私は、
私は知らされていたわけじゃない。でも、分かっていた。彼の目はこうなることを覚悟していた。
新聞売りの商人に金を払ってから、彼女を抱いて包み込む。
戻るべきパーティが失われた。私は少なからず経験している事態だが、彼女はどうだ? 修道女として人々の苦しみに寄り添うことはあったとしても、寄り添いたいと思っている相手が手の届かないところで帰らぬ人となったとしたら? 思いもよらぬところで知らされたとしたら?
慟哭が止まらない。
こうなることを予想するのは決して難しいことではなかっただろう、しかし私は抱きしめる以外にできることが思いつかなかった。何かひらめくものはあったのかもしれないけれど、実現に移すことはできなかった。
私には答えがない。答えようがない。私は彼女のすべてを知っているわけではない。
この期に及んで戸惑っている自身がいた。幾多の仕事をこなしてきたこの私が、どうして彼女の感情に揺さぶられているのか。本来なら私は腕の中の彼女を殺めなければならなかった。なのにじんわりと広がる暖かさが優しかった。
私は彼女を抱きしめる腕に力を込めた。きっと色々なことの潮時なのかもしれない。魔王領を奪還すべき勇者パーティは役目を終えた。暗部としての私の役目も終えた。聖魔法の使い手としてパーティに付き従う彼女の役目も終えた。
私は、私は。
立ち上がらなければならない。
かれらは、 衣谷一 @ITANIhajime
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