第21話 早朝はバタバタとしている
夜が明けようとしていた。
カーテン越しにも少し明るくなってきただろうと感じた。
眠りは浅かったから頭がすっきりしていない。
「ミシェルお嬢様、起きてください」
「……えぇ」
眠たいけれど早朝に出るという予定なので、冷たい水で顔を洗って目を覚まして準備を始めた。とは言っても支度を整えるくらいだけれども。
侍女やメイドは荷物を纏めて昨日のうちに馬車に積んでいたらしい。
「何から何まで迷惑をかけてごめんなさいね」
帰る準備をしてくれた侍女たちに申し訳なく思う。眠いなんて言えないわね。
「良いです! こんなところすぐに出ましょう!」
こんなところって……まぁその通りだけれど。
******
「ウェズリー殿下、ミシェル様……本当にお帰りになられるのですか! 私たちが出て行きますのでどうぞ、ごゆっくり……」
身支度も整えていない公爵が部屋から飛び出してきたような格好で出てきた。
「見苦しいぞ公爵、既に用意は済ませたから一刻も早くこの場から出て行く、もう二度と会う事はないかもしれんが息災でな」
「そ、そんな……」
昨日に引き続き崩れ落ちた公爵様。
その後はなんとなくお察しの通りですが、離宮に無理やり侵入してウェズリー様の婚約者である私を散々貶した公爵家の二家は降爵となり、領地の没収と莫大な罰金刑。
南の国の第三王子であるウェズリー様は私も軽く見られたものだ。ここまでバカにされるとはなぁ。と言ったそうです。
二家とも伯爵家となったようですが、莫大な罰金のせいで伯爵家といっても領地もなくなり、肩身の狭い思いをすることになりそうです。
お家取りつぶしも考えたそうですが、散々馬鹿にした伯爵家になり、領地による収入源もたたれるのです。
放っておけば近いうちに勝手に潰れるだろう。陛下から睨まれて、それでも助ける家があると思う? そんな命知らずな家はない! という事です。
ウェズリー様……怖い。
子息と令嬢だけで遊びに来ていた家……侯爵家の二家は領地の半分以上を没収されたのだそうですわ。もちろん子供を躾けられなかった罰としての莫大な罰金まで……。
こちらも領地の収入がかなり減るので、今までの傲慢な態度だったら誰も助けてはくれないでしょう。
その後離宮に来ていた子息は家を出され、令嬢は厳しい修道院へ送られることになったそうです。
噂に聞くところによると高位貴族の令嬢が過ごすような場所ではないと言う事でした。
これ以上、ことを荒立てる事をしたくなく切り捨てたと言う感じです。
王太子殿下とブリジット様がすすめられていた貴族内の格差を無くすという政策も今後一層すすめられる事になりそうです。
蔓延っていた毒は排除されたのですから。
そして来年お二人のご成婚を機に、陛下は引退されることになりました。
陛下もこの件について責任を取られましたのね。
王妃様はすでに王宮には居られないようで、隔離された場所に移されたそうです。
これは貴族の方と連絡を取れないようにする為だと聞きました。
陛下はお怒りになっていて、最後まで奪爵するとまで言っていましたが、ウェズリー様は望まないと言い、この国の身分制について呆れていました。
国政に口出しはしないけれど、このような状態で国同士仲良く出来ると思うか?
陛下と王太子殿下との話し合いで仰ったのでした。
ウェズリー様はいつも明るい方ですが、怒るととても恐ろしく、口数が少ないもののその一言一言に重みがあると言うか……
兎に角! 怖かったのです。
南の国の陛下は報告を受け怒り心頭ですぐに大使を寄越し、南の国に頭が上がらない状況だと聞きました。
ジュール殿下とプリシア王女は、そのまま婚約を継続しますが、王位継承権の放棄、王族から抜け臣下に降り一代限りの公爵を名乗る事になりそうです。
与えられた領地は荒れた大地だと聞きました。
甘いかと思われますが、表舞台に出ることはなくなりますし、もしジュール殿下やプリシア王女が公爵という立場を悪用するのなら、爵位は即剥奪とし流刑になる事も決まったそうです。
プリシア様のご実家の東の国へも連絡が行き、東の国の教育が悪かったせいだと謝罪されたそうです。
プリシア様はそれを聞いて泣き崩れてしまいました。
女王陛下はとても嘆いていらしたそうで、プリシア様は女王陛下から恥知らずと言われ帰る国がなくなった事により婚約は継続となったそうです。
我が国の教育者に問題があったのは事実ですものね。
ウェズリー様は、この国の体制が変わらないのならここにいる意味がないと言って、大学の教授をスカウトし南の国へ連れ帰る事になりました。
私の家はお咎めなし、謝罪として慰謝料と領地が新たに与えられたのだそうですわ。
私もこの国からまた離れる事になりました。両親や弟と離れるのは寂しいですけど、話し合って決めた事です。
王太子殿下の御世になってこの国が変わることをお祈りしていますわ。
そして勝手ながらジュール殿下には、世界は広いと教えて差し上げたい気持ちです。
幼い頃のジュール殿下への気持ちがあってこそわかった事ですもの。
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