エピローグ

次の舞台へ!

 「初ダブルス、打倒二年生」が終わりとすぐに、一年生たちはフラワーギフト学園の教室に集められた。


 集合をかけたのは、学園長の秋風緑。しかし、まだ教室にその姿はない。


 緑を待つ一年生たちの感情は様々だった。


 疲労感。試合に負けた敗北感。憧れの二年生の姿を見たことによる高揚感。


 すべての感情が混ざり合い、言葉にはできない気持ちが胸に溢れ出す。


 そのためか、緑を待つ間、教室の中は静かだった。


 フラワーギフト学園に入って数か月が経った。


 一年生たちは、もうたっきゅーと!のアイドルである。


 緑が教室に全員を集めた目的にも、何となく察しがつき始めていた。


 そのとき、教室の扉が開く。現れたのは、もちろん緑だった。


「みんな、お待たせしました」


 スーツに身を包んだ緑は、教壇に着き、一年生の顔を見渡す。


「まず、イベントお疲れ様。あなたたちにとっては悔しい結果になったわね。相手の方が先輩だからとか、そういう言い訳ではなく、いま本当に悔しいと感じることができているのであれば、その気持ちは必ず、あなたたちを強くしてくれるわ。決して忘れないように」


 そう言うと、緑はシステム操作。ホワイトボード前にスクリーンを出現させる。


「ただ、二年生のたちの姿を間近で見せることができたのは、私たちにとっては嬉しい結果になったわ。今回のウィナーライブでも、感じた人も多いでしょう。ユニットの凄さを」


 ハナは、緑の話を聞き、鮮明に先ほどのウィナーライブを思い浮かべることができた。


「これから先、あなたたちは、フラワーギフト学園の一年生としてではない。たっきゅーと!のアイドルとして、二年生だけでなく、三年生、他のたっきゅーと!アイドルたちとも戦っていかなければいけない」


 スクリーンに映し出されたのは、たっきゅーと!二部リーグのロゴマーク。


「次のあなたたちの目標は、たっきゅーと!二部リーグに参加することです。もう気づいている人もいるかもしれないわね。参加するにはユニットが必要になる。いまから発表するのは、私と教師たちで考えた、ユニットのメンバーよ」


 緑が操作をすると、一年生の名前がそれぞれ映し出される。


「まずは、それぞれのユニットでユニット名を決めてもらいます。練習期間を設けた上で、ユニット同士のたっきゅーと!を開催する予定です」


 一年生たちは、緊張した面持ちで、自分のユニットメンバーを探す。


「そして、準備が整い次第、それぞれのユニットでたっきゅーと!二部リーグに参加してもらう形になるわ。みんな、頑張ってね」


 そして、スクリーンに自分たちの名前を見つける。


・夢咲ハナ 栗野マロン 星空エミ


・天使愛歌 美甘メグム 月星ルナ


(マロンちゃんとエミ……!)


 ハナは、ぎゅっと膝上で両手を握りしめる。


(私たちも、ナギさんたちみたいなユニットに……! それで、二部リーグ!)


 これから先のたっきゅーと!のことを考えると、ハナはわくわくが止まらなかった。


「それと、最新ニュース」


 緑の言葉に、一年生全員が首を傾げる。


「この時期は例年、前回のイベント、今回のイベントを見て、新しくお仕事のオファーが来たりすることがあるわ。もう経験ある子もいるかもしれないけど、初めてお仕事がくる子もいるから、みんなで支え合うようにね」


 「はい!」一年生全員は緑の言葉に返事を返す。


(お仕事か……そんなこと考えたこともなかったなあ)


 思い返してみると、エミと愛歌はすでにアイドルとしての仕事を行っている。


 他にも数人、声がかかったという話をハナは聞いたことがあった。


(でも、私にはまだ、そんな話はこないだろうなあ)


 そんなふうにハナが考えていると。


「それで、夢咲ハナ。あとで理事長室に来るように」


「……へ?」


 ハナは一瞬、何を言われたのかわからなくなる。


「ちゃんと聞いてた? この話が終わったら、理事長室に来るように」


「は、はい……?」


 ハナは取りあえず返事をするが、話がいまいち呑み込めない。


(え、私、何かやっちゃったかな!? こんなタイミングで理事長室に呼び出されるなんて……!)


 あたふたしているハナをを見て、何かを察したのか、緑が言い方を変える。


「夢咲ハナ。あなたにお仕事のオファーが来てるわ。あとで打ち合わせをしたいから、理事長室に来るように。いいわね? 初仕事、頑張ってね」


 そう言っていたずらに笑う。


「は、はい! 頑張ります!」


 そう大きな声で返事をして数秒、ハナはやっと状況を理解する。


「わ、私にお仕事が……!?」


「初ダブルス、打倒二年生」を終え、一年生たちは新しいステージに進んでいく。


 目指すはたっきゅーと!二部リーグの舞台。そして、アイドル活動。


 ハナたち、たっきゅーと!のアイドルの物語は、ますます熱を帯びていくことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たっきゅーと!~アイドル×卓球~ 木春凪 @koharunagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ