皆様は『癌』の英訳をご存じでしょうか? 『Cancer(キャンサー)』——カニです。
諸説ありますが、癌がこのように呼ばれるようになったのは、古代ギリシャを生きた医学の祖たるヒポクラテスが、切り取った癌細胞のスケッチをしている際、『カニのような(カルキノス)』という記述を残した事が由来しているのだとか……。
切り刻んだ癌細胞が他の組織を侵食している様を見てそう思ったのか、はたまた、その全体像を見てそう思ったのか……ヒポクラテスがどのように癌を見て、カニと関連付けたのか——。それは現代を生きる我々にはもう分からない事です。
本作『禍穢翼のブリュンヒルデ √イリーガル・アーカイブ/方舟』は、正しくカニの手足のように世界を侵食する世界の癌細胞たる怪物——『キャンサー』を代表とした、様々な悪辣なる者共と戦う少女たちのポスト・アプカリプスとなっております。
自分はまだ読み始めたばかりですので、詳しい事は申し上げられませんが……非常に良く練られた世界観とその世界で翻弄される主人公たち、そして、主人公たちとは相反し世界に嫌われた敵達との緊迫した戦闘シーンが魅力です。
文字通り、命を代償として敵を討つ彼女たちの戦いを皆様も一緒に読んで見ませんか?
——まぁ、それはそれとして……。
やっぱりリボルバーってカッコいいよね! 銃剣なんてつけたら最強だよ!
昨今のラノベ界隈では、異世界ファンタジーとラブコメが二大巨頭となっています。カクヨムもその例に漏れません。無論それらにも傑作は多数ありますが、本作はどちらかというと「アークナイツ」「ブルーアーカイブ」といったスマホゲーで見かけるような、ミリタリーベースのポストアポカリプスファンタジーです(あくまで文明は残っているので、ポストアポカリプスは少々言い過ぎかもしれませんが)。
本作はダークファンタジーゆえのシリアスな雰囲気に満ち溢れていますが、少女達、そして彼女らの感情のやり取りが花を添えています。そのおかげで、ハードボイルドすぎない塩梅に整えられているのが魅力だと思いました。
物語はまだまだ序盤も序盤ですが、一歩ずつ着実に展開していると感じました。スマホゲーではまま見られるものの、小説ではあまり見られない作風(一番近くて「86 -エイティシックス-」か?)なので、異色という点でもこれから注目できる作品です。