電で帰れる24時30分までは待とう思った。
「のり!」
名前をよばれ、“びくっ!”とした。
周囲を見渡すが、まさきの姿はない。
当たり前だ、もう、死んでいるのだ。
「俺だ!まさきだ!」
「だれ?」
全く、知らない男だ。
しかも、なんか、パジャマじゃないの?
おかしい人?
「信じてもらえないかもしれないが、本当に俺だ!まさきだ!」
「あんた誰よ。なんの嫌がらせよ。警察呼ぶわよ!」
「時間がないんだ!聞いてくれ!のり!」
「俺は今、こいつに乗り移っている!」
「こいつが夢を見ている間だけ、俺は、起きる事が出来る。」
「でも時間が短いんだ!」
「15分くらいしか起きていられない!」
「もう、ここに来るまで5分くらい使っちまった!」
「もうすぐ、こいつは起きる!そうすると俺の意識は無くなる!」
「こいつを調べてくれ!」
「信じられるわけない!」
「初めてデートした場所はディズニーランド!」
「のりの右足の付け根には、ほくろがあって、1本毛が生えている!」
「抜いても、抜いても生えてくるんだから仕方ないでしょ!」
これは、私とまさきしか知らない事。
「本当にまさきなの?」
「信じて!本当に俺だ!まさきだ!」
「こっち来て!」
「ホテルじゃない!」
訳もわからないまま、ホテルに連れ込まれる。
「急いで脱いで!」
「何するの?」
「既成事実を作って、こいつと付き合って!」
「そして、俺を起こしてくれ!」
「何言ってるの?訳が分からない。」
「俺はまさきだ!のりを愛してる!」
「本当にまさき?」
「本当だよ!のりの誕生日は9月6日の乙女座、血液型はAB型!」
「好きなものは担々麺、辛い物が好き。ポテトが好き。」
「嫌いなものはニンジンとトマト!」
「バイト先のレストランで知り合った。」
「料理が好き。」
「将来は、一緒にお店をやろうと約束した。」
私を脱がせながら、私の事を話す。
全部あっている。
ベッドに倒される。
ベッドに寝かせる時、頭の後ろに手を当てて支えてくれるのはまさきの仕草だ。
「本当なの?」
「本当にまさきがいるの?」
「こいつの夢の中にいる。だから俺を起こして!」
「ごめん、痛くしてごめん!」
「でも、もう一度、会いたいんだ!」
強引に入ってきた
「痛い!」
入った瞬間。
出された!
本当にまさきがいるの?
この男の中に。
会いたい!
もう一度、まさきに会いたい!
涙があふれた。
「どうして泣いてるの?」
「生で出された!」
「信じて貰えないかもしれませんが、本当に、ここまでの記憶がないんです。」
「なぜ、あなたといるのか。」
「どうして、セックスしていたのかも、全く覚えてないんです。」
まさきの言ったことは本当なのだろうか?
まさきはこんな事をして、どうしたかったのだろう。
もう一度、会いたいと言っていた。
私だって、もう一度、会いたい!
「わかった。落ち着いて。」
「信じるから。あなたの話を聞かせて。」
私は、まさきを信じる!
「最近、夢遊病になってしまったみたいです。」
「寝て、夢から覚めると、パジャマから洋服に着替えている途中だったり。」
「この間はパジャマでコンビニの前にいました。」
きっと、まさきが外に出ようとしたのだろう。
「それは、毎日なの?」
「いえ、ここ1か月の間に数回、だと思います。」
「良く寝れてないの?」
「はい。僕は寝ても1回、2時間ぐらいしか眠れません。」
「ほとんどは、2時間で夢を見て起きます。それを1晩に2回で4時間です。」
「どんな夢を見るの?」
「ほとんどは怖い夢でした。走って逃げていたり、怒られていたり。」
「でも、僕の夢には音が無いんです。」
「何に怒られているのか、何に追われて走っているかもわかりません。」
「夢の中で声を出そうとしても、声は出ません。」
「でも、最近はあなたの夢を何度も見ました。」
「初めてお会いしますし、名前も知りません。」
「信じてもらえないと思いますし、自分でも信じられません。」
「私は西尾
「
「私の夢ってどんなの?」
「行ったこともない牧場や菜の花がいっぱい咲いている場所です。」
「そこに、あなたがいて笑っていました。」
「とても幸せな夢でした。」
まさきと行った場所だ。
「頭おかしいですよね。自分でもおかしいと思います。」
「でも、本当なんです。」
彼の右手を両手で握ってあげる。
あったかい手だ。
大きくて、ゴツゴツしてる。
「私は信じるよ。」
「正直に話すわ。」
「私は、1か月前に、愛していた彼を事故で亡くしたの。」
「あなたもですか?」
「あなたもって、あなたも?」
「いえ、すみません。僕の場合は違います。」
「僕は3年前、バイク事故を起こしました。」
「その時、後ろに彼女を乗せていました。」
「彼女は命だけは取り留めましたが、背中に大きな傷を残してしまいました。」
「彼女とは事故以来、会えていません。」
「連絡もつかなくなり、引っ越してしまったので、どこにいるかもわかりません。」
「そうなの。」
「事故以来、僕は長く眠ることが出来なくなりました。」
多分、ストレス性の睡眠障害だ。
「話を戻すわね。」
「昨日、私は死んだはずのまさきから電話をもらって、今日、柏駅に呼び出されたの。」
「多分、あなたのスマホだと思う。」
ポケットに入っていたスマホを取り出して送信履歴を確認する。
私にも見せてくれる。
「ほんとですね。知らない番号に2回かけています。」
「もう一度かけてみて。」
プルルル。
「ほら。私のスマホが鳴ったでしょ。」
やっぱり、この人で間違いない。
「やっぱり、あなたの中に、死んだはずのまさきがいる。」
「え?」
「あなたが寝ている間に、まさきが起きて駅まで来た。」
「私をホテルに連れてきて、強引に入れた。」
「入れた途端に、私の中に出して、あなたは起きたの。」
「そうなんですか?」
「じゃあ、僕があなたに乱暴した訳ではないのですね。」
「いえ。」
「たとえ、意識は無くても、私の中に入ったのは間違いなく、あなたの精子よ。」
「そう。ですね。」
「これで子供が出来たらどうするの?」
「え?どうしましょう。」
「妊娠したかどうかわかるまで、2か月はかかるわ。」
「そうなんですか?」
嘘だ。
「そう、だから2か月間はあなたと同棲します。」
「えーーー。」
これで、この人を調べろ!って事でしょ。まさき。
私はあなたと会いたい!
その為なら、なんだってする!
「わかりました。」
「よく、わかりませんが、わかりました。」
「僕の中に、あなたの彼がいるのかもしれません。」
「夢に出てきたあなたがいるのですから、そうなのかもしれません。」
「正直なところ、僕は、死のうと思っていました。」
「夜、寝れなくてつらいんです。」
「悪夢を見るのが怖いんです。」
「昼間はだるくて、眠いのに、寝ようとしても眠れないんです。」
「この3年間、とても苦しかったんです。」
「でも、最近はあなたの夢、良い夢を見る事が出来ました。」
「僕を使ってください!」
「僕の命なんてどうなっても良いんです。」
「もし、まさきさんと会えるなら、あなたが幸せになれるなら。」
「どうか、僕を使ってください。」
もう、終電も無くなってしまった。
「私、シャワー浴びてくる。」
「逃げんなよ!」
「逃げませんよ。」
一応、念のため名前と住所を書いてもらった。
「年はいくつなの?」
「21歳です。」
私より3歳下かぁ。
「大学生?」
「いえ、事故を起こしたとき高3で受験どころでは無くて、受験しませんでした。」
「1年ぐらい何もする気が無くて、その後、就職しました。」
「ふーん。」
とにかく、シャワーを浴びて冷静になろう。
今は彼の事を知らなくては。
「明日は土曜日だけど、仕事は休み?」
「はい。建築関係なので、カレンダー通り土日と祭日は休日です。」
「明日、必要な物を買いたいの、一緒に付き合ってもらえる?」
「車は持ってる?」
「はい。」
「布団とか買いたいんだけど入る?」
「大丈夫ですよ。」
「ここら辺で品揃え良いお店ある?」
「柏にはドン・キホーテがあります!」
「柏、すげぇ!」
「まずは、布団と枕、この1万円で全部セットの奴でいいか。」
「和樹君、朝ごはんは、パン派?ごはん派?」
「食べませんね。」
「朝ごはんはいつも食べないの?」
「はい。作る時間が無いし、面倒だから食べません。」
「「私が早く起きて朝ごはんを作るから、一緒に食べましょう。」
「噛んで、咀嚼するのは目を覚ましてくれるし、糖分を入れる事で頭も冴えるわ。」
「朝、しっかり起きる事で、夜に眠れるようになるかもしれない。」
「わかりました。」
「私、パン派なんだけど、ご飯の方がいい?」
「僕もパンで良いですよ。」
「じゃあ、ポップアップトースター買おう!」
「家に、トースターならありますよ。」
「ポップアップトースターの方が速く焼けるから、外はカリっとして、中はモチっとして美味しいの。」
「へぇ。そんな違いがあるんですね。」
「お昼はどうしてるの?」
「大体は職場の近くのコンビニ弁当です。」
「たまに、職場の人とラーメン食べに行ったりとかですかね。」
「付き合いもあるし、それは仕方ないか。」
「夕飯は?」
「大体は牛丼屋さんかコンビニ弁当ですね。」
「料理はしないの?」
「料理したいと思う気力が無いんですよね。」
「そうなんだ。」
「じゃあ。夕飯は私が作ってあげる。」
「私、料理は得意なんだよ。」
「家にある鍋とかフライパンとか教えて。」
「必要なものを買っていくから。」
「鍋しかありません。」
「は?」
「他は何もありません。」
「インスタントラーメンしか作りませんから。」
「包丁も無いの?」
「ラーメンだって、野菜入れたりするでしょ。」
「ラーメンはラーメンだけですよ。」
「食生活が聞いただけでも悪いのがわかるわ。」
「まさか、炊飯器もない人が日本にいるとは。」
「まずは食生活をしっかり見直しましょう。」
布団セット、包丁、まな板、皮むき器、おろし金、フライパン、炊飯器、その他もろもろ、えらい出費だ。
食材も買える、豚肉、キャベツ、もやし、ピーマン、玉ねぎ、薄力粉、塩コショウ、オイスターソース、しょうゆ、料理酒、鶏ガラスープの素、卵など適当に、買い物かごに放り込む。最後はお米。
米袋は重たいので男手があると助かる。
「嫌いな食べ物はある?」
「ピーマンと辛い物です。」
「なにそれ。子供みたい。はは。」
ピーマンはかごから戻してあげた。
人参は私が嫌いなので入れない。
荷物を持って、彼の家にやってきた。
「食事を作っている間に、お風呂でも入っちゃえば?」
「そうします。」
「お風呂、あがりました。」
「ちょうど、ご飯も炊けたわよ。」
「今日は簡単に豚肉と野菜炒めよ。」
「どうぞ、召し上がれ。」
「いただきます!」
「めちゃくちゃ美味しいです!何ですかこれ!」
「普通に肉野菜炒めだよ。」
「お店出せますよ!」
「そうね。まさきもね、料理好きだったの。」
「将来、一緒にお店をやりたいね。って言ってたの。」
「そう、なんですか。ごめんなさい。」
「ううん。気にしないで。」
「でも、久々に誰かにまさきの事を話したよ。」
「両親も友達も、みんな心配してくれるから、心配させたくなくて話せなかった。」
「和樹君は、まさきを知らないから、こんな愚痴も言えちゃうのかな。」
「僕は、慰める事も、上手い事も言えません。」
「でも、話を聞くぐらいならできます。」
「僕の中に、まさきさんがいるというなら、余計に話を聞かせて下さい。」
「ありがと。」
「しかし、この野菜炒め、ごはんに合いますね。」
「でしょ。オイスターソースが決め手なんだよね。」
「ごちそうさまでした。」
「私、お風呂入ってくる。」
「けど!」
「一緒に住むって言っても、覗いたり、変な事したらマジで訴えるから。」
「この間の分も合わせて訴えるから!いい?」
「大丈夫です、絶対に変なことしませんから。」
夜、24時ごろ、まさきが起きた!
「のり!のり!」
「うん?」
寝ていたところを起こされる。
「まさき!まさきなの?」
「俺だ!良かった、のり、信じてくれたんだね。」
「本当にまさきなの?」
「誕生日は7月11日、セブンイレブンの日!」
「そんな日は無いよ!」
「国民の祝日にしていい貢献はしてると思うけど。」
このやりとりは、
「まさきだ!」
「昨日、なんで、あんなことしたのよ!」
「痛かったし、妊娠したらどうすんのよ!」
「ごめん、入れてすぐ出ちゃうとは思わなかったんだ。」
「なんか、どうしてもしたい気分だったんだ。ごめん。」
「記憶はあるの?」
「のりの中に入れて、イっちゃった所で記憶が終わってる。」
「記憶は飛ぶけど、引き継ぐみたいだ。」
「でも、毎日起きられるわけではないんだ。」
「起きたら3日経っていたこともある。」
「どうやったら起きる事が出来るのか調べてくれ。」
「それから、俺が起きている間に大きな刺激があると、急に俺の意識が無くなる。」
「多分、こいつが起きるからだと思う。」
「今のところは15分ぐらいしか俺は起きていられない。」
「こいつの睡眠が関係していると思うけど、俺には何もできないんだ。」
「この人が起きている間は、まさきはどうなっているの?」
「わからない。寝てるような感じとしかわからない。」
「苦しかったり、辛かったりはしないから安心して。」
「良かった。」
「事故は覚えてるの?」
「事故にあった瞬間で記憶がない。」
「俺はやっぱり、死んだの?」
「うん。」
葬式にも出たし、火葬にも立ち会った。
間違いない。
でも言えない。
もう、まさきの体は無いって事。
「そうか。」
「でも、会えてよかった。」
「何回会えるか、いつまで会えるかわからない。」
「15分しか会えないかもしれない。」
「でも、1回でも多く、のりに会いたい!」
「俺はのりを愛してる!」
「私も愛してる。」
「たとえ、あなたが別人になったとしても、私はあなたを愛してる!」
キスをする。
「わぁ!」
「なんで、僕、
あ。キスの刺激で起きちゃったのか。
「今、まさきと話してた。」
「泣いてるの?大丈夫?」
「大丈夫。」
「嬉しかっただけだから。」
「なるほど。」
「それでキスしたら僕が起きて、まさきさんが消えちゃったわけですか。」
「ごめんなさい。」
「ううん。数分だけど、とっても嬉しかったし、確信できた。」
「やっぱり、あなたの中にまさきがいる。」
「でも、3日起きれない日があったと言ってた。」
「何か心当たりはない?」
「うん。さすがに1日中寝ていない日は無かったです。」
「最低でも2時間は寝てました。」
「2時間って。それじゃ体が持たないよ。」
「うつ病になっても仕方ないわ。」
問題が起きたのは5時ごろだ。
「がはっ!はぁ!はぁ!はぁ!」
「どうしたの?」
大きな声で私も起きた!
「すごい汗!大丈夫?どうしたの?」
「いや、いつもの悪夢です。追いかけられる夢。」
すごい汗だ。
顔も首も、Tシャツもびっしょりだ。
「着替えた方が良いよ。」
「服はどこ?」
「その棚の一番上にシャツとタオルがあります。」
「タオルで拭いて。」
「ありがとうございます。」
甘く見ていた。
私も、追いかけられる夢を見たことがある。
でも、こんな全身、汗をかくほどの悪夢を見たことはない。
想像できなかった。
こんなにひどいのか。
その後、彼は眠れずに朝になる。
休みで良かったね。
そんな体じゃ、仕事も大変だろうし、怪我しそうだ。
実際、よく見たら、腕や手に怪我の跡がある。
新しめで血がかさぶたになっている傷もある。
「朝食はトーストとスクランブルエッグとヨーグルトよ。」
「こんな朝食は久しぶりです。」
「ありがとうございます。」
「昨日、1日だけど、一緒に生活してみて少しわかったことがあるの。」
「あの悪夢のうなされ方は尋常じゃないよ。」
「まずは、もう一度、ドン・キホーテに買い物に行こう。」
「一緒にマットレスと枕を買おう。」
「マットレスと枕ですか?」
「そう、良い眠りには良い寝具が必要なの!」
「そうなんですね。」
「高っ!」
「マットレスで4万円!枕で2万円!とか!高すぎでしょ!」
「いいの!」
「これは私が出すから、和樹君は運んでちょうだい!」
「ベッドを確かめた感じ、固めのマットレスだったよ。」
「固めのマットレスは腰と肩に負担がかかるから。」
「体が痛くて、悪い夢をみるのかもしれない。」
「高反発のマットレスの方が体に負担が無くて、良い睡眠がとれると思うの。」
「車に入る?」
「大丈夫ですよ。」
「大きくて重いけどお願いね。」
「全然、大丈夫です。仕事で、もっと重たい物を持ってますから。」
「あと、寝る前にスマホで動画見るでしょ。」
「だって寝れない時間が暇ですし。」
「スマホやパソコンの画面は目に刺激が強いから、余計眠れないわよ。」
「そうなんですか?」
「本にしたらいいと思うの。活字は眠くなるし。」
「わかりました。」
「帰りに本屋さんに寄って本を買いましょう。」
「ずいぶん、物分かりが良いのね。」
「僕も悪夢を見たくないんです。」
「とても辛いし、怖いし、体力も持っていかれるので仕事も辛いんです。」
「僕にとって、悪夢を見ない日が増えれば、幸せなんです。」
「ずいぶん、小っちゃな幸せだね。」
「私もまさきが現れる原因を調べるまでは、和樹君に倒れられちゃうと困るから。」
「私も協力するよ。」
「ありがとうございます。」
「もしかしたら、夢の内容に関係があるかもしれないわね。」
「でも、まずは体を健康にする方が大切だと思うの。」
「眠れるように一緒に頑張りましょう。」
「はい。わかりました。」
「あと、加湿器も必要ね。」
「加湿器はなんで使うんですか?」
「良い眠りには、50%以上の湿度が必要なんだって。」
「私も肌が乾燥しやすいから使うし、一石二鳥ね。」
「こんなに買って、お金は大丈夫なんですか?」
「大丈夫。まさきとの結婚資金に貯めたお金があるから。」
「もう、結婚しないから。」
「ごめんなさい!」
「もう、それ以上は言わないで下さい!」
「どう?新しいマットレスの感じは?」
「気持ちいいです!」
「枕、高すぎたり、硬すぎたりしない?」
「これも良い気持ちです。」
「こんなに違う物なんですね。」
「良かった。」
「これで少しでも気持ち良く寝れれば、まさきも出てくれると思うから。」
「やっぱり寝付けない?」
私は床にふとんを引いて、彼の隣で寝ころがっている。
「そうですね。」
ベッドの上から声がする。
下からでは顔は見えない。
「でも、今日の親子丼美味しかったです。大根の味噌汁も。」
「あんな美味しいお味噌汁は初めてです。」
「そう。良かった。」
「こちらこそ、ありがとうございます。」
「食費は払いますから。」
「ありがと。その分、美味しい物を食べさせてあげるよ。」
「のり!のり!」
「まさき!」
頭がぼんやりしていたが、名前を呼ばれて覚醒した。
「良かった。会えた!」
「昨日は、和樹君が悪夢ですごいうなされて大変だった。」
「寝具を変えて、良い夢見てるのかな。」
「こいつは和樹っていうの?」
「他に何かわかった事ある?」
「和樹君も3年前に事故を起こして、彼女に怪我を負わせてしまったそう。」
「それが多分、精神的なストレスになって悪夢を見るみたい。」
「そうか。悪夢では俺は起きないんだね。」
「見る夢の内容によって俺が起きるのかもしれないね。」
「そういえば、和樹君が私の夢を見たことがあるって言ってた。」
「一緒に行った菜の花畑やマザー牧場だと思うの」
「そうなんだ。俺の記憶も夢に出るんだね。」
「和樹君のうなされ方が尋常じゃなくて、大汗をかいて起きたの。」
「あれじゃ、体が持たないよ。」
「どうしたらいいんだろう。」
「精神的なものは、俺たちがどうにもできないと思う。」
「でも、リラックス効果がある物を試してみたらどうかな?」
「ビタミンCやポリフェノールを取るとか。」
「そうだね。」
「食生活もひどいみたい。野菜はほとんど食べてなかったみたい。」
「それだとビタミンB群も不足してるね。」
「まさきは起き上がれるの?」
「起き上がる事は出来るけど、ちょっとしたショックで目を覚ましちゃう。」
「このまま、寝たまま会話している方が多分長くいられると思う。」
「そうなんだ。」
「前に食べ物を食べた瞬間にも起きちゃったし、字を書くこともできなかった。」
「手の指は思うように動かない時が多い。」
「話が出来るだけでも、すごく嬉しいよ。」
「ごめんな。のり。」
「もしかしたら、俺はいなくなってしまった方が、のりには幸せかもしれない。」
「そんなことない!」
「たとえ、体が別人になっても、まさきはまさきだよ!」
「まさきがいない方が幸せなんて、絶対ない!」
「わかった。一緒にできるだけ、会えるように頑張ろう。」
「うん。頑張る。」
「今日はトーストとコーンスープとオレンジジュースよ。」
「あったかい飲み物はね体を覚醒してくれるの。」
「今日からまた、仕事でしょ。」
「頑張ってね。」
「ありがとうございます。」
「
「飲食店で働いてる。ファミレスだけどね。」
「でも、今は休職してる。」
「婚約者が事故で亡くなったって言ったら、3か月間休職させてくれたの。」
「そうなんですね。」
「昨日、まさきが出てきたんだよ!」
「ほんとですか!良かったですね!」
「ほんとだよ!これで高いマットレスを買ったのも報われるよ。」
「すみません。」
「良いよ。それより、どんな夢見てたか覚えてる?」
「覚えてないです。でも、悪夢ではなかったです。」
「悪夢は記憶に残るので。」
「まさきが夢の内容によって起きるかもしれないって言ってた。」
「夢の内容を覚えていたら教えて欲しいの。」
「わかりました。寝起きだけ覚えてたりしますから、お伝えします。」
「でも、脈略のない事が多いですけど。」
私は昼間の間に寝て、なるべく夜は起きていようと思う。
ちょうど仕事も休職中だし。
うなされているのを見たくない。
可哀そう過ぎる。
なんとか、悪夢を見ないように、良い夢を見るために出来る事はないだろうか。
夢は、ストレスや精神状態によって影響を受けやすい。
リラックスして眠るために出来る事を調べる。
なるほど。なるほど。
やれることは、たくさんありそうだ。
買い物してこよう。
この部屋は小さいが、駅から歩いてすぐなので、買い物は便利だ。
「ただいまです。」
「おかえり、お風呂は沸いてるよ。ちょっとぬるめにしてある。」
「リラックスするには15分くらい湯船につかるのが良いらしいから。」
「わかりました。」
「その間に食事ができるから。」
「ありがとうございます。」
本当は就寝2~3時間前に入浴する方が良いらしい。
けど、和樹君はいつも、仕事で泥だらけになって帰ってくる。
すぐ、お風呂に入りたいのは仕方ない。
出来る事からやっていこう!
「今日の夕食はシチューにしました。」
「シチューなんて何年振りだろ。」
「そうだよね。コンビニ弁当ばかりだと食べてないと思ったんだ。」
「
「珍しいですね。魚介のクリームシチューなんて。」
「そうでしょ。なかなか食べられないよ。」
「夕食はやわらかくて、温かい物を食べたほうが寝やすいらしいよ。」
「エビやホタテには”グリシン”っていう成分が入っていて、良い睡眠が取れる効果があるんだよ。」
「へぇ。」
「魚介類にはビタミンB群も豊富だから健康にも良いしね。」
「すごいですね。栄養士みたいですね。」
「そうね。和樹君の栄養士だね。美味しくて健康になれる物を作ってあげるよ。」
「おいしい!」
「よかった。」
「良い夢を見るためには、リラックスして眠るのが良いらしいの。」
「いろいろ試したいんだけど協力してくれる?」
「はい。何をすればいいですか?」
「何かするわけじゃないんだけど、いろいろ食べてみて欲しいの。」
「そんな事なら、全然、良いですよ。」
「お酒は駄目なんですぅ!」
「なんでよ!さっき、良いって言ったじゃない!」
「弱いから、お酒飲めないんです!」
「ちょっとワイン飲んでみてよ!」
「ポリフェノールいっぱいなんだから!」
「吐きますよ!絶対!」
「一口、一口だけ飲んでみようよ!」
「一口だけですよ。」
ちょっとだけ口に入れる。
「渋い!渋い!」
「甘い物下さい!」
「はいチョコ!」
「苦い!苦い!」
「なんですか!そのチョコ!」
「カカオ95%!」
「砂糖入ってないんですか!そんなチョコ食べれませんよ!」
「わかったわよ。はい。ココア。」
「はぁ。癒されるぅ。この甘さ、癒されるぅ。」
「子供みたい。」
「余計なお世話です。」
「寝る時に、頭を冷やした方が良いんだって。」
「おでこに冷えピタシート貼ってみるね。」
「どう。寝るのに冷たすぎない?」
「余計、覚醒しそうな気もするけど。」
「夏は良いんじゃないですかね。冷たくて気持ちいいですよ。」
「今日は、それで寝てみましょう。」
「今日の夕食はロールキャベツだ。」
「じっくり煮込んだから、美味しいぞ!」
「ありがとございます。」
「今日はこれを試させて。」
「電マですか?」
「電マとか言うな!」
「いやらしい物じゃない、ちゃんとしたマッサージ器だ!」
「そうですね。僕も事故の時、首をうって、それから肩こり症なんですよね。」
頭を横に振ったらゴキっと鳴った。
「肩こりも悪夢と関係あるかもね。」
「あとで、これでマッサージしてみるね。」
「和樹君、うつぶせに寝てみて。」
「上に乗るね。」
「重っ!」
「重いとか言うな!」
「場所です。胃の上に乗ってます。」
「もうちょっと下のお尻の上に乗って下さい。」
「わかった。」
マッサージなんかしたことないし、背中が広いからわからなかった。
「ここなら良い?」
「大丈夫です。」
「どれくらい固いか見てみる。」
「うわっ、固い!」
「これは凝ってて固いのかな、それとも筋肉で固いのかな。」
「わかりません。」
「マッサージ器、使ってみよう!」
電源を入れて肩に軽くあててみる。
「どう?」
「もっと強い方が良いです。」
思いっきり押し当てる。
「ああっ。気持ちいいです。」
「ほんとに?全体重で押しあててるんだけど、痛く無いの?」
「全然痛く無いですよぉ。」
「凝りすぎて、痛く無いんだね。」
「そうなんですね。」
「毎日、やってあげるよ。」
「ありがとうございます。癒されます。」
「薬は飲んだことある?」
「いえ。無いです。」
「薬のアレルギーとかある?」
「無いと思います。」
「睡眠剤使ってみようと思うんだけど、どうかな?」
「いいですよ。」
「じゃあ、明日買ってみるね。」
市販の睡眠改善薬を買ってみた。
「どう?30分から1時間ぐらいで効くらしいけど。」
「はい。眠いというか、くらくら来ます。」
1時間くらいで眠りに付いた。
3時間くらいで1度起きる。
30分ぐらいでまた寝る。
3時間で起きる。
睡眠時間は増えた!
「夢はみる?」
「いえ、夢はみていません。」
「でも、これはちょっと辛いです。」
「そうなの?」
「すごく、体がだるいです。」
「そう。」
3日試してもらったが、まさきは現れなかった。
眠りが深いのかもしれない。
眠りには浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠がある。
これを60分から90分で繰り返すらしい。
どちらでも夢はみるそうだが、ノンレム睡眠時の夢は記憶には残らないらしい。
記憶の残る夢はレム睡眠時に起きる。
眠りが浅くないと、まさきは現れないのかもしれない。
「ごめんね。無理させて。」
「大丈夫です。」
「明日からは薬を変えてみるから。」
「はい。」
「これは睡眠導入剤、眠り自体には影響はないけど、寝つきが良くなるらしい。」
「これで試してみましょう。」
30分ほどで眠りについた。
ほんとに寝つきは良くなるみたい。
30分ほどしたらうなされだした。
悪夢を見てるんだ!
すごい汗だ!
可哀そうに。
どうしたらいいんだろう。
起こしてあげた方がいいのだろうか。
だめだ。可哀そうで見てられない!
「大丈夫?起きて。」
「ああ。
「うなされてたよ。」
「すごく、嫌な夢でした。」
夢を見ても、やはり悪夢では、まさきは起きないようだ。
「可哀そうに。」
左手を両手で握ってあげる。
「もう大丈夫だから。安心して。」
「一緒に寝て、うなされたら私が起こしてあげる。」
「一緒に寝るんですか?」
「恥ずかしいから、あっち向いて。」
背中に抱き着く。
「あったかいです。」
「胸があたらない。とか言うなよ!絶対!」
「言いませんよ。」
「どう?落ち着く?」
「はい。あったかくて、気持ちいいです。」
「安心して寝なさい。明日も仕事なんだから。」
「はい。眠れそうです。」
男の人の匂い。
やっぱり、人によって匂いが違う。
「和樹君?」
「はい。」
「シャンプーとボディーソープ変えても良い?」
「なんでですか?」
「ほら、いい匂いする方がリラックス効果があるでしょ?」
「僕、
「そうじゃないよ。アロマ効果ってやつ。」
「別に良いですけど。どうせ特売の物を適当に買ってるだけなので。」
「でも、自分の匂いってわからなくないですか?」
「無意識でリラックスするって事よ。」
「なるほど。」
うそです。
一緒に寝るって言っちゃったけど、まさきの匂いがいいな。と思っただけ。
「一緒に寝て、悪夢から守ってあげる。」
「ありがとうございます。」
「だから、変な事はしちゃダメだよ。」
「しませんよ。」
あったかくて。。
「のり!のり!」
私も、うとうとしていた。
「え?まさき?」
「良かった。会えた!」
「のり!」
抱きしめられる。
「まさき!会いたかった!」
「すごく!したい!」
「え?」
「無理だよ!いきなりは!痛いし!何より和樹君の体じゃない!」
「でも、したいんだ!のり!じゃあ、口でして!お願い!」
「え?」
ズボンを脱いで目の前にあれが出される。
仕方なく、口に咥える。
「気持ちいい!」
出た!
なんか、すごい出た!
「気持ちいい。」
「って、あれ?なんで
「あぁ。気持ちいいです!」
「うげぇ。」
「すんごい量、出たよ。」
「すいません。溜まってたみたいです。」
「ごめんなさい。変なことしないって約束した日に。」
「和樹君がした事じゃないよ。まさきがしたいって。」
「まさきさんも性欲あるんですか?」
「そうだね、あるんだね。」
「そういえば、和樹君はセックスは?」
「彼女がいなくなって3年してませんね。」
「こんなこと、聞くのもあれなんだけど、自分でしてる?」
「してません!」
「え?」
「なんで?」
「夢精したいからです。」
「は?」
「夢精したいとか、夢精の為にしないとか初めて聞いたんですけど。」
「今の僕にとって、夢精だけが幸せなんです。」
「どういうこと?」
「溜まりすぎると夢精しちゃうんですけど、夢精の時だけ、夢に昔の彼女が出てくるんです。」
「その夢の中だけは、はっきりと彼女を思い出せるんです。」
「それに、その日は、悪夢を見なくて済むんです。」
「だから夢精は一回、お得なんです!」
「夢精が一回お得なんて、初めて聞いた!」
「今の夢は?」
「彼女に口でされてました。」
「実際は私がしたんだけどね。」
「すみません。いっぱい出してしまって。」
「ううん。大丈夫。まさきに一瞬だけど会えたから。」
「本当ですか!良かったですね。」
「まさきが気持ちいいて言ってた。はは。」
「今週もお仕事お疲れ様。」
「今日はヒレカツだよ。」
「ちゃんとキャベツも食べるんだよ。」
「キャベツ美味しいです!」
「そうでしょ。キャベツは細く長く切るのが甘くて美味しんだ。」
「私、切るの上手でしょ。」
「カツも柔らかくて美味しい!」
「ご飯も美味しい!」
「いっぱい食べていいよ。おかわりもあるから。」
こんなに美味しいって食べてくれると嬉しい。
「
「だから、あれはまさきが悪いんだからいいよ。」
「僕、まさきさんに伝えたい事があるんです。伝えてもらえますか?」
「自分で言えば?」
「え?どうやってですか?」
「スマホに録音しとけばいいじゃん。」
「私が言うより、自分から言った方が良いよ。」
「まさきさん、僕の中にいるって聞きました。」
「僕は自覚は無いんですが、お礼を言いたかったんです。」
「正直、僕は、死にたいと思っていました。」
「眠れなくて、悪夢ばかり見て、とてもつらい毎日でした。」
「でも、1か月前から、とてもいい夢を見せてもらいました。」
「この1週間、
「本当に、美味しくて、本当に、嬉しくて。」
「家に帰るのが、本当に楽しみなんです。」
「悪夢を見る回数もかなり減りました。」
「これも全部、まさきさんと
「ありがとうございます。」
「僕にできる事があれば、何でも言ってください。」
「出来る限りのお礼がしたいんです。」
この人はいい人だな。と思った。
その晩、まさきが起きた。
「のり!なんで隣で寝てるの?」
「浮気?」
「浮気じゃないよ。」
「悪夢にうなされたとき、起こせるように一緒に寝てるだけ。」
「何にもしてないよ。」
「っていうか、したのそっちじゃないか!」
「ごめん。」
「覚えてるんだ。」
「気持ち良かった。」
「へぇ。幽霊でも気持ちいいんだ。」
「幽霊って。そういわれると、死んだの実感する。」
「ごめん。自覚して消えないでね。」
「うん。まだ、大丈夫そう。」
「あっそうだ。和樹君から伝言もらってる。」
「スマホ?」
「そう、スマホに録音したの。」
「のり!頭良いね。」
「でしょ。」
「まさきも、和樹君に返事してあげてよ。」
「・・・・」
「こいつ、良い奴だね。」
「そうだね。」
「したいことかぁ。」
「出かけたいけど、動くと覚めちゃうからなぁ。」
「どこに行きたいの?」
「去年行った、あの菜の花畑。
「今、ちょうど満開じゃないかな。」
「そっか。じゃあ、私と和樹君で行って、動画を取ってくるのはどうかな?」
「で、夜にまさきが見れば、私と行った気になれるでしょ。」
「いいね。それ。」
「じゃあ、返事を録音しよう。」
「和樹君、はじめまして。と言っても変な感じだけど。」
「俺がまさきです。」
「君の体を借りて、話しています。」
「俺は君が起きると消えてしまうので、思うように出かける事が出来ません。」
「千葉の鴨川にある菜の花畑に、のりと、もう一度行きたいんだ。」
「行って来て、風景や、のりの笑顔をたくさん撮ってきて欲しい。」
「俺は、のりの笑った顔が大好きなんだ。」
「まさき、そんな事言うなよ。恥ずかしいじゃん。」
「和樹君。頼みます。」
「ほんとですね。僕の声で話してます!」
「すごいビックリです!」
「自分の事、俺なんて呼んだことないので。」
「それはそうと、菜の花畑行きましょう。」
「2時間もすれば着くんじゃないですかね。」
「ありがとう。和樹君。」
「すごいですねぇ。」
「千葉って、こんな田舎でしたっけ?」
「柏とこっちじゃ違うからね。」
「すごい!一面、まっ黄色です!
「菜の花で、いっぱいですね!」
「動画取りますね。」
「恥ずかしいな。」
「まさきさんに何か話したらどうですか?」
「菜の花に
「どうだ?かわいいだろ!」
「すごく、かわいいです!」
「年上にかわいいとか言うな!それに、まさきに言ったんだ!」
「すいません。つい、反応しちゃいました。」
「お弁当も作ってきたんだ!」
「私のだし巻き卵、好きだったでしょ。ちゃんと作ったぞ!」
「ほら。あーんして。」
「僕が食べて良いんですか?」
「なんていうの?バーチャルリアリティ的な?」
「なんとなくわかります。視点をまさきさん視点にするって事ですね。」
「じゃあ、頂きます!」
「とっても美味しいです!」
「僕が、全種類食べますよ!それでどれくらいおいしいか伝えます!」
「ありがと。和樹君。」
「お腹、いっぱいです!」
「少し休もうか。気持ちいいしね。」
「もし、今、僕が寝たら、まさきさん起きませんかね?」
「どうだろう。」
「お腹もいっぱいで、あったかくて、少し寝れそうです。試してみましょうか?」
「じゃあ、膝枕してあげるよ。」
「いいんですか?」
「どんとこい!」
「足、痛くなったらどかして良いですからね。」
「遠慮なくどかして、頭ガーンってするわ!」
「膝枕なんて初めてです。」
頭を撫でてあげる。
眠れるかなぁ。
まぁ。こんなまったりしたのも良いでしょ。
わたしも、うとうとしてきた。
「のり!」
「まさき?起きれたの?」
「ここは?」
「行きたいって言ってた、鴨川の菜の花畑!」
「なんで起きてんの?俺。」
「和樹君がね、ここで寝たら、まさきが起きれるんじゃないかって言ってくれて。」
「そうか。和樹君に感謝だね。」
「そうだね。」
「動けないけど、景色は見えるよ。」
「多分、いつもよりも、更に眠りが浅いんだろうね。俺は体が動かせないや。」
「そうなの?」
「体に力が入らない。」
「でも、景色は見える。目だけは動くみたい。」
「のりの声が聞ける。」
「笑顔が見れる。」
「のり、俺はこんなになっちゃったけど、のりを愛してる。」
「体は無いけど、のりの事は忘れてないよ。」
「今でも、のりを愛してる。」
「私も、まさきを愛してる。」
「まさきさん、起きれました?」
「わかるの?」
「
「少しだけど会えた。」
「連れて来られたよ。まさきを、ここに。」
「ありがとう。和樹君。」
「いえ。良かったです。」
「さすがにディズニーランドとかじゃ出来なさそうですね。」
「人がいっぱいいて、寝れるもんじゃないしね。」
「でも、牧場とか、静かなとこなら寝れるかな。」
「そうですね。」
「来週、また試してみましょうか。」
「ほんと!ありがとう!」
ここ3日ぐらいまさきが起きてない。
悪夢を見ていないのは一緒にいてわかるし。
眠る時間も5時間ぐらいと、ずいぶん長くなった。
でも、なぜか出てこない。
「今日はハンバーグとオムライスですね!」
「僕の大好きなものです。」
「だと思った。」
「じゃあ。頂きます!」
「ハンバーグ、すごっ。中からジュワっと肉汁が出てきましたよ!」
「オムライスも卵トロトロでテレビで見たやつみたいです!」
「すっごく美味しいです!」
「良かったねぇ。おこちゃま舌で。」
「美味しいって言われると、ちょっと幸せな気分になる。」
「ほんとですか?」
「じゃあ、いっぱい言いますよ!」
「小さい幸せだけどね。」
隣で寝るのも慣れてきた。
ボディソープとシャンプーの匂いが馴染んで
まさきの匂いになってきたのもある。
寝付くまでのまったり本を読んでいる時間。
「ねぇ。和樹君。」
「はい?」
「夢精って気持ちいいの?」
「何ですか。まぁ気持ちいいから出ちゃうんですけど。」
「それってさぁ。夢が気持ちいいから出るの?」
「それとも気持ちいいからエロい夢みるの?」
「え?どっちだろう?考えた事なかったです。」
「例えばさぁ。」
自分でもバカな事言ってる気はする。
「寝てる間に気持ち良くなったら、エロい夢見れるかな?」
「自分じゃ寝てる間に出来ないですよ。誰がするんですか。」
「私しかいないじゃん。」
「もう、3日もまさきに会えてないんだよ。」
「先週、夢精というか、私の口に出したとき、まさきが起きたんだ。」
「エロい夢見たら、まさき起きてこないかなぁ。」
「試してみても良いですけど、保証できませんよ。夢は選べませんから。」
「わかってる。」
「じゃあ。お願いね。」
「ゆっくり寝て。」
「わかりました。」
和樹君が静かに寝息を立てる。
いびきをかかないところは、まさきよりいいな。
寝顔も可愛いよね。
年下だからかな。弟に見える。
そうだ。弟にしよう!
病気の弟を世話していると思おう!
背中に抱き着いた状態から、
そうっと右手を下半身に手を伸ばす。
どこにあるかわかんない。
ここらへんかな。
ピクっ。と何かが動いた。
これだ。
そうっと撫でる。
ちょっと、大きくなってきた。
寝てる間も、刺激すると
だんだん大きくなって、1本の線がわかる。
大きいな。
パジャマのズボンが、パンパンにテントを張っていて、きつそうだ。
そうっとズボンを下げ、パンツを下げ、解放してあげる。
大きくなったあれを掴む。
すごい、熱い!
やけどしそう。
やさしく、さすさすと擦る。
「まさきぃ。起きてよぉ。」
「寂しいよぉ。」
小声で話す。
「のり!なんで触ってるの?」
「起きた!」
「起きたの、まさき!」
「もう3日だよ、3日も会えなかったんだよ!」
「そうなの?」
「まったく記憶ないや。」
「ごめんね。のり。」
「なんでだろうね?」
「以前より、良く寝れるようになったし、悪夢を見てもすぐ起こしてあげるのに。」
「それで、なんで和樹君のあれ触ってるの?欲求不満?」
「違うよ!」
「なかなか会えないから、エロい夢見たら、まさきが起きるんじゃないかって。」
「それで和樹君に頼んで、私がこんな事してんだよ。」
「まさきのせいなんだからね。」
「のり、セックスしたい!」
「夢精しちゃうんでしょ。入れたらすぐ出ちゃって、また、いなくなるじゃん!」
「やだよ。せっかく起こしたのに。」
「体は。動くな。」
「良く寝てるみたい。俺が体を使える。」
寝返りをして私と正対する。
和樹君の顔が近い!
まさきは、自分が和樹君である事がわかってないんだ。多分。
「出さなきゃいいんじゃないの?」
「のりを気持ち良くしてあげる事は出来るんじゃないかな。」
「キスすると起きちゃうんでしょ。」
「キス以外でどこまで出来るか試してみようよ。」
「のりの体を、触りたかったんだ。」
そんな事を言われちゃうと、駄目って言えなくなる。
「出来るとこまで、だからね。」
おっぱいに手をあてられる。
「やわらかい!」
「のりの、やわらかいの感じるよ!」
和樹君の手は、まさきよりも、大きくて、ゴツゴツして、固い。
「脱がせられない。」
「上。脱いで。」
ボタンは外せないようだ。
相手はまさきでも、実際に目の前にあるのは和樹君の顔だ。
恥ずかしい。
「乳首にも触れた!」
「嬉しい!のりの、乳首に
「ばか!声が大きい!起きちゃうよ。」
「下も
「いいけど。やさしくしてよ。」
「だめだ。手がうまく、ズボンに入らないや。」
「わかったよ。脱ぐ。」
「まず、見せて。」
「恥ずかしいなぁ。」
和樹君の頭が私の股間に埋もれて、鼻息があたる。
「おしっこの匂いがする。」
そうだった!トイレ行ってた!
「やだ、嗅がないで。」
「俺、嬉しいんだよ!体があって、ぬくもりや、音、匂いが感じられる。」
「それがすごく嬉しい!」
そんな事言うなぁ。ダメって言えないじゃないか。
「
「いいよ。」
「ちょっと濡れてる。」
「うん。あれ触ってたし。もう、ずっとしてないから。」
「そうか。ごめんね。」
「すごいね。いっぱい濡れてきた。」
「うん。」
「のり。気持ちいいの?」
「うん。ちょっと。」
「ちょっとなの?どうしたらいい?」
「もうちょっと、上、触って。」
「クリ?」
「うん。」
「ふわぁっ。」
「ここ、いいの?」
「うん、ビリビリってきた。」
「ここ触ってればいいの?」
「うん。あと、おっぱいも触って。」
「はいよ。」
懐かしい。
このやりとり、懐かしい。
やっぱり、まさきだ。
手に力が入らない分、触り方が優しい感じがする。
「気持ちいいよ。まさき。」
「よかった。」
和樹君のあれを触る。
もう我慢汁が出てる。
もうすぐ夢精しちゃうのかな。
まさきがまた、消えちゃう。
「のり、気持ちいい。」
「口で出して良い?」
「いいよ。出して。」
口に押し込まれる。
喉の奥の方まで突っ込まれる!
出た!
喉の奥にビシャビシャとかかる!
喉の奥に入る。
重たっ!
喉に絡みつく重み!
濃い!
「気持ちいいっ!」
和樹君が覚醒した。
私は、全裸でおっぱいを揉まれ、クリトリスを触られ、
口にあれを咥えさせられた状態で、覚醒した。
「どうなってるんでしょうか?」
「でも、気持ちいいです。」
残りが、まだ出た!
「これはね。まさきが勝手にやったの!」
「どう見ても、私、被害者でしょ。」
「そう、ですね。」
「ごめんなさい。」
「良いの。気にしないで。私が触ったのが原因だし。」
「嫌じゃなかったんですか?」
「え?」
「そりゃ。体は和樹君だけど、中身はまさきだし。」
「嫌かと言われると、嫌じゃなかったり。」
「それなら、僕を使ってください!」
「僕も、とっても気持ちいい夢だったんです。」
「体中が何か、あったかい物に包まれて、とっても、気持ち良かったです。」
「まさきさんがしたくて、
「悪夢を見るよりも、全然、僕は良いです!」
「うーん。」
「ちょっと、考えさせて。出来れば、まさきとも話したいから、返事は待って。」
「大丈夫です。待ってます。」
「これで、僕に生きる価値があるなら、僕も幸せですから!」
うーん。困った。
中身はまさきだから、浮気ではないのか?
そもそも、まさきは亡くなってるから、時効か?
でもなぁ。
そもそも、まさきと和樹君はスッキリするから良いけどさぁ。
スッキリして、和樹君は気持ちよさそうに寝てる。
私は足らないんだよねぇ。
どうしたら良いのさ。
男の寝てる隣で、自分を慰めた。
「なんか、久々に、気持ちのいい朝です!」
「そう、良かったわね。いっぱい出てスッキリしたもんねぇ。」
「すいません。」
「はい。朝食。今日は、トーストとグラタンスープ。」
「これ、美味しいです!」
美味しいって言われると、もやもやした気持ちも晴れる。
「チーズはね、リラックス効果もあるんだよ。」
「牛乳を10倍以上使って固めるから、栄養も濃いんだから。」
昨日の、濃かったなぁ。
やりたい。
「まさきぃ。」
「火着いちゃったよぉ。」
「あんな濃いの飲まされたら、したくなるって。」
「本能だもん、仕方なくない?」
次の日、
また、和樹君の股間を触る。
これは、和樹君に悪夢を見せないためだから。
仕方ない事だから。
慈善事業だから。
と言い聞かせて触る。
大きくなって来た。
楽しい!
「まさきぃ。早く起きてよぉ。」
「のり!」
「あれが立つと、まさき起きるの?」
「俺がこれに取り憑いてるみたいな言い方しないでくれる?」
「ちゃんと記憶あるから。」
「たまたまに、記憶する機能は無いから!」
事情を話した。
「なるほど、悪夢を見ないためにはエロい夢を見れば良いと。」
「しかも、スッキリしてぐっすり眠れる。」
「3人ともウィンウィンな訳かぁ。」
「私はちっともウィンじゃないよ!」
「火着けられて、ほったらかしだよ!」
「そうかぁ。どうしたらいいんあお。意識がぁ。薄れる。」
「しおれてる。」
ちょっとこする。
大きくなった。
「あっ。意識戻った。」
「やっぱり、まさき、ここにいるのね。」
「違うよ。夢だよ。」
「じゃあ、スマホ貸して。録音しておく。」
「聞かせるか、聞かせないかは、のりが決めて。」
「なに?」
「俺だ。まさきだ。」
「和樹君、君にお願いがある!」
「のりと、ハメ撮りしてくれ!」
「おれは、のりの感じる顔が見たい!」
「終了っと。」
「まさき、バカじゃないの?」
「浮気だよ。中身がまさきの時とはわけが違う!」
「俺は本気だ。のり。」
「そりゃ、悔しい気持ちもあるよ。」
「でも、俺はもう、死んでるんだ。仕方ないじゃないか。」
「俺は、もう、のりを
「いつまで、こうして話が出来るのかもわからない。」
「俺は、のりには幸せになって欲しいと思う。」
「体のない俺には、のりを幸せにしてあげる事が出来ない。」
「でも、今は、俺ものりとは、離れたくない。」
「私だって、離れたくないよ。」
「それなら、和樹君と付き合っちゃえよ。」
「だんだん好きになって、俺のことを忘れるくらいまで。」
「それまでは傍にいたい。」
「まさきを忘れるなんて出来ないよぉ。」
「俺だって忘れないよ。」
「でも、仕方ないじゃないか。」
「今の状態だけでも、普通じゃあり得ない、神様の贈り物だよ。」
「そうだね。」
「こうして、話をする事が出来たんだもんね。」
「たぶん、俺は消えると思う。」
「理由はわからないけど、感じるんだ。」
「そうなの?どれぐらい居られるの?」
「わからない。」
「でも、消える時には、のりが幸せで、俺は安心して消えたいと思う。」
「まさきぃ。」
「そこに話しかけてもいないから。」
「和樹君は良い人だと思う。多分、もう十分、苦しんだと思う。」
「神様なんて存在がいるとしたら、和樹君を助けるために、のりに会わせたんじゃないかと思う。」
「そのおかげで、俺はのりにもう一度、会うチャンスをもらえたんじゃないかな?」
「私も和樹君は良い人だと思う。」
「でも、まさきがいるのに。」
「俺が、いられる間だからだよ。」
涙が溢れる。
「まさきぃ。」
「俺は、のりが大好き。」
「のりの、笑った顔が好き。」
「まさきぃ。」
「のり、愛してる。」
「キスすると消えちゃうよ。」
「うん。でも、キスしたい。」
「うん。」
「あれ?」
「なんでキスしてるんですか?」
「また、何かしちゃいました?」
「なんで、それ握って泣いてるんです?」
「まさきのばかぁ!」
「そんな握ったら痛いです!」
まさきは消える。
いつ消えるか、どうして消えるのかわからない。
和樹君が悪夢を見る時は現れない。
幸せな夢を見る時に現れる。
悲しませたり、不幸にすることでは、まさきにも会えない。
なら、和樹君を幸せにすれば、まさきにも多く会えるはずだ!
私が、和樹君の昔の彼女のトラウマを消して、幸せにする!
それが、まさきの願いでもある。
何度も考えた結果、結論は、聞かせる!
「和樹君、君にお願いがある!」
「のりと、ハメ撮りしてくれ!」
「おれは、のりの感じる顔が見たい!」
「ほんとです。自分の声で言ってますね。」
「でも、
「条件があります。」
「なんですか?」
「まさきがいなくなるまで、私を傍にいさせて欲しい。」
「ご飯も作るし、掃除も、洗濯もする。」
「それで、好きでもない男に抱かれるんですか?」
「嫌いじゃない!」
「え?」
「和樹君が優しい人だってわかったし、とってもいい人なのもわかる。」
「私の心には、まだ、まさきがいて、まだ好きになれてないだけ。」
「和樹君は私の事、嫌い?」
「嫌いじゃないです!」
「でも、正直、わからないです。」
「一緒にいて、落ち着くし。すごく優しいし。ご飯美味しいし。」
「もう、死ぬ寸前だった僕を救ってくれた大切な人です!」
「今は、お互い、それで良いと思うの。」
「時間を積み重ねて、お互いのいい所も、悪い所も知ってから考えようよ。」
「嫌いじゃない。」
「でも好きかどうかわからないから、セックスしてみる。はアリだと思う。」
「でも、僕は大切な人を傷つけてしまいました。」
「僕なんかが幸せになったら、彼女に申し訳ないです。」
「そうだね。女の身で言えば、体に傷が残った彼女は、とても可哀そうだと思う。」
「だけど、君は十分、自分を傷つけたと思う。」
「その彼女は許さないかもしれないけど、私は君を許します。」
「まさきはね。」
「和樹君を救うために、私と和樹君を会わせたんじゃないか。って言ってた。」
「でも、もしかしたら、逆かもしれない。」
「私も、和樹君が美味しいって食べてくれるから、ずいぶん救われたよ。」
「まさきが死んで、和樹君と会うまで、1か月、実はかなり、精神やられてた。」
「私を救ってくれたのは和樹君だよ。」
「僕が
「そうだよ。だから、今度は私が君を助ける番。」
「僕、多分、下手ですよ。」
「いいよ。そういうのは。私も、まさきしか知らないもん。」
「また、すぐ出ちゃかも。」
「それは我慢して!」
「はい。」
「まさきのお願いだから撮らせてあげるけど、絶対、流出させるなよ!」
「ネットに流したら、地の果てまで追いかけて、ちんこ、切るぞ!」
「絶対しませんよ。」
「まぁ、そんな人じゃないのは、わかってるよ。」
軽くキスをする。
意識のある和樹君とキスをするのは初めてだ。
「あの。ゴム持ってないんで、買ってきます。」
「いいよ。今日は安全日だから。」
「妊娠してるかわかるまで2か月かかるんじゃ。」
「妊娠してても、してなくても、今日は安全日なの!」
「そうなんですね。」
「でも、生だとすぐイっちゃうかも。久しぶりだし。」
「そこは必至で我慢して!」
「はい。」
「おっぱい触るのどれくらいぶり?」
「先日。」
「いや、その前だよぉ。」
「3年ぶりです。」
「私はちっちゃいでしょ。」
「そんな事ないですよ。やわらかいです。」
「そう?」
「このおっぱい、好きになれそう?」
「好きです!」
「足は?」
「すごく、細くて綺麗です。」
「好きになれそう?」
「好きです!」
「肌は?」
「とっても白くて綺麗で、柔らかいです!」
「色白いのは自慢なんだ。焼けないように注意してる。」
「すごく好きです!」
「嬉しいよ。」
長いキスをする。
「綺麗に撮れてる?」
「綺麗です!」
「そのまま、撮ってて。」
「はい。」
「まさきぃ!見てるかぁ!お前が悪いんだぞぉ!」
「死んじゃうから!」
大きくなったあれを咥える。
大きいな。
下からカメラを撮る和樹君を見上げる。
まさきが好きだった事。
まさきは先っちょを舌で舐められるのが好きだった。
「
「のりって呼んで。」
「呼ばないと舐めない!」
「のり、もっと舐めて。」
男の人はみんなそうなのかな。
我慢汁がいっぱい出てくる。
しょっぱくて、美味しい!
「私のも舐めてくれる?」
「はい。」
舐められるの。好き。
「気持ちいい!」
「もうちょっと、上、舐めて。」
「はい。」
「そこ。うん。気持ちいい!」
撮られてる!
恥ずかしい!
でも、気持ちいい!
「カズくんの。入れて。」
「はい。」
押し分けて入ってくる。
「はぁあっ!」
「今の、エロかったです!」
まさきも言ってたな。そんなエロい顔してんのかな。
「ちょっと、動かないで待って。」
「大丈夫ですか?」
「久しぶりだから。ちょっときつい。」
うそだ。
久しぶりに気持ち良くてイっちゃう。
「くぅ。はぁ。はぁ。」
やば、撮られてるんだった。
まさきにはバレる。
「落ち着いた。動いても良いよ。」
「気持ちいいよ。のり。」
なんか、キュンときた!
抱きしめたくなっちゃう!
「そんな、抱き着いたら撮れないよ。」
「まさきさんに見せるんでしょ。」
「ちぇ。抱き着きたいのに。」
「え?ほんと?」
「うん。」
「じゃあ。いったん置いておこう。」
「いいね。」
「抱きしめて。」
「のり。カワイイ!」
「年上をかわいいとか言うなよ。」
「かわいいよ。のり。」
「ありがと。」
キスをする。
舌を絡めた濃厚な奴。
キスしながら突かれるの好き。
「あっ。」
体が離れる。
「まさきさんに、撮ってあげないと。」
忘れてた。
「気持ちいい?」
「すごく、気持ちいいです。」
「やばいです。」
「もうちょっと、我慢してよ。」
「起き上がって、私を起こして。」
「これなら、我慢できるんじゃない?」
「ほんとだ。まだいけますね。」
「今度は私が上になるね。」
「このアングル、とっても綺麗だよ。のり。」
「すごい!気持ちいい!」
「ちょっと待って!そのまま!」
「くぅぅ。かはっ。」
「イった顔、撮れました。」
「言うな!」
「良かった。」
抱きしめてくれる。
「カズくん?」
「イかせてあげる事が出来ました。」
可愛い奴だ。
頭を撫でてあげる。
抜いてベッドに寝る。
「来て。今度は私がイかせてあげる番。」
「うん。のり。」
「気持ち良かったぁ。」
「あれ?カズくん?」
「うん。眠くなってきた。」
「え?」
「いつも、あんなに寝つき悪いのに?」
「あったかくて、気持ち良くて。」
すぐに寝息をたて始めた。
セックスすると眠くなるタイプなのかな?
寝つきはこれで解消じゃないのか?
いいな。このシャンプーとボディソープの匂い。
まさきと居るみたい。
「のり。」
「まさき?」
「今日、起きるの早いね。」
「そうなの?」
「じゃあ。こいつが良い夢を見てるんだろうね。」
「裸だね。」
「したの?」
「まさきが撮れっていうから、恥ずかしいの我慢したんだぞ!」
「そうか。えらい。えらい。」
頭を撫でてくれる。
「見せて。」
「のりは綺麗だな。」
「かわいいし、エロイなぁ。」
「いいなぁ。こいつ。うらやましい。」
「カズくんといっぱいしたら、まさきともいっぱい会えるかな?」
「どうだろう。そうだと良いね。」
「そうだね。そうすれば3人ハッピーになれるね。」
「カズくんになったの?呼び方。」
「うん。」
「そうか。よかったね。」
「来年も菜の花を見に行こうよ。」
「それまで、どこにも行かないでね。」
「そこを握りしめても、俺はいないからね。」
「だって大きくしてるよ。」
「それは、のりを見たからだよ。」
「そこに俺はいないし、いたら嫌だ!」
「まさきぃ。」
「そこに、俺の名前を付けないでくれ!」
1日に5分でも、10分でも良い!
こうして話が出来れば十分、幸せだよ。
どうか、この幸せな夢が続きますように。
菜の花の夢のように 三九ななな @kazu_goodfield
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