第14話 握手、しよう


 上も下も横も、すべてが星空の空間で。

「本当にこの度は、ありがとうございました!!」

 キノもまた、直角で礼をする。

「助かりました~!!」

 あのあと、いきなり辺りが光ったと思ったら、またここに連れて来られたのだ。

「いいから、早く元の世界へ戻せ」

「ブレないねぇ」

 アタシと青さんは顔を見合わせて笑った。

「元の世界に戻りますと、こちらに来たときと同じ時間、同じ場所に戻ることになります。こちらの時間経過は関係ありませんので、ご安心を」

「良かった」

 ホッとお藤さんが息を吐く。

「それでは皆さん、よろしいですか?」

「あ、ちょっと待って」

 キノを止めて、アタシは二人に向き直った。

「何だ、いったい」

「最後に、握手しようよ。三人で!」

 手を差し出して言う。

「……いいよ」

 きょとんとしてから、苦笑を浮かべ、青さんも手を差し出す。

「まったく」

 お藤さんも、手を差し出してくれた。

「あれ? これって握手かい?」

「あはは、三人で握手って難しいね」

「ただ手を重ねているだけでは?」

 握っているのか、重ねているのか、何だかよくわからない握手の完成だ。

「……元気でね」

「二人も」

「ああ。元気で」

 ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ。

 三回強く握って、放した。

「それでは皆様!」

 今度こそ、キノを止める人は居ない。


 アタシたちは顔を見合わせて、ちょっと笑った。


「お達者で!」

 キノが大きな声で言った。


 光に包まれる。


 温かで、柔らかな光だ。

 いつまでもこうしていたいくらい、心地好い。

 でも、帰らなくちゃね。

 アタシはアタシの、戦場へ。


 光が、消える。


 恐る恐る目を開けるとそこは。


「……は?」


 上も下も横も空。

 朝焼けの空。


 ──そんなヘンテコ空間で。


 そして目の前には、同じ顔二つ。


「「「は?」」」


 遠くから、「この世界を助けて下さい」と、声がする。


 END.


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team自分!~多次元世界から集結した自分×2と一緒に魔王を倒します~ 飛鳥井 作太 @cr_joker

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