第33話「笑顔溢れる世界に…」

龍神ドライガーと邪神ゴルゴディウスの激闘が終わって3ヶ月が過ぎた……。


季節は11月の中旬。

すっかり寒くなっていた。


-警視庁-


この日、ゴルゴディウスとの戦いで重症を負っていた火村が退院し、仕事に復帰する日だった。

火村は出勤すると、早速特殊犯罪対策室にやってきた。

「おはようございます!」

火村は元気な姿を見せようと張り切って挨拶をした。

「おお、火村!今日から復帰だな。また頼むぞ!」

小田が出迎えた。

「小田さん……すみません……ご心配をお掛けしました」

「いやいや……あっ、お前のGアクセラーも修理から戻って来てるぞ……と言っても、もう使う事は無いだろうが……」

「あれから3ヶ月……何事も無かったですからね……本当に……平和になりましたね」

「ああ……」

「あれ?ところで川島は?」

火村と小田がそんな話をしていると、丁度川島が戻って来た。

「あっ!火村君おはよ!もう大丈夫そうだね」

「ああ、もう大丈夫だ!今日から復帰!」

火村と川島も顔を合わせる。

「葛城警視何だって?」

小田が尋ねる。

川島は葛城警視に呼ばれて会議室に行っていた。

「それが……異動を言い渡されました……」

「そっか……」

「え?異動?どういう事ですか?」

小田が事情を説明する。


ゴルゴディウスが倒されクリーチャーの出現は無くなった。

その為、この3ヶ月の間に審議され、特殊犯罪対策班は解散が検討されていた。

解散と言っても完全になくなる訳ではなく、メンバーを再編成し、人間の犯罪者を相手に捜査を進める特殊犯罪対策班となるだけであるが……。

小田はそのまま特殊犯罪対策班の班長となり、川島は家から近い場所の交番勤務となる事が決定した。

入院中だった火村はまだ異動先が決まって居ないが、近い内に決定が下るだろう。

「皆……バラバラになっちゃいますね……」

川島が少し寂しそうに言った。

「そうだな……でも、俺達が一緒に仕事をして戦って来た事には変わり無い。俺達が仲間だった事実は変わらないさ」

小田がそう言って励ます。


平和になった東京に人々は戻って来ていた。

邪神から世界を救った龍神伝説により龍神が祭られる龍宝神社にはブームが来ていた。


正信は神主として忙しい日々を送っていた。

正信を手伝う為、アルバイトを兼ねて日菜乃が巫女をしていた。

龍宝神社では厄払いのお守りが人気で、売り上げに貢献していた。

神社の境内にはドライガーのイラストが入った絵馬が飾られ、ドライガーのストラップ何かも作られていた。

因みに絵馬やストラップは日菜乃のアイデアである。

「ふぅ~……今日も凄い売れ行きですよ……」

日菜乃が正信の元にやって来た。

「まさかこんなに人気が出るなんてなぁ……日菜乃ちゃんのアイデアのお陰だよ!」

「そう、思うなら~時給上げて下さいよ~」

「それはダメ」

「も~!」


そこへ近所の子ども達がやって来た。

「ねぇねぇ!神主さん!龍神様ってどこにいるの?」

「うん?さぁ……今はどこに居るのかな~?でもね、きっと世界のどこかで君達の事を見守ってくれてるよ~」

「ふ~ん」

また、子ども達は走って行く。

「前みたいに勇一さんが変身してヒーローショーでも、やったらもっと人気出そうなのに」

「まぁ……仕方ないさ……」


今度は香織が訪ねて来た。

「こんにちはー」

「あっ!香織さん!いらっしゃい!」

香織のカバンにもちゃっかりドライガーのストラップが付いていた。

「おお……どうした?香織ちゃん」

正信が出ていく。

「コレ、お母さんが持って行けって……煮物作ったからお裾分け」

「おお!肉じゃがか……久しぶりだな。ありがとう」

正信は香織から肉じゃがを受けとる!

「はい!こっちは日菜乃ちゃん……お父さんと食べてね!」

「あっ、ありがとうございます……わざわざウチの分まで……」

「お母さん味付け濃いから……口に合わなかったら無理して食べなくていいからね」

「いえ、いつも美味しく頂いてますから……ご馳走様です!」

日菜乃と香織はすっかり仲良くなっている様だ。


その頃、火村は葛城と一緒に藤波博士の研究所を訪れていた。


「藤波博士……本日無事火村は退院しました」

葛城が藤波博士に報告する。

「そうかそうか!いやぁ、無事退院出来て本当に良かったよ!」

「博士のGTN-1が無かったら死んでました。本当にありがとうございました!」

火村は改めて藤波博士にお礼を言う。

「いやいや……大した事はしてないよ」

そして、火村は『Gアクセラー』を藤波博士に返す。

「藤波博士……コレが無かったら本当にいつ死んでたかわかりません……本当にありがとうございました。でも……戦いが終わった今……コレはお返しします。もう二度と、変身しなくても良い世の中にするため」

「そうか……じゃあ……コレは預かっておくよ」

藤波博士は『Gアクセラー』を受け取った。


そして、葛城と火村は藤波研究所を後にした。


「葛城さん……特殊犯罪対策班は解散と聞きました。これから……自分はどうすれば?」

「もうじき正式に決定すると思うが……私は君を特殊部隊のSATに推薦している。恐らく通ると思う……」

「え?僕がSATに?」

「ああ……GTN-1の装着者としてクリーチャーと戦って君の経験が一番活かせる場所だと思うんだ。もちろん君にも断る権利はある……だから考えていて欲しい」

「葛城警視……ありがとうございます!光栄です!!」

「フッ……まぁまぁ、そんなに固くならなくても……帰るぞ……」

「はい!」


平和になった世界で……人々はそれぞれの人生を歩んでいた。


そして……

ここは、どこか……日本から離れた遠くの国……。

澄んだ青空と、美しい青い海がどこまでも広がっている白い砂浜……。

そこに立つ一人の男。


「う~ん……!やっとここまで来たー!」

両腕を伸ばし伸びをするのは……。

勇一だった。


3ヶ月前……。

ドライガーとゴルゴディウスが激闘を繰り広げ、お互いの超特大の光弾が激突し、大爆発が起こった。

その爆発の中で……。

「龍神……貴様が我を倒そうと……人間の心に闇が尽きる事はない……そして……闇がある限り我は何度でも蘇るぞ……」

「確かにそうだよな……でも……人間の心にあるのは闇だけじゃない……だから、人間の明るい未来を信じて……前に進むんだー!!」


この大爆発が起こった後……ゴルゴディウスは消滅していた。

そして……勇一の姿も無かった。


火村はボロボロの体にムチを打って必死に勇一を探した。

その場に居た警察官や自衛隊員も勇一を探した。


誰もが、勇一の生存が絶望的だと感じ始めた頃……。

皆の前に勇一は帰って来た。

しっかりと自分の足で歩いて。


この戦いの後、勇一は会社を辞めこの世界をもっと見たいと言う思いに駆られ、世界中を旅していた。


砂浜に寝転ぶ勇一。

「あー……平和だねぇ……」


その頃、日本でも……。


正信は仕事が一段落して、休憩していた。

「日菜乃ちゃん、お茶入れたから休憩にしよう」

「はーい!」

2人でお茶を飲んでいる。

「あー……平和だねぇ……」

そういう所……そっくりな親子である。


「勇一……今頃どこに居るのかな?」

「さぁねぇ?あいつは少なくとも……世界を一周して来るまでは帰って来ないかもねぇ……自分が救った世界をこの目で見たいんだーなんて言ってさ……」


再び勇一は起き上がる。

「さて……行くか……まだまだこの世界を見きれてないからね……」

勇一は再び歩き出す。


恐らく勇一はしばらくは帰って来ないでしょう。

世界の美しさをこの目でしっかりと見るまでは……。

龍神ドライガーの物語はこれで終わります。


しかし、この世界の物語はこれから始まるのかも知れません。


いくつもの脅威に打ち勝ったこの世界では……これから多くの人の人生と言う物語が始まるのですから……。


-完-

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龍神ドライガー 山ピー @TAKA4414

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