第4話(終) 学園祭

 不良集団が壊滅したことで、こうして学園祭は無事に開かれていた。

 一般開放されていることから、来客も増えていた。

 その光景を見ながら謙吾は行彦に言う。

「良かったね、行彦。君のお陰だよ」

 行彦は謙吾の言葉に首を横に振る。

「違う。全部、謙吾のお陰さ」

 否定する行彦に、謙吾は謙遜をするなと首を振る。

「この学園祭開くことができたのは、行彦のお陰だよ。女子生徒に対する嫌がらせも無くなったし、これで行彦の事を放ってけなくなるんじゃないの?」

 謙吾はそう言って笑う。

 その言葉に、行彦は反応する。

「そ、そう。いや、参ったな。俺がモテるとは思わなかったぜ。これは、俺に春が来たかなぁ~」

 行彦は嬉しさを噛み締めるように、ニヤけた顔を浮かべる。

 謙吾は、行彦の喜びように苦笑した。

 目の前をメイド姿に扮した女子生徒が、二人歩いて来る。

「あの娘達、可愛いね。行彦、声をかけてみたら?」

 行彦は謙吾の提案に、鼻息荒く応じる。想像の中で、行彦が不良集団・黒走会を壊滅させた英雄だと持て囃される様を思い浮かべる。

 行彦は女子生徒に声をかけ――。

「学園祭。無事にできて良かったね。あの不良集団が学校にちょっかい出してくるから心配だったけど、もう安心ね」

「本当。私も絡まれた時は、凄く怖かったわ。でも、どうして急に来なくなったの?」

「知らないの。佐京君って聞いたことない」

「聞いたことある。武術をしてて、凄く強いって噂の人」

「そうなのよ。でね、佐京君。不良連中のトップを含めた200人を、たった一人で倒しちゃったんだって」

「たった一人で……。スッゴイ。ねえ、今日は来てるの?」

「それがさあ。何だかんだとあって、今日は休んでいるみたいなの」

「残念。私、一言お礼を言いたいな」

「分かる。じゃあさ――」

「うん――」

 女子生徒達は、行彦と謙吾の前を素通りして行った。

 行彦と謙吾は、愕然としていた。

 そして、同時に理解した。

「……行彦。僕らが倒した連中って、ひょっとして蛇の尻尾。末端の連中だったんじゃ」

 謙吾の呟きに、行彦は答えられなかった。

 二人は、学園祭を満喫することなく、ラーメン屋で二人侘びしく食して帰宅することとなった。

 その後、この界隈で暴れ回っていた不良集団が、学園祭の日に突如解散したというのを風の噂で耳にした。

 特に、その実行犯として動いていた連中が病院送りになった。

 その理由を知る者は誰もいなかったし、語る者も居なかったらしい……。

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