第12話
「これからも
「うん。だって私も一応、後宮妃よ。まだまだ未熟だし至らないところもあるけど、誰もいなくなって
「可哀そう、か。やっと言ってくれたね?」
「翠蘭は、可哀そうなものが好きなんだろうと思ってね」
「どうして? 蝉のことを可哀そうだと言ったから?」
「蝉だけじゃない。後宮を出る妃たちのことも可哀そうだと言って心を痛めていた。俺も可哀そうな目に合えば、少しは俺のことも見てくれるんじゃないかと思って」
「……! それで、いつも私にわざわざ妃たちにフラれた話をしに来ていたの?」
開いた口がふさがらないまま、私は令賢の両手を取った。
「ねえ、
「思ったことを?」
「そう。だから
そうか、と言って、
私よりも随分と背の高い
目に入ったのは、美しい三日月。
私はこれからも後宮で暮らして、できれば命が尽きるその瞬間まで、こんな三日月と
「
六年の時を経てやっと素直な気持ちを伝えあった私たちは、誰もいなくなった後宮を、夏耀殿に向かって歩いた。
(おわり)
私も一応、後宮妃なのですが。 秦 朱音 Ι はたあかね @書籍発売中! @akane_mura
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