菊の華道

一葉迷亭

第1話

「城」


疲れないのだろうか?彼ら

毎日のように同じ言葉を繰り返し

誰もが見てみぬふり


疲れないのだろうか?僕ら

夕闇に融ける涙 母の隈の痕

誰もが見てみぬふり


古城をつくり 毎日つくり

単簡に砲撃を開始する彼ら、女の汗を舐めたい

いい匂いしそうだ 欲情に

身を任せたことはない彼らと僕ら 女の愛を求める


冷えた侮蔑の目に 誰もが見てみぬふり


「菊の華道」


祖母の民家には 畠田には折れ曲がった菊波がある

一歩進み更に足をつけながら 

一本だけ残っていた

夕陽を浴び

その菊の花は堂々と


最後に残った菊の花

蹴って折った


「秘境駅の」


ここは秘境駅 もう誰も使っていない

何の意味のない 襤褸になった駅


もう誰もいない ずっと昔の約束の場所

彼女が使っていた ハンケチがある


夏の熱気は相も変わらず ハンケチの匂いを嗅ぐと

自分のにおいがした

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

菊の華道 一葉迷亭 @Itiyoumeiteini

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ