ベタ展開クラッシャー~キヨシとコズエ~

ブーカン

第1ベタ 敵の幹部

 軍事力で世界支配をもくろむ悪の帝国軍。

 そんななか、レジスタンス軍に突如として参加した男。彼は、各地の戦線に参加し、功績をあげてきた。そしてついに、単身、帝国の本拠地に乗り込むまできていた。

 数々の敵、罠をかいくぐって進んできた男の目の前に、帝国軍の最高幹部、仮面騎士が立ちはだかる――。


「くっくっくっ……。まさか、強大な我が帝国に刃向かう者というのがお前だったとは、運命のいたずらというのは酷なものだな……」

「なんだと!?」


 仮面騎士は、おもむろに仮面を脱ぎ去る。

 その素顔は、けっこうなジジイだった。


「お、お前は……!?」

「判らんか? 父親の顔を……」

「?!」


 ジジイはほくそ笑む。


「無理もないか。三十五年前、お前はまだ赤ん坊だったんだからな……」


 ジジイは男の顔を指さす。


「その額の傷……。そう、その星型のアザだ。そのアザは、わが一族の男に代々現れるもの。私とお前とが親子であるなによりの証だ」

「……」

「さぁ、我が息子、ランスよ! 今こそ父の元に帰り、ともに帝国のため、尽力するのだ!」

「いや、キヨシだけど?」

「……え?」


 ジジイはもう一度、「え?」って言った。

 ホント、間抜けなツラで。


「え、ちょ、え?」

「俺の名前はキヨシ! キヨシだ! よろしくな!」

「……え? ランスじゃないの?」

「ランスなんか知らん。お前みたいなの、オヤジにした覚えもねぇ」

「えぇ~……?」

「俺のオヤジもおふくろも、今頃、車出してコス〇コに買い物にでも行ってんじゃねえかな? アイツら、毎週日曜出かけていってはアホみたいに買い込んでくるんだ。 食品ロスとか考えろ!」


 ジジイ、驚きのあまりに剣を落としちゃう。


「……え、じゃあ、なに? そのアザはなに?」

「ああ、これか。子どものころ、ブランコで切った」

「ブ、ブランコ……?」

「知らねえのか、ブランコ。ぶらんぶらん揺れる楽しいヤツだ!」

「いや、ブランコは知ってるけど……」

「それでな、コズエちゃんがこいでるとこに近づいてって、ガツンってわけよ。まぁ、ガキだったからな。危ないとかいう概念がないのよ。コズエちゃんのパンツが見たい、ただその一心だったんだよ」

「うん……。あぁ……そう……」

「あんときはオヤジにしこたま怒られたな。なんで俺が怒られんだよ。悪いのは公園にブランコ置いた行政だろうが! なぁ、ジジイ。お前もそう思うだろ?」


 ジジイは無言で剣を拾い、構える。


「……来い、キヨシとやら。貴様に目に物見せてくれる」

「帝国軍……。俺は、貴様らの野望を打ち砕いてみせる!」


 今、熾烈な決闘が始まる――。



 その結果、キヨシはボロ負けして、レジスタンスも結局ボロ負けして帝国軍は世界を支配したけど、政治がなんだかダメだったので、すぐに滅んだ。

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