8.霧の中
4.
俺は仲部に言われた通りに、裏にある階段から降りて行った。
奥から肌寒い風が吹いてくる。怖いから行きたくない、でも足は勝手に動く。少しずつ足を進めていく、こんなゆっくり歩いている暇ではないのは分かっている。でも、ゆっくりと使い捨てカメラで写真を撮りながら、歩きたいような不思議な魅力がある。
「おっと、そろそろ走らないと、捕まっても嫌だしな。」
俺が走っている中、仲部は誰かに「もういいですよ」と言った。
すると、茂みの中に隠れていた塩尻が出てきた。
「ふぅ、諒君は後ろの階段から降りて行ったかしら?」
「もう行きましたよ、何でそこまでしてあそこに連れていきたいんですか?」
にやっ笑いながら塩尻は言った。
「あそこには何があるか知っているでしょ?」
仲部は何かを知っているのか、少し顔をうつ向かせながら話し出した。
「えぇ、多少は、一時間と持たない場所でしょう?あそこは危なすぎますよ、」
「そう、皆は入っていくことができても、出ていくことのできない場所。諒君はどうなるかな?」
「ーとりあえず地図を見るしかないか、、」
俺は分かれ道でどっちに行こうか迷っていた。カバンから地図を取り出し、場所を確認しようと開いたら地図の右上だけがぽっかりと空白ができていた。後ろを確認してみても、何も書かれていない。
「俺の歩いている場所だけ地図にない場所なのかよ、どっちに進もうか・・・」
とりあえず、直感を信じて左に進むことにした。
「そういえば知ってる?人間は分かれ道があると大体の人は左に行くらしいよ?」
「へぇ、あの場所は左の道の先、行くかもしれませんね。」
俺はそんな危険そうな左の道を進んでいった。
「何だろう、今いやな気がしたけど、後ろにはもう下がれないよな。」
少し走って、さっき降りてきた階段が完全に見えなくなるところまで来た。
後ろにはだれも来ている様子がなかった。ただ一つ気になることはこの先も霧が出ていることだ。
「この霧いったいどこまで続いているんだ、」
とりあえず前に進んでみることにした。
歩けば歩くほど今自分がどこを歩いてるのかが分からなくなってくる。だからといって後ろへ行けばやられるかもしれない。だから前へと進んで行った。
キスガアナタ 山咲 金時 @yamasaki_kintoki
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