善問答
わたしの中に私の粒子がある限り
わたしは善になり得ない
それは一欠片の炭
一滴の墨汁
誰かを想う優しささえも
奥底深くをかき混ぜたらば
モヤモヤとした汚泥が漂う
それは例えてみるならば
あなたの悲しみを癒やそうと
僕が吐き出す言葉の中に
悲しむ君を見たくないという
どうしようもない自己愛が紛れ込んでいるのに似る
わたしの中に私の電子が漂う限り
私は空にはなり得ない
それは流動する硝子
限りなく透き通った薄氷
空の空真似
見えないようで触れてみれば
指を傷つけ冷たく滴る
それは例えてみるならば
無関心で動かない
冷めた石の肌触り
解脱というには余りに頑固で
誇りというより埃にみえる
善とは常にわたしの外で
遥か彼方で手招きしている
夜明けの空の地平に光る
あの輝きのように遠い
それでもわたしは私の限り
そこに向かって進みたいのだ
手繰り寄せられていたいのだ
猫を被りて筆を執る 深川我無 @mumusha
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