三
で、その原因というのは吐き気だった。
大きな
せつないので丁寧にえずいてみる。
で、喉の奥から出てきたのは、
だから僕はイメージを
イメージするイメージ。
イメージしている僕自身のイメージ。
誰かに見られているイメージ。
僕のことをじっくりと観察しているその誰かのイメージ。
その誰かがいま頭に浮かべているイメージ。
やっぱりこれが一番なんじゃないかな、
ああ自分の鼻息が
それは
とうてい思考とはいえない、連続体とはとてもいえない思いつきがつぎつぎ
先ほど僕の口のなかから出てきた人間の手首が動きだしたのだ。
手首はテーブルに
それにともない喉を押しひろげる腕の
しかし、このままでは自分のイメージに入りこむことができないので僕はこれに対処しようと思った。
呑みこんでしまうか、あるいは噛みちぎるか、ふたつにひとつだろうな、と、僕は思った。自分の考えにいやに納得してしまったので、思いこんだといっても間違いじゃないかもしれないな、と叫びたくなった。それはそれとして、僕は後者を選ぶことになる。そして僕は実際に、腕に軽く歯を立ててみた。
二の腕だった。
はむはむと何度かやってみると、ふっくらとした柔らかさを感じとることができた。それならと唇でもはむはむしてみると何やら妙なあんばいであった。
僕の
僕は細腕のその
意図して受け身になり喉の苦しみを感じていると、吐き気は思い出に変わっていた。いい思い出。いい思い出はいい。いい思い出はいつ思い出してもいい。と、そんなようにありふれた日常のなかにある何気ない幸せに意識を向けていると、喉にぐっと来た。
僕は実際に
それを確かめたいそれを知りたいという欲は、溜まりに溜まった性欲よろしく僕の視界を狭めつつ目に入る色彩を濃いものにして、世界というものを深遠で意義深いものであると思わせるのだった。
すでに
おそらくは
するとそのとき、いい思い出となったはずの吐き気が突然よくないものになる。
視界の奥のほうがうるさいので目をやると、細腕の五本指がテーブルのはしで
こしき 倉井さとり @sasugari
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