第38話 side Nico
「お世話になりました。」
「あおいくんまたきてね。」
お母さんは碧生くんが整えてくれた庭をえらく気に入り、何度も「また来てね。」と言っている。
「はい。ありがとうございます」
碧生くんはぺこっと頭を下げる。
「また来てね。おにいさん」
おにいさん!?
「寧々!」
余計なこと言わないでよ。
いちゃついてるところを寧々に見られるなんて一生の不覚だ。
「なんかごめんね。いろいろ付き合わせちゃって」
「いや、俺の方こそいろいろお世話になっちゃって。すごく楽しかったです。それにニコさんと仲直りどころか…。」
そのあとを言わず手を繋いでくる。
たしかに昨日まで仲直り通り越して恋人になるとは思ってもなかった。
「店長に焚き付けられたんですよ。マネージャーに取られるよって。」
わたしが宇佐美と…。
「ないないない!」
想像しただけで鳥肌もので、体で全否定した。
「でもあの日、抱きしめられてましたよね。」
碧生くんが遠くを見ながら言う。
やっぱり見てたよね。
「セクハラで会社に訴えてやろうかと思いました。今度何かされたら俺に言ってくださいね。」
「あはは、ありがとう。」
碧生くんに言ったところで宇佐美にダメージはあるんだろうか。
気付けば駅と職場の分かれ道。
「じゃあここで。仕事がんばってね。」
繋いでた手を離すと、碧生くんがキョロキョロしてなにか確認してる。
「ん?どうした?」
顎をくいっと上げられて唇に軽くキスされた。
「じゃあセミナーいってらっしゃい。」
と自転車にサッと乗って、行ってしまった。
スマートだけどめちゃくちゃ甘い。
かっこよすぎやしませんか?と後ろ姿を見送りながら思う。
胸がキューっと苦しい。
心臓がもたないよ。
恋しちゃうのは不可避だった 羽屋テラ @haya-tera181122
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