第2話 姿を変える魔法
姿を変える魔法については、美女と野獣の物語の主軸に大きく関わっているので少し長くなります
ストーリーの概要と併せて書いているのでネタバレ必須になります
まだ本編を知らない人は可能であれば本編をご覧になってから読んでいただけると幸いです
これからガッツリ本編のお話になるので用意ができている人だけ画面をスクロールしてください
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そろそろ大丈夫でしょうか…
では続けますね
まずは序盤のストーリーから
王子は野獣に
召使い達はお城の備品へと姿を変えられてしまいました
そして言い残されたのは
『バラの花びらが枯れ落ちるまでに
王子が真実の愛を見つけることができなければ
お城にかけた魔法を解くことは出来なくなる』
です
『真実の愛』
それだけが魔女からもたらされた唯一の救いだと
お城の誰もが認識しました
だけど、野獣の姿に変えられた王子は
『こんな醜い自分を愛してもらえるはずがない』と嘆き
心を閉ざしてしまいます
そして、わがままさと傲慢さ、それから優しさに欠けた人柄はそのままに
時だけが過ぎ去って行ったのです
時おり姿見の鏡で外の世界を覗き見ることが唯一の王子の楽しみでした
時が過ぎ、次第次第に王子も後悔の念に苛まれ憔悴していき
次第に野獣の見た目通りに気性も荒くなっていきます
お城には時たま
金品を狙って盗賊が来るばかりで
王子の心も荒んでいきます
そんなある日
森で迷った父親(ヒロインの村娘の父親)が
偶然にもお城にたどり着きます
お城では気性の荒くなった王子が
父親をいつもの泥棒だと責め立てて
牢屋に放り込んでしまいます
父の帰りが遅いので
村娘が父の手がかりを追いながら
何とかお城へとたどり着くと
父が牢屋に入れられているところを目にします
父は弱りきっており
村娘は代わりに自分が残ると申し出ます
王子はその申し出を承諾し
父親を解放し強制的に村まで送り届けます
ここまでが物語の序のストーリーですが
私の考察を少しだけ挟みます
主に王子の微妙な変化が物語と魔女の魔法とを繋げる鍵だと思います
父の代わりに残るという村娘の申し出を受けて
王子がとった行動は
おそらく野獣に変えられる前と違っていたのだと思います
老女として現れた魔女が忠告をしても追い返そうとした王子と
村娘の申し出を受けて渋々ながら承諾した王子
状況は少し違うのですが
ここでは王子が
自分の我を貫く姿勢を
少しだけ弱めたという見方もできるのです
魔女に姿を変えられていなかったら
王子はそのような申し出に応じなかったでしょう
そして、自らの意思でここに残ると言った村娘を
牢屋ではなく、お城の中に招き入れたのです
それから、お城に招き入れた村娘をディナーに誘います
ディナーに誘うも村娘からは良い返事はもらえませんでした
しかし、そのことも以前の王子だったら
そもそも招かれざる客を
城に招き入れたりはしなかったでしょう
ここでの王子の変化は
甘やかされてチヤホヤされて育った王子は
寂しいという気持ちを持ち合わせていなかったので
野獣に変わって久しく自分の城に人が訪れなくなって
寂しさを経験したのだと思います
それに、魔法のバラと一緒に言い渡された『真実の愛』の話がなかったら
村娘をディナーに誘うこともなかったかもしれません
魔女の思惑として
王子に真実の愛を追い求めることを通して
人への情についてよく知って欲しかったのかもしれません
その後のストーリーにも王子の変化が少しずつ見えてきます
物語に話を戻し、中盤に進みます
野獣の王子は不器用ながらも
城に招き入れた村娘とどうにか親交を深めようとします
しかし
王子は野獣としての自分に自信がなく
色々と上手く行きません
西の外れの自室に保管しているバラの花びらは
その花びらをゆっくりと落としていきます
この事は王子の心を徐々に蝕んでおり
どうしようもない苛立ちに苛まれることもあります
村娘が西の外れの部屋に立ち入るなという言いつけを破り
バラの花に近づいてしまった際は
王子の怒りが抑えきれず村娘を乱暴に追い返してしまいます
村娘は恐ろしい野獣の形相に血相を変えて城から逃げ出しますが
城の周りの森で狼の群れに囲まれてしまいます
そこに王子が駆けつけて
手傷を負いながらも村娘を守り
村娘は自分のために負傷した野獣を看病することになります
以前の王子なら
去るものを危険を犯してまで追うことは無かったはずです
村娘は看病をつきっきりで行い
王子が常に恐ろしい訳ではなく
そんな醜く恐ろしい野獣の姿をしてはいるものの
自分のために手傷を負い寝込む姿や
傷の手当てで痛がる様子
食事の際に野獣の手では上手くフォークやナイフを使えずこぼしながら食べる姿など
見た目とは違った人間らしさを感じることができ
次第に心を開いて一緒に過ごす時間も増えていきます
村娘は王子とは違って
はじめから物事を見た目や表面的なことだけで決めつけることをせず
よく観察して自らの頭でじっくりと考えを固めるタイプの人でした
それから穏やかに過ぎていく2人の関係とは裏腹に
バラの花びらは1枚づつ花びらを落としていきました
そこで、王子は村娘と過ごすための特別な夜の提案をします
2人のためだけの舞踏会を開く事です
王子もかつてのようにとは言わないまでも
伸びるに任せていた爪や体毛を短く切りそろえ
ちっちりと身だしなみを整えて
豪華な晩餐と
お城の最上級のドレスと燕尾服をそれぞれ身に纏い
お城の大広間でロマンティックなダンスで締めくくられる特別な夜を過ごしました
2人の中に目覚めつつあった小さな情が
確実なものになりかけていた時
王子は村娘が抱いていた父に会いたいという願いを
すんなりと聞き入れて
姿見の鏡で父親を見せることにします
この時
王子はなんの見返りもなく村娘の願いを聞き入れます
野獣に変えられた当初は持ち合わせていなかった優しさを
村娘との触れ合いの中で発揮できるようになった大きな成長といえるでしょう
村娘が姿見の鏡を見ると
父親が咳き込みながらも森に入り娘を探す姿がありました
父親は道に迷って城にたどり着いただけだったので
城への手がかりがなく
ずっと見つけられずにいたのです
咳き込み倒れる父親の姿を見た村娘は悲痛な面持ちを浮かべます
そこへ王子は『君を自由にする。行きなさい。』と背中を押し
姿見の鏡を村娘に譲り渡し村娘を城からの解放を許可します
村娘はすぐに城を去り父親のもとに急ぎました
そうして城には
また王子と召使い達だけが残りました
王子は村娘を想い涙して
自分が村娘に恋をしていたのだと悟ります
しかしもう何もかもが遅い
バラはほとんどの花びらを散らしてしまい
残りわずか
彼女を送り出したことに不思議と後悔は無く
むしろ、あそこで彼女を送り出さなければ
一生の悔いとなっただろうと振り返ります
『これで良かったんだ』
王子は叶わなくなってしまった恋に失意を抱き
村娘が来る以前よりも暗く
心を閉ざしてしまいます
美しい村娘と
醜い野獣に変えられた王子
はじめから決して結ばれることがないように思われた2人の間に
いつしか確かな絆と呼べるものが生まれ
王子の方は恋心を自覚しました
それでも
お城にかけられた魔法は解けることがありませんでした
魔女の言う『真実の愛』には
想い合う2人
双方向の愛情が不可欠でした
その事が物語の終盤に明らかになります
所変わって村での出来事
村娘には村で城へ来る以前に求婚を迫られている相手がいました
その相手は村1番の腕利きハンターであり村1番の美男でした
美男は腕も顔もよく、村の若い娘たちの間では最高の旦那様になると専らの評判でした
しかし当の村娘にとっては
美男は野蛮で粗野で無礼で傲慢な
そう、かつての王子と重なるような人物なのでした
美男は美しい容姿や最高の狩の腕前を持っていましたが
残念ながら人への思いやりにかけており
自分さえ良ければ何でもやってしまうような傲岸不遜な人物でした
村娘は美男からの求婚を拒み続けていましたが
村娘が城から戻ってきた時
美男は村娘の微妙な変化に気づきます
野獣である王子に少なからず好意を寄せていることがわかってしまうのです
美男は相手が醜い野獣だと村娘の父親から聞きつけ
これ幸いと村人を野獣の討伐に焚き付け
自らもその野獣を亡き者にするために城に乗り込んで来ました
失意の王子には反撃の意思はありませんでしたが
美男の執拗な攻撃で傷を負い仕方なく応戦します
応戦すると王子の野獣の力は美男を圧倒し
美男は命乞いをします
王子は美男に執着はなく
命乞いを聞き入れ立ち去るように警告し背を向けます
その背を向けた王子に対して
美男は不意打ちに深い傷を負わせて屋根から転落して死んでしまいます
王子が受けた傷はとても深く
駆けつけた村娘の目にも助かる見込みがない事が明らかでした
王子は最期にまた会えて良かったと
力の入らない声で村娘に伝えます
その時になってようやく
村娘は野獣の姿の王子に対する愛を自覚し
消えかける王子の命に涙して
愛していることを告白します
時を同じくして
あの1輪のバラの花びらは
最後の1枚の花びらを散らします
城中の魔法を解く望みは
王子の命ともに尽きたと
そう思われました
ですが、そこで奇跡が起こるのです
王子の体が魔法に包まれて
みるみるうちに元の王子の姿へ
そしてお城中召使い達も
元の人間の姿を取り戻していきます
野獣から人間に戻った王子の体には
野獣の時に負った深手の傷は無かったかのように治っており
生命を吹き返します
物語は大団円となり
王子と村娘は結ばれ幸せに幸せに暮らしたという
ハッピーエンドで締めくくくられ
語り継がれる物語になったというお話でした
ストーリーは語り終えてしまいましたが
もう少しお時間をください
1輪のバラに込められた本当の魔法について
私なりの考察です
魔女はバラを差し出す時にこう言いました
『バラの花びらが枯れ落ちるまでに
王子が真実の愛を見つけることができなければ
お城にかけた魔法を解くことは出来なくなる』
そして、老女の姿の時にはこうも言っていました
「人を見た目で判断すると本当の心に気づくことができなくなってしまう」と王子に忠告したのです
魔女は王子や召使い達の姿を変えましたが
心まで変えることはありませんでした
魔女の魔法も万能ではありません
心を変えられたなら傲慢でわがままな王子を
優しさや思いやりのある心を持った人物に変えていたでしょう
しかし、魔女は直接的な魔法ではなく
言葉と困難な試練を与えて王子を更生させ
召使い達にも王子をしっかりとサポートするように
仕向けました
その試練を乗り越えて元通りのお城の姿に戻った時には
王子は優しく思いやりのある人を心から愛せる素敵な人物へと変わっていたのです
魔女はお城に呪いをかけた
そういう冒頭のお話でしたが
実際に魔女がした事の結果だけを見ると
長い時間をかけて王子やお城の召使い達に
やり直すチャンスを与えたのです
呪いととれる見た目の変化だけで判断するのではなく
どうしてそのように仕向けたのか
魔女の本当の心に気づくと
物語の主軸としているテーマと重なって胸が熱くなります
そこで今1度
あの1輪のバラに込められた魔法について
考えてみてください
魔女は呪いをかけて人を不幸に陥れるような人物ではありませんでした
それならこの言葉の本当の意味にも当たりがつくかもしれません
『バラの花びらが枯れ落ちるまでに
王子が真実の愛を見つけることができなければ
お城にかけた魔法を解くことは出来なくなる』
物語のラストを思い返してください
バラの花びらが全て落ちた時
なにが起きたでしょうか?
そうです
お城の全ての魔法が解けたのです
ここからは本当に意見が別れるかもしれませんが
あくまで私の私見的考察の結果をお伝えしたいと思います
この1輪のバラには
【『真実の愛』が成就すると枯れる】
そういう魔法が施されていたのだと思います
バラが枯れる前に『真実の愛』を見つけなさいと言いながら
そのバラは『真実の愛』への道しるべとなり
決して目標を見失わないようにさせるための
強いメッセージが込められていたのです
そういう考察をしていて
この物語には一貫して
見た目だけで判断しないように
美しいものでも良くないことがあり
見た目はとても醜くても素晴らしいものを秘めている
そんな物語のテーマがあり
そのことをより深く感じることができました
最後になりましたが
この物語を書いてくださった
ウォルター・クレインさんに最大級の感謝を
素敵な物語を世に残してくれて
本当にありがとうございます
そして、私がこの物語を知るきっかけをくれた
ディズニー映画『美女と野獣』にも
感謝をしたいと思います
世界に素敵な物語を発信してくださって
本当にありがとうございます
童話に出てくる魔法についての考察『美女と野獣』 アルターステラ @altera-sterra
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