二
舌先で舐めとる甘すぎる汁にも
他人への
それはどうしてなのだろう、と口にするように舌を動かしてみると、
僕はなにを、なにを僕は
歯に挟まった
僕は自分が思っているよりもずっと深く君のことをイメージすることができるし、そうすればきっと、実現できることがもっと増えていくんだと思う。
いま僕はここで告白してしまうが、君という彼女がこのキッチンの
だけどこうして
僕は自分の背中に君の影がかかるのを、君が僕の背中の上方で揺れているのを感じているわけなんだけど、君のほうではあまり乗り気ではないのか君はさっぱりリアルになってくれない。君はただ僕の想像のなかでへのへのもへじみたいにあらぬ方向を向いたまま、奇妙な叫び声をあげるだけで、少しも建設的なことをしてくれない。
あるいはこれは僕のほうに問題のある事柄なのかもしれない。その場の感覚だけで生きていられたのはただ僕の運がよかったからに過ぎず、僕はこれからもっと、自分自身に起こる事柄のひとつひとつに、暗示や予感めいたものを見出さなきゃならないんだ。
ざくっ。
舌の根本の横っちょを軽く噛んでしまう。するとイメージが起こる僕のなかで。それはこんなやつだった。大きな木箱にたった一匹きりで保管されつづける喋が、たぶん、これは
で、そこで僕が理解したのは、イメージされるってことはそのイメージよりも実際のそれはもっと軽くて
首吊り自殺しているところを容易にイメージされてしまうようなやつは、君は、つまり彼女は、いや、ここではあえてそのまま君と呼んだほうがいいのかな、君は、いいや、僕にとっての君は、その程度の存在でしかなかったんだ?? 本当にそうだろうか??
ひらひらと
それなのに僕はなぜ、ふたつのイメージがかさなったというだけで、なにをこんなに
ここまで考えてみてはじめて、僕は自分の心がだんだんと落ち着いてゆくのを感じて喜ばしく思ったし、こそばゆいようにも思われた。が、ここまでスムーズに
それどころではない、そう思ったのだ。
僕がいま必要にかられてしなければならないのは、怒りを覚えることなどではなく、僕のイメージを死なせたその原因を探りだし、それと向き合い、それを見詰めつづけることだ。
この考えは間違いだろうか? この感情は間違いか?
少なくとも見当外れということはないだろうな、僕は頭のなかでそう呟き、口のほうでもおなじことを呟いた。
建設的ではなく、まして
気持ちよくイメージしているところを、断りもなく急に邪魔されるのは誰だって嫌なので、それをすることは誰の目から見ても不快な行為である。これだけは間違いない。
とすれば、もうそういうことが起こらないように原因を監視しつづけその動きを封じるというのは、火にかけたばかりの鍋の中身がことこと動くのを眺めているより、いくらか建設的であるに違いない。と考えたときには、僕はすでに、それを口に出していた。
それならと僕は、誰かに僕自身の姿を見られていると仮定しながら、おなじことを口にしてみた。するといくらか気分が晴れたので、僕は何度かそれを繰り返した。
そうするうちに、原因というのが何であったかわかってしまった。何も考えていなかったのにだ。
ははあ、もしかすると、僕という人間は、何も考えないで生きているほうが、ずっと具合がよいのかもしれないぞ? と僕は言った。
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