はじめてのバイト

結騎 了

#365日ショートショート 308

 社会に出た経験がなく、数年も部屋に閉じこもっていた息子。それがまさか。コンビニのバイトに受かったと言い残し、仕事に出ていったのだ。

 何も手につかず、玄関に目をやること数時間。やっと息子が帰ってきた。不器用で、人付き合いは苦手だけど、とにかく前向きに育った可愛い息子。ああ、大丈夫だったの、あなたの初めてのお仕事は。

「そんなに心配しないでよ、母さん」

 息子は笑みを浮かべていた。

「でも、やっぱり心配よ。だってあなた、仕事の経験なんて全く無いんだもの。大丈夫だった? 負担はなかった?」

 私の再三の問いかけに、息子は笑顔で頷いた。

「うん、大丈夫だったよ。負担があったとすれば、お客さんかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

はじめてのバイト 結騎 了 @slinky_dog_s11

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説