3-7
「やはりこの事件の魔女は僕だったらしい。間接的とはいえ、僕が持っていた薬で彼を殺してしまった」
連行されていくホプキンスを見ながら、ウェントワースがぽつりと呟いた。
ホプキンスの部屋からは、多数の未成年のわいせつな写真が見つかった。他にも性暴力を受けていた生徒からの証言も取れたことでホプキンスの逮捕に至った。ジョン・ロウの事件については警察がいい方向に導いてくれるだろう。
レナードが躊躇いがちに口を開いた。
「君はジョン・ロウのことを恨んでいるか? いや、答えなくていい。忘れてくれ」
ウェントワースは空気を目一杯吸った後、答えた。
「僕は彼が死んだと知った時、内心ほっとしたんだ。彼を見かけるたびに渦巻くこのやり場のない感情をもう持たなくて済むって。涙も出なかった。そうだな……恨んでいないといえば嘘になる。本当は、殺してやりたかった」
レナードが幾分か間をあけた後にこう返した。
「……魔女の秤というものがある。中世時代の魔女狩りでは魔女は空を飛ぶために体重が極端に軽いと考えられていて、秤に何冊も乗せられる分厚く重い聖書よりも軽かった場合魔女とされた。だが、1500年代につくられてから現在に至るまで、この秤で魔女と認定された人物は一人もいない」
ウェントワースが首を傾げた。
「一人も?」
「君も秤に乗ってみるといい。君はおそらく魔女じゃない。……ウェントワース、君は彼を許さなくていい。そして同情もしなくていい。君が彼を殺さなくてよかった」
夏の穏やかな時間が過ぎる。
二人は死者への追悼のため、静かに目を閉じた。
魔女の葬礼 小野 玉章 @Riisu
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