第22話 最終話

 見送り……と言っても、実家ですから学生の間の長期休暇はこちらに帰ってくる予定です。


 両親も弟もまた私を南の国へ行かせる事になるとは思ってはいなかったようです。



 ジルベール はとても寂しがって最後まで泣いていました。



「またすぐ会えるわ! 次に会うときにジルはもっと大きくなってるね。お父様とお母様をお願いね。遊びに来てね。約束よ?」





 ジルと約束をし別れを惜しんでいると、見送りにきた。と言って……なんと! ジュール殿下が来た。




 ウェズリー様は私と会わせないようにしたけれど……





「ウェズリー様、少しだけお話をさせてください」


「ダメに決まっているだろう!」


 と言って反対されました。



「わたくしのことは信用できませんか?」



 じぃっとウェズリー様の顔を見ると、少しだけだから! と諦めてくれました。また国を出る事になったのでウェズリー様は私に引け目があるんですって。





「もしかしたら見送りに来てくださったのですか?」


 私から殿下に声をかけました。



「……謝りたいことがありすぎて何から話せば良いか分からない」



「はい」



「父上にミシェルと婚約したいと言ったら反対されたけど、本当は私が臣下に降れば婚約は出来たんだ。でも王族から抜けるという決断が出来なかったんだ。愛していたのに、身分に拘り受け入れなかった。兄上の話をちゃんと聞いていれば……伯爵家にも迷惑をかけた。すまなかった」


 殿下は頭を下げました。



「もう過ぎ去った事です」



「自分を見つめ直すべきだった。それが出来なかったからプリシアにも迷惑をかけてしまった。三年ぶりに会ったミシェルは大人びていて自分だけが取り残されたような気持ちになった」




「わたくしは、」


 次の言葉が見つからなかった。



「ミシェルに世界は狭かったと聞いて、私も思うところがあった。遅いかもしれないけれど、プリシアと少し旅に出る事にした。プリシアの国のことを聞いて、見聞を広めようと思った」



「はい。とてもいいと思います。もし可能なら南の国の海沿いの街をオススメします」



「ミシェルのオススメか、候補に入れておくよ」



「ジュール殿下、最後にお会いできて良かったです。お元気で」



「ミシェル、今更だけど色々と悪かった……君のことを愛していたのは嘘ではないんだ」



 愛していた。過去の話という事です。




「ジュール殿下、わたくしも幼心に愛していましたよ。私の初恋ですもの。だからどうかお幸せに」




「あぁ、ミシェルもな」



 手を出されたので、お見送りありがとうございました。と言って握手をして別れた。



 もうお会いすることは無いのかもしれない。そう思いました。




 心配そうに見ていたウェズリー様の元へと戻る。



「ジュール殿もミシェルもいい顔をしている」



「はい。話をする機会を作ってくださってありがとうございました」



「またすぐに南の国へ行く事になってごめん」



「……またそれですか。長期休暇には帰りますから、そこは許してくださいね」



「はい」




 家族と離れまた南の国へと行くことになる。王宮に住まわせてくれると言われたけれど、叔母様の家にまたお世話になる事になった。

 侯爵様が家族なんだから戻っておいでと言ってくださったし、ローランお兄様もリベロくんも同意だと言う。






 南の国の学園はなんていうか……楽しかった! 友達も沢山出来たし、貴族たちも学園に入れば身分は関係なしで対等だった。



 結局成人の儀は南の国ですることになり社交界デビューをしました。



 後見人は侯爵様が務めてくれたし、パートナーはもちろん婚約者のウェズリー様。



 成人の儀を迎えた事で公の場にも出られるようになったしウェズリー様と公務を共にした。



 ウェズリー様は普段は明るく朗らかで優しい方だけど、仕事の時は至って真面目! 民の心に寄り添い人気があるんですって。



 幼い頃から国中の様々なところに足を運んでいたのだそう。



 初めて連れて行ってもらった海沿いの街での網焼きや、フルーツ狩りが当然のように出来たのはそのおかげ。



『それにいろんな国にも行かせてもらった。その時にミシェルに会ったから色んなところへ行ってみるものだね。いやあの時に会わなくても、侯爵の家で会っていたから良いか! ちょうどあの頃に落ち着いて王宮に住むようになった』



 お義兄様方はウェズリーは末っ子だから、父上も母上も好きにさせていた。

 もちろん護衛も付いていたけど、ウェズリーは将来のためだ。と二人を説得していた。


 と教えて下さった。

 


 すごい! そんな歳で将来を思っていたなんて。ウェズリー様といたら、なぜか私も頑張りたいって思えるから、これから先も大丈夫だと自信に繋がった。










 それからしばらくして、ウェズリー様に滝を見に行こうと誘われました。



 すごく美しいんですって!







「ねぇ、ミシェル」


「はい、なんですか?」


「見送りに来ていたジュールと最後に何を話していたの?」




 ずっと気になっていましたのね……。




「見聞を広めにいろんな場所へ行ってみたいとおっしゃったので、それは良いことですねとお勧めしました。思っているより世界は広いですから。私は滝の水飛沫がこんなに癒されるだなんて初めて知りました」



 空気が澄んでいて涼しくてとっても気持ちがよく癒されるし、滝の水音も大迫力ですもの。



「ふーん。どこかに行ってもう帰ってこなけりゃいいのに……本当にそれだけ?」



 あ! 疑いの目を向けていますね。思っていた答えと違うようですね……。




「愛していましたよ。だからお幸せに。と、お互いの健闘を称え合いました」



 少し違うかもしれないけれど、間違いではない。



「そっか。それならジュールたちに負けられないね……」



 そう言って口付けをされた。



 恥ずかしくて真っ赤に染まった顔を見てウェズリー様が嬉しそうに





「ミシェル愛している。幸せにするよ」








「わたくしも愛しています。ウェズリー様」








       【完】

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