な、なんだろう……? 吸引力はあるんだけど……謎な作品
- ★★★ Excellent!!!
リアル話し言葉みたいな会話のやり取りと文章の流れに妙に吸引力と説得力がある作品だと思います。この点に関しては上手く、その効果でしちにんのトムの臨場感のある朗読劇の流れとか、真穂君の小さい子の自由気ままな小説創作とか、作中作群にやけに入り込んでしまうところがあった。(なんというか、私も一緒にお話の朗読を聞いてるような感じがした)。タイプの違う三人の男子+ヒロインの過ごす日々は本当に楽しそうで、本当にただ日々を過ごしてるだけって感じなのに次へ次へと読まされて最後まで読んでしまった。
ただあまりに謎めき過ぎてて引っかかりが残るんですよね。作品タグも「あやかし」ってついてるし、一応ちょこっとキャラ背景が語られる衣澄さん&朔斗君はまだしも、律、真穂の存在が謎過ぎる。律と朔斗が語っていた「衣澄をこっちに巻き込んではいけない」的な会話とか、律の言ってた「自分と真穂がいるから朔斗に迷惑が……」的なアレとか、本編に入りきらなかったという番外編の「失敗」とか普通の日常系と言うには引っかかりがあり過ぎる、なんかある……って感じ。旅館泊まった時真穂が贈った絵とかも多分なにかのほのめかしなんだと思うけど……? 多分律と真穂に関しては普通の人間じゃなさそうとは感じた。
描きたかったのはおそらくキャラ達の日常で、それに関しては最初はなんなんだろうこのキャラ達?って考えつつもいつの間にか一緒に楽しんでしまう良さもあったんですが……謎が残る作品。
ちなみに作中作に関しては作者さんが短編集として別枠にまとめてるみたいなので、そっちだけでも読んでみると面白いと思います。しちにんのトムに関してはここだけでも本編読んだ方が臨場感あると思いますが。