162種目 チュウゴクアミガサハゴロモ
近年、ヒアリをはじめとして外来種の話題がネットに上げられることが多くなった。
ただ、外来種の情報が増えたように見えるのはネットの発達のせいで、それがなかった20世紀後半にも多くの外来種が報告されている。
外国と交流があれば、外来種が入ってくる可能性が生じる。それが日本に定着するかはまた別問題であるが。
だから、もっと古い時代に入って来たと考えられるものもいる。
例えば、モンシロチョウは江戸時代以前に入って来たとか、ダイコンなどのアブラナ科栽培種の渡来と主にやってきたなどと諸説ある。しかし、さすがに時代が古すぎて確定するのは難しいようだ。
今回は、近年日本に入ってきて、急速に分布を拡大したと考えるものの一種について。
https://kakuyomu.jp/users/r_hirose/news/822139839981082434
チュウゴクアミガサハゴロモ。
写真だけみてもよくわからないかもしれないが、ここに写っているのは大半が前翅で、左側に頭部がある。
セミを小さくして、翅だけは三角形に大きく広げたような形をしている。
今年2025年、神戸市南部で前年に広がったという別の外来種を探していた。その過程で、海に近い公園で茶色いハゴロモを見つけた。
「あれ? こんなところにアミガサハゴロモ? いや、まさか……」
こんなふうに、最初はよく似た
在来種とは、外来種とは違い古くから日本に生息している種を指す。
ただ、モンシロチョウみたいに大昔に入ってきたものが外来種と認識されていない、などということもあるのかもしれない。
ハゴロモ科は在来種、外来種を含めて山地や農地などで20種ほどが日本から記録されている。
外来ではないアミガサハゴロモは、前翅のほとんどが濃い茶色で、前縁に細長い三角形の白い紋があり、一見この外来種によく似ている。名前の由来は、時代劇で武士がかぶっている編み笠だ。羽衣を着て編み笠をかぶっていると想像するとわけがわからなことになるが。
翅の前縁と書いたが、これは広げると前側になるためだ。写真では下になっているし、木の枝などにとまるときもこの部分が枝に触れることになるため、下側に見える。
この白い紋が、アミガサハゴロモでは翅の内側に向かって伸びる細長い三角形になっているのに対し、外来種のチュウゴクアミガサハゴロモでは前縁に沿って横に広がっている。
また、色合いや翅の形も少し違う。
このチュウゴクアミガサハゴロモは2018年ごろから日本でも見られるようになった。
なお、外来種の方だけが害虫化しているが、これは利用可能な植物の範囲によるらしい。
チュウゴクアミガサハゴロモの方は200種以上の木を利用でき、その中にはリンゴやミカン、カキ、ブルーベリー、ブドウをはじめとして果樹が多く含まれている。
産卵の際に枝を傷付けるほか、汁を吸って余分な糖分を排泄するため、それがもとでカビが発生し「すす病」という病気になることもある。
アミガサハゴロモの方は、カシ類の枝から汁を吸うが、それ以外の木を利用することはない。
主に樹林の周りで見られ、農地や草地、都市部では少ない。カシ類はアカガシやシラカシなどが都市公園の植栽にもなっているが、その周りでアミガサハゴロモをみたことはない。
初めの方の話で、都市公園でチュウゴクアミガサハゴロモを見つけたときに疑問を抱いたのはそのためである。
今日の昆虫 広瀬涼太 @r_hirose
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