第二章:女王の瞳(8

お昼ごろには手術は終わり、ほどなくして女王様も目を覚ましました。


メイドが渡した手鏡を引ったくるようにして、自分の顔を映すや、女王様は、夢見るようにウットリと微笑みました。


ブライの言葉に、ウソはありませんでした。

女王様の瞳は、以前よりも、もっと大きく美しく、澄み切った明るい緑色に輝いていたのですから。



それから、また、数日がたちました。

すっかり機嫌をよくした女王様は、盛大なお祭りを開くことにしました。


王宮の広場の舞台で、楽団が陽気な音楽を奏でると、城下の町から集まった大勢の民衆が、ごちそうと葡萄酒ワインを手にして踊りだします。


そこで、高貴な青いドレスに身を包み、つややかな金色の髪に門外不出のブラックオパールの髪飾りをつけた女王様は、意気揚々とバルコニーに出ました。


人々は、割れんばかりの歓声をあげて、女王様を仰ぎ見ました。

そして、以前よりもっと美しさを増した大きな緑色の瞳に、誰もが息をのんで魅了されました。


女王様は、すっかりご満悦です。

愛すべき大勢の民衆に向かい、優雅に手を振ってみせました。

民衆の歓声と拍手は、いっそう大きくなりました。


そのときです。

女王様は、ふいに、右目の奥にを覚えました。


なにかが目の中でムズムズうごめいているような、そんなイヤらしいかゆみなのです。


女王様は、掲げていた右手をおろして、右のマブタをゴシゴシこすりました。

すると、今度は、その手にまでムズムズとした感触が広がってきたので、あわてて見てみると、そこには、微細な無数の赤い虫がうごめいていました。


真っ赤な血のシズクのようにも見える、小さな小さな虫なのです。


背後に控えていた侍従長は、女王様の異様な行動に驚いて、急いで前に歩み寄りましたが、たちまち、

「うわあああああああああーっ!」

と、あられもない悲鳴をあげて、転げるように逃げ出してしまいました。


ムリもありません。

女王様の瞳からは、血のシズクのような虫がゾロゾロと大量にき出しており、それが美しい白い顔をどんどん埋め尽くしていたのです。


恐怖はたちまち周囲に伝播でんぱし、異変に気付いた広場の民衆も狂ったように泣き叫びました。


その間にも、真っ赤な虫はとめどなく女王様の瞳からあふれつづけ、女王様の体じゅうを食い散らかしたあとには、城を覆い尽くし、右往左往しながら逃げまどう人々をあっという間に飲み込みながら増殖していき、広場を民衆ごと一瞬で真っ赤に染めたあとには、国じゅうすべてを侵食し、海をも覆い、遠くの国々も血の色に塗りこめて、この世界のあらゆる全てがなくなってしまったので、このお話も消えてなくなり、これで全ておしまいでs











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残酷な女王にまつわるエトセトラ こぼねサワー @kobone_sonar

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