うししモンキッキー

@ac-to

第1話 接合店 どこからどこへ

 僕は見た。何を……?

 それはだ、まあ話すと長くなるが、大体、章で言ったら230章くらいになるだろうか…… まあ、かいつまんで話をするとするか。




 それは小一時間前……

 いつものように昼食を終えてフライドポテトを二本わざと残して、回収コーナーのあの子の前にぽっそり置いてみたのである。

「あ、ありがとうございました!」

 あの子の声……! なんて聡明でなんて笑顔なんだ! まさにカイワレ大根の茎を丸ごと引っ張ってそれを丹念に熟成を重ね、見事に料亭一式に並ぶ超豪華ディナーに並ぶ気品の美しさ! そう、大根に例えたのはものの見事にフレイズワークに合っているのだが、それよりも、茎、そう茎こそが僕の……いや、何でもないんだ……



 そうだ、僕には夢がある。あの子の食卓に並んでいる料理の一品をぜひお頼み申したい。



 それだけなんだ……



 だが、まてよ。本当にそれでいいのか……? それで本当に僕のことをスグル君って頼りになる、かっこいいって横に頷いて、プイってすねた顔で嘘をつき、そして、そしてその日の朝に、……一緒に……下校しちゃう……ううん、これは彼女の嘘だ。



 洗い物の音がけたたましく響く。

 残り物のフライドポテト二本がものの見事に青いポリバケツに捨てられる、

 ねえ、君知っているのか……?

「それ、僕の大事なフライドポテト二本なんだけど……?!」

「はあ、お客様のフライドポテトは本日をもって閉店いたしました」

「いえ、そうじゃなくて、試食コーナーによくある……」

「試食コーナーは地下一階にございますよ」

「え、君三十五から四十二歳??」

「まあ!」

 僕の視力は下から2,0だ。好敵手が突然現れたらしい……

「先ほどの抜群の容姿端麗、知慮聡明な十九歳バスト83ウエスト54ヒップ、、いえ、そうじゃなくて……えっと、いやそれほど僕は詳しいわけでは……」

「ちょっと、お客様がお呼びですよ!」

 え、あたしですか?

 呼ばれて出てきたのはバスト83の彼女だ! 一応前振りとして断っておくが僕は女性偏見のある輩ではない。むしろ母性愛保護主義者だ。「えっと」

「本当にごめんなさい、お客様のお残し物と思ってしまって……」

「いえ、突然に押しかけてしまい僕の方も申し訳なく思っております…… ですが、もし良かったら代りのポテトなどいかがでしょうか……?」



 沈黙。



 流しの音が少し止んだ気がする。きゅっきゅ…… ねえ、君、君の瞳に映っている僕の芽の色って何色……?

「え……」

 あー----!! 聞こえてしまった!! 「しまっ」

「違うんです、写るんです、そうなんです、実は昨夜妹のあやが熱を出しましてね…… それも49°ときわどい熱をたくさんたくさん出してしまって我が家の光熱費が三倍ほど跳ね上がったのですよ! そしてですね、そうだな、今度は弟のやつが18°の瀕死を迎えてたった今その帰りなんですよ!」……と、僕はねっとり彼女の顔をちらりほらりとほっこりと……

「君、もう上がっていいよ」

 店長が僕たちに大サービスをする。この度は本当にお日柄もよく大変とても……ウエストが締め付ける……うう……


「分かりました。今日一日私のお供に付き合ってください」




 そして、今僕は彼女の前にテーブルを挟んでエスコートしている。

 うう、ついうっかりと僕は聞きそびれてしまう……「君の……何センチ?」

「5640インチでございます」

「そっかあ、僕はてっきり……」

 恋バナの話かと……

「おまたせしました、バナナカスタード・パフェでございます」

 店員の運ばれたこのカフェは彼女の瞳にまっすぐに映る……「頂きます!」

 そっかあ、お腹がすいていたんだよね、うんうん、よく食べよく寝る…… この分だと明日辺りはきっとマレーシアでハネムーンってところか……

 いや、だが待てよ、今日並んだ店でもうすでに三軒目、日が暮れるどころかもう午後九時四十五分だ……「君、門限は……?」「あ、それあたしんち関係ない」



 パクパク



 パクパク



 僕はその時見逃さなかった! 彼女のスイーツの底にはみどりっぱの茎が残されていたことを!!


「ご馳走様でした。あたしの可愛いベイビーちゃん」



 僕の家庭園菜に使っている大切な緑の茎はいつかきっと……!!

 彼女の携帯が鳴る。

「もしもし、うん、今ね、お客様一人サービスが終了したところ。八時には帰るから。大丈夫、体調はすこぶるOKだよ。まだまだいけそう。……愛してる。ん」

 僕は財布から七万円を出してそのまま帰宅したのである。

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