第2話殺人犯に似ている隣人
ある時、私は長らく続く隣人の騒音トラブルから証拠を撮ろうと向かい側のマンションに移動し、証拠を手に入れた。
マンションに戻る時に偶然、その住人が出てきた。
私は初めてこの住人の顔見た。
住人はまるで『しまった!』というように瞬間的に顔を背け、そそくさと駐輪場に戻り何やら自転車にタイヤを取り付けだした。
私は何か違和感を覚えた。どこかで顔を見た気がしたのだ。
自分の部屋に戻り、しばし考えて思い出した。
パチンコ店に貼り出されている指名手配犯の一人に似ていると。
私は携帯を持ってメールしているふりをしながらその住人の顔を撮影した。位置的に横顔しか撮れなかった。
改めてネットで指名手配犯の顔を確認した。似ていると思った。
私は確信を得るためにひと月、できる限り調査した。
そしてこれまでの騒音内容を絡めて推理するとどう考えても怪しい人物に思えた。
①年齢は40代後半から50代前半。
②外に出ての仕事はしていない。出勤などはしていない。それどころか外出すらほとんどしない。たいていは家にいて何かこっそり作業している。
下にいる私にはよくわかる。
③これまでこの住人の騒音のたびに管理人にクレームを入れた。
管理人は事実確認のため部屋に灯りがついている時に戸口を訪問したが一度も玄関先に出てきたことはなかったらしい。
仕方なく、管理人は電話で対応していた。
④この住人は駐車場の車や人の出入りを常にベランダ側の窓からチェックしていた。
私は向かい側のマンション通路からその様子を何度か確認している。
⑤一度、警察車両のパトランプを取ったような黒と白の目立つ車両が駐車場隅に停まっていたことがあった。別件の警察か警備会社の車両かはわからない。
ただ、その日の夜から3日間、408からの音が、生活音がぴたりと止んだ。
私が推測するに何か危機を感じて一時避難していたのだと思う。
⑥部屋にいるにも関わらず電気を消している時がある。ベランダ側から見ると、この住人の部屋のカーテンは短いので、下からわずかに光が漏れる。
下にいる私にはわずかな物音でも住人がいるのかいないのかわかる。なぜか外側から電気の灯りは見えないのに、部屋に戻ると物音がしていた。玄関側の電気は点けていた。
私は怪しい人物と判断し、警察に詳細なメールを送った。
どんなことでも協力すると申し出た。
後日、ある県警の刑事から受理はしたが目撃情報が全国であり、時間がかかるとのことだった。
あれから2ヶ月が経ったが…未だにどんな結論に達したのか連絡がない。この間に私が調べた追加情報や、何か結論が出たのか連絡をもらいたいとメールにて送ったが返信はない。
この住人のおかしな行動は続いている。
夏場から、玄関ドアから外に向かって何か流した跡をみかけた。
秋に入り毎日のようにそれが続いている。この住人のドアの前だけだ。
でも、誰も不審には思わないのだろう。同じ階にいる住人さえ。
殺人犯に小池俊一という男がいた。こいつは岡山県の繁華街で街に溶け込み、年上の女と長年生活していた。逮捕されることなく病死した。
指名手配犯の頃の写真とはだいぶ風貌が変わっていたらしい。すれ違ってもわからないくらいに。
人は自分以外の人間には基本的には無関心だ。多くの犯罪者が街に溶け込んで生活しているのも納得だ。
そして警察さえ完全な正義とはいえない。汚職や怠慢は未だにある。
警察に幾度も相談したにも関わらず事件が起きて、結果的に命を喪った人もたくさんいる。
ニュースでもよく視ることだ。
警察は『緊急性は感じなかった』だの『対応に落ち度はなかった』だのと言い訳をする始末。
警察という組織が何のあてにも助けにもならないと絶望した被害者家族や身内もいるだろう。
何のための組織なのか?
何のために国民は税金を支払っているのか?
正義とは虚しいものだ。
それでもあの方が望むなら私は…。
と、ちょっと最後は格好つけてみた文章😎
捜査状況 るろうにつー君 @knight2106
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。捜査状況の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ひとりごと最新/龍宮真一
★7 エッセイ・ノンフィクション 連載中 96話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます