第7話「さよならコニー」

コニーが私の肩に向かって手を伸ばす、しかし彼の手が私に届くことはなく……。


「痛っっ……!! 何者だ!

 僕は子爵家の長男だぞ!

 使用人風情が手を出してただで済むと思うなよ!」


コニーは己の腕をひねり上げている男に向かってそう叫んだ。


「誰って、俺はアリーゼの恋人だ!

 このゲス野郎!」


「ありがとうフリード様、助かったわ」


私の部屋にいたフリード様が、コニーに襲われそうになった私を助けてくれたのだ。


コニーは部屋の外の使用人を下がらせたが、私の部屋の中にはフリード様とメイド長と執事長がいたのだ。


コニーは、部屋の中に私しかいないと思い込んでいたらしい。


「部屋の中にこんなに人がいたなんて……!

 僕はお前とふたりきりで話がしたかったのに!

 僕を騙すなんて、この卑怯者!!」


コニー様が喚いている。


卑怯も何も確認しなかったのはそちらのミスだ。


私が扉を開けたとき、三人には扉の死角に隠れて貰ったので、こちらにも多少彼を騙す意図はあったが。


「か弱い私がたった一人で、あなたみたいな最低な人間と対面するわけないでしょう?」


「君の話はすべて録音させてもらったよ。

 後でクルツ夫妻にも聞いて貰おう」


フリード様はポケットから録音機を取り出した。


フリード様は機械の開発もしているのだ。天才すぎる。


「コニー・ナヨタ子爵令息、今日限りあなたとの縁を切ります。

 もうあなたを幼馴染だとは思いません。

 二度と私に話しかけないでください。

 そして二度と我が家の敷居を跨がないでください」


私が冷然と言い放つとコニーが顔を真っ赤にし、いきり立った。


「お前がなんと言おうと、僕の両親と君の両親は仲良しなんだ!

 君と僕は必ず結婚する!」


コニーはフリード様に拘束されながらなおも吠えている。


いっそのこと縄でもかけてやろうかしら?


「残念ながらそれはないよ、コニーくん」


「おじさま、おばさま……!」


「ナヨタ子爵夫妻との交渉は決裂した。

 もう彼らは私達の友人ではない。

 先に関係を壊したのは君だよ、コニーくん。

 娘にパーティーで恥をかかせておいて、うちとの関係が続くと思っていたのかね?

 だとしたらクルツ子爵家も舐められたものだ。

 君はもうアリーゼの幼馴染ではない、赤の他人だ。

 二度と我が家の敷居を跨がないでくれ。

 これはお願いではない、警告だ」


お父様に睨まれ、コニーはガックリと肩を落とした。


普段優しいお父様が怒るなんて、彼は想像していなかったのだろう。


コニーは執事な拘束され、屋敷の外に連行された。


先に我が家を追い出されていたナヨタ子爵夫妻と共に馬車に乗り、家族三人で帰って行った。


さよならコニー、二度と話すことはないでしょう。


同情はしないわ。あなたが自ら招いたことなのだから。




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