掌編エッセイ・『トイレ』

夢美瑠瑠

掌編エッセイ・『トイレ』

(これは今日の「トイレの日」にアメブロに投稿したものです)


 掌編小説・『トイレ』


 何かの本に、「理解しているというのはパラフレーズできること」という文があって、つまり語句には能記と所記があるから、この変換ができないと意味が分かっていない…この場合はフランス語のシニフェとシニフィアン、そういうパラフレーズができないと理解しているとは言えない…ややこしくなったがそういうことだと思う。

 翻訳する場合は常にパラフレーズをしているわけで、だから本当に意味が分かっていないとできないし、それプラスに表現する語彙やセンスも必要なのでかなり複雑な作業になる。よく外国の文献の素読を大学の授業でするのは、そういうテキストの深い理解という効果を目的としているのかと思う。

 立花隆さんが、「意味が分からない文章は誤訳を疑え」と書いていたが、よくある誤訳の例は、「to be, or not to be,it is a question 」という有名なシェイクスピアの台詞を、「アリマス。アリマセン。ソレハナンデスカ?」と珍妙な訳をした人があったという。これはでもかなり微妙な文章であって、僕もしかし同じような解釈をしそうでもあって、まあ外国語をネイティヴなみに熟達するのは至難の業だと思う。昔は翻訳家になりたくてよく原書を買ってきて一人でちまちま大辞典を紐解きながら翻訳のまねごとをしていたが、そうして例えば一冊の小説本を翻訳してしまうと本当に隅々まで意味を理解していて、しかも内容を細かく覚えているのです。

 普通は一読しただけの本とかは内容がすっ飛んでいますが、完全に翻訳までするというと未だにあらすじやデテイルのいろんな表現とかその英語とかまで記憶していて、読書が血肉になっているという実感が得られます。

 だから、本当に覚え込みたいほどいい本だと思うと、本当は原書を取りよせて翻訳をするべきかと思う。

 そういう勉強法を推奨しているのも見た記憶がある。

 岸田秀さんは若いころにフロイトに傾倒して、出版されるのを待ちかねて、フロイトの全集を原書で取り寄せて自分で翻訳していたそうです。

 で、のちに「ものぐさ精神分析」という名高いフロイトの換骨奪胎の書物を著して、曲学阿世の徒として?名を成したw

 それは冗談ですが岸田さんの本にもたびたび翻訳の話題は出てきて、例えば「Remember pearl harbour 」だと、「真珠湾を忘れるな」と日米で力点が逆になるとか、「面白半分」は「Half serious」とか、「空」という日本語の訳語が「relativity(相対性)」になるとか、人間性の根幹をなすものとしての?言葉というものは本当に奥が深いと思わせられる。


 まあ、人間性の根幹をなすものとしての「トイレ」から連想したわけではないが、深く理解している証としてパラフレーズをしてみよう。


 toilet  ,  water closet  ,  rest room , 化粧室 、雪隠 、 厠 、はばかり 、


まだあるかもしれないが幻聴がうるさいのでやめます。


<了>

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