硬派で重厚なファンタジー小説

 第343話(レビュー執筆時点での最新話)までを読んでのレビューになります。

 この作品の魅力は、落ち着きのある文章と重みのあるストーリーにあります。
 作中には読者受けを狙った萌えの押し売りや浮ついた恋愛要素は見受けられず、流行に乗っかっただけの紋切り型なストーリー展開もありません。
 我々読者はパウロ先生が創造した独自の世界を冒険することになります。
 ファンタジー以外の過剰な要素がチラつかないため、次々襲いかかる困難と先の見えない展開に固唾を飲みながら、主人公アリエルとその仲間たちの物語を純粋に楽しむことができます。
 元々、読書は書籍派(一般小説)でしたが、それと近い感覚で読むことができました。

 第1話は慣れない用語ばかりで戸惑うかもしれませんが、第2話以降の本編では初めて出る用語についてきちんと説明があるため心配はいりません。
 こういった用語に加え、情景や物の描写には世界観を壊すものがなく、しっかりと物語を支えてくれています。
 応援コメントにも書いたのですが、これらの描写を含む情報量の塩梅が絶妙です。多すぎず少なすぎず、物語の進行の妨げにならないちょうど良い量となるよう調整されています。

 舞台となっているのは容赦のない暴力と死が身近に存在するかなり厳しい世界です。その中を生き抜く物語なので、常に緊張感があります。
 望まない略奪に手を貸さなくてはいけなかったり、弱い者が聞くに耐えないほどの惨い仕打ちを受けていたり、綺麗事だけでは済まさなれない世界なのです。
 仲間同士の絆を感じる場面が唯一ホッとできるシーンと言えるかもしれません。
 残酷描写は生々しいです。苦手な方はご注意ください。

 レビューは以上です。
 読後に確かな満足感を与えてくれる貴重な作品をありがとうございます。これからも応援しています。