第2ベタ 封印された魔法
私、コズエ。
夢に夢みる小学五年生の女の子。
今は、学校の昼休み。かくれんぼの最中なのさ。
「うしし。この図書準備室なら……」
本棚の奥に寝そべって、それを本で隠せば、そう簡単には見つかるまい。「かくれんぼの女王」の名を欲しいままにしてくれよう。
まずはスペースを確保するべく、バッサバッサと本を落としていったところ、落ちた一冊の本がぺカーッて光り出した。
「なにこれ?」
不思議に思ってのぞきこんだところ、突然、本から白い物体が飛び出してくる。
「コズエ! 魔法少女になってよ!」
羽根が生えた白いネコ。
しゃべっとる。
「君は、とんでもない魔力を秘めている。僕の封印を解いたことからしてもそれは明らかだ! 世界を救うには君の力が必要なんだ! だから、僕と契約して魔法少女になってよ!」
なんか知らんけど、めっちゃ勧誘してくる。
「世界の暗がりという暗がりには、魔女やら魔獣やら、万札携えたオッサンとか、危険がいっぱい潜んでいるんだ! このままだと世界が危ない! コズエ、魔法少女になって……ぎゃぁ!?」
私は、咄嗟にネコをふんづかまえた。
ちょうどそこに、ユカリがやってくる。
「コズエちゃん、み~っけ! これで『かくれんぼの女王』の名は私のものね」
「んなことはどうでもいい! 珍しい生き物捕まえた!」
ユカリに白ネコを見せてやるも、このやろう、キョトンとしたアホヅラしてやがる。
「珍しいって、ただのネコじゃん。ちょっと不細工なだけで、ただのネコじゃん」
「違う、違う。しゃべったんだって! ホラ、しゃべれ。さっきみたいにしゃべれよ! マスコミに売り飛ばしてひと儲けするんだから!」
口から手をどけてやるも、このネコ、ひとつもしゃべりやがらない。
「さっきまでの勢いどうした?! しゃべれよ、ホラ! 勧誘しろよ、ホラ! お前ならできる! 熱くなれよ!」
「コズエちゃん、私に『かくれんぼの女王』の名を取られたからってそんなウソ、いい加減にしなよ?」
「ちょ、おま……」
「さ~て、女王は他の者らを探しにいかねばならないのです。ごめんあそばせ」
「ちょ、おま、待てよ!」
ユカリは、鼻歌歌いながら準備室を出て行ってしまった。
「コズエ! 魔法少女になってよ!」
ここぞとばかり、ネコが勧誘を再開する。
「……てめえ、コラ。しゃべれんじゃねえかよ」
「他のニンゲンに僕たちの正体がバレたらマズいんだ。ヒーローは正体を隠すものだから。ほら、コズエ。早く魔法少女になってよ!」
「魔法少女になれば、『かくれんぼの女王』の名は、私のものになんのか?」
「なるなる! ならないわけがない!」
「キーくんは、私のものになんのか?」
「ならざるを得まいて!」
「いいだろう。ならば、契約してくれる……」
そう言った直後、私の体はむやみやたらと光り、恥ずかしいカンジのコスチュームに強制的に変えられた。
その後は、次のかくれんぼのときに一回、キーくんを籠絡するのに一回、年末ジャンボの一等前後賞を当てるのに一回、魔法をつかっただけ。
「もっと魔法を使ってよ」とか、「魔獣を倒してよ」とか、「魔法を使った代償」がどうとか、ネコがうるさかったけど、いっぱつ腹パン入れたらおとなしくなってくれたのでよかった。
ベタ展開クラッシャー~キヨシとコズエ~ ブーカン @bookan
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