第8話(最終話)「素敵な恋人」

私が彼から離れた七つ目の理由、私に素敵な恋人が出来たから。




「アリーゼ、怖くなかったかい?」


フリード様が私の手を取りそっと握りしめた。


「平気よ、フリード様が守ってくれるって信じていたから」


見つめ合う私たちを見て、お父様が咳払いをする。


「分かっていると思うが、君たちはまだ婚約前だからね」


「節度のあるお付き合いをしてね、アリーゼ」


両親が近くにいたことを思い出し、私はフリード様からパッと体を離した。


短期留学中、ローレンツ家にお世話になっている間、私とフリード様と恋仲に……!


フリード様と一緒に帰国したのも、両親と婚約について話し合いをするためだ。


「しかし彼がアリーゼの初恋の相手だったとはね」


フリード様が窓の外を見て、眉根を寄せる。


窓の外を眺めても、もうナヨタ子爵家の馬車は見えない。


「昔の話です。

 黒歴史ですわ」


抹消したい過去だ。


「これからは俺がアリーゼの側にいる。

 コニーはもちろん他の男も近づけさせないよ」


「フリード様、では我が国の学園に通ってくださるのですか?」


「新学期から通うつもりだよ。

 転入手続きはすでに済ませてある」


「嬉しいわ。

 フリード様と一緒に学園に通えるのね!」


「まだ婚約の許しを出していないのに、フリードくんに外堀から埋められてしまいそうだよ」


お父様が寂しげな顔でかいそうを漏らした。


「俺は次男なのでクルツ子爵家に婿入りできます。

 そう悲しまないでください、クルツ子爵」


フリード様の言葉にお父様は複雑そうな顔をしていた。









それから程なくして、フリード様がクルツ子爵家に婿入りするという条件で私の婚約が決まった。


フリード様は新学期から私と同じ学園に通うことになった。


容姿端麗で文武両道なフリード様に、学園の女生徒たちはあっという間に夢中になった。


でもフリード様は他の女子には見向きもせず、私の側にいてくれる。


同じ頃、ベッヒャー伯爵家は借金が膨らんで破産。


ベッヒャー伯爵家に投資していたナヨタ子爵家も共倒れ。


ベッヒャー伯爵家もナヨタ子爵家も爵位を返上した。


コニーは学園を退学し、両親と共に田舎に引っ越した。


グリゼルダ様が没落後、どのような人生を歩んでいるのかは知らない。


地方の娼館で彼女によく似た少女を見たという話もあるが、真相は定かではない。


一つ言えるのは、平民になった彼らに二度と会うことはないということだ。





―終―



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「私が彼から離れた七つの理由〜顔がいいだけの幼なじみなんてもういりません!」完結 まほりろ @tukumosawa

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