第2話

 


 篠宮 誠 (しのみや まこと) 20歳。父親譲りの整った顔立ち、身長171cmと女性としては高身長で、スラッとした身体のフォルムはモデルの様な体型。


 普通にしていれば美人なのだが身だしなみに頓着せず、ガサツでズボラで男勝りな気性と口調で、今まで男子に女として見られた事は少なく、男性と付き合った事も、男性に恋心を抱いたこともないが誰にでも明け透けな態度が好感を持たれる事が多く、男女共に交友関係は広い。


 その中でも誠が10歳の時に実家の隣に引っ越してきた八雲とは付き合いも長く、八雲とは親友と言っても過言ではなかった。






 「おい、ちょっと待てヤクモ。両親に認めてもらうって言ってたけど、お前んとこのおじさんとおばさんは私の事知ってるだろ。恋人のフリなんてすぐバレるじゃねーか」


 マコトはヤクモの後ろをついていく形で歩いていた。どうやらヤクモの実家に向かって歩くらしい。


 現状が未だよく理解できていないマコトだが取り敢えずヤクモの偽の恋人役になる事にした。というのもヤクモ曰く地球から異世界に来たらしいのだがすぐに地球には帰れないらしい。


 異世界から地球に帰るための魔法は次に使えるまでニヶ月以上かかるとヤクモから説明を受けた。なんか引っかかる事が多いけど、仕方ないからそれまでは幼馴染の我儘に付き合ってやる事にした。


 「えっ?あぁ、あの2人は私の本当の両親じゃないのよね。両親のフリして私の生活のサポートをしてもらってたのよ。まぁ、レンタル両親って感じかしらね。因みに2人とも異世界人よ」


 レンタル両親ってなんだよ、とか思いつつ他にもマコトがヤクモに質問する形で歩きながらの会話が続いた。


 今いる異世界はロシュタリアという名前の世界、今いる場所はファトラス王国、そして今2人が向かっているのはファトラス王国の王都アーデレート。


 ヤクモの口から次々と聞いたことのない名称が飛び出し、チンプンカンプンのマコトは、混乱しつつも質問を続けた。


 「何かあんまり理解出来ない話ばっかだな。そもそも何でお前は地球......っていうか日本に来る事になったんだ?」


 「あー、それね。話すと長くなるから簡単に説明すると地球の知識とかをこっちの世界に持ってくる事が目的、かな」


 ヤクモの家系は、地球とロシュタリアを行き来する事が出来る魔法を使える人間が時々生まれる。


 ゲートと呼ばれるその魔法を使える人間は地球に行ってその知識、技術、文化をロシュタリアに還元する事が宿命だと話した。それはロシュタリアの創造神ミシュタルが定めたものでロシュタリアに生きるものにとって非常に大事な事だと言った。


 ゲートの魔法にはいくつか制限があって一回の魔法で地球とロシュタリアを行き来できるのは魔法が使える本人とは別に2人のみ。


 物質については直径1mちょっとしかない円形のゲートに通るものであれば行き来できる。人とか物とかゲートを通すと次にゲートを使えるようになるまでの時間が変化し、人であれば1人通すと一か月ぐらい、2人同時に通すと半年程。


 これが物になると通す物の種類によって変化する様で服だと1週間ぐらい、本だと種類によっては10年ぐらいゲートが使えなくなってしまう物もあるのだとか。物についてはどれがどのくらいゲートが使えなくなるか、その基準すら分からないようだ。


 「だからゲートが使える人間は地球に行って勉強して覚えた事をこっちに戻って伝えた方が早かったりするわけ。本当は本とか送れれば勉強せずに済むんだけどなぁ」


 「あー、話が摩訶不思議過ぎてて全然理解が出来ないわぁ。てか、戸籍とかどうすんだよ?もしかしてお前戸籍ないの?」


 「え?戸籍?うーん。知らない」


 いや、知らないって......。じゃあどうやって今まで生活してきたんだよ、と更にマコトは混乱した。


 「まぁ、いいじゃない。その内分かるでしょ。それより今はマコトに男装してもらわなきゃね」


 他にも聞きたい謎が多かったマコトだがこれ以上はパニックになりそうって言うか段々しんどくなってきた為、考えるのをやめる事にした。


 これからの予定として王都アーデレートについてから服屋に行って服を買い着替えてヤクモの両親に挨拶に向かうとヤクモは説明した。




 「あっ!マコト!見えてきたわよ、アーデレート!」


 長閑な雰囲気の野原が過ぎ、小高い丘を越えるとヤクモが指差す先には、小高い丘の頂上から少し見下ろす形で、彼方には沢山の建造物が広範囲に規則正しく集まっていて、その外側を巨大な防壁がぐるりと囲んでいた。


 そのかなり大きな都の中央には白亜の城が聳え立ち、神々しく美しいその佇まいが際立って見えた。マコトは都の姿に圧倒され、それと同時に異世界に自分が今立っているという事に半信半疑だったが一気に現実感が増した。


 久しぶりだわ、とはしゃぎながら少し歩調が早くなりウキウキ気分に見てとれるヤクモの姿を見て、マジで異世界、マジでヤクモって異世界人なのかと、驚きながら呟いた。

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