エピローグ

「――――――はっ!?」


自室のベッドで、彼女は目を覚まし、飛び上がるように起き上がった。


周りを見渡すと、そこは紛れもなく自分の部屋でベッドの隣の机には母が遺した創作童話が置かれている。


「夢、だったのかなぁ……?」


さっきまで、御伽噺おとぎばなしのような、物語のような、奇妙な夢を見た。


カボチャの仮面をしたランタン持ちに、怖い魔女。鴉のような騎士さまと色んな登場人物がいて。


夢の中で、自分はちょっとした冒険をしたんじゃないかと思っていた。


「ゲホゲホ……」


持病から来る咳に、現実へと引き戻される。


「……そうだよね。あれは夢なんだよね。うん。夢だったんだ」


どんなに愉快ですごい冒険のような夢だったとしても、彼女の現実は辛いもの。ほとんどベッドの中から出られないような人生で、自分に幸福はないものだと諦めていた。


そんな憂鬱な気持ちと共に布団の中に入ろうとした。


「えっ――――――?」


ふと、布団の中に何かが当たった。


ごそりと中を見ると、そこには夢の中でカボチャの仮面の人に渡された、カボチャの人形だった。


「これ……」


その柔らかな手触りと、温かい感触。


そして、自分を守ってくれそうな。そんな安心感を与えてくれるような。


「――――――そうか。あれは……。夢なんかじゃ、なかったんだね」


自然と涙がこぼれ、ぬいぐるみを抱きしめる。


あの世界で、自分はとても大切なものをもらった。


これから自分は何をしたいのか。それももう決まっている。


だったら後は少しでもそれを実行に移すだけ。


「ありがとう、案内人さん。わたし、これから頑張って生きていくよ」


感謝の言葉を、ぬいぐるみ越しにもう一度伝える。


そしてもう一つ。


使いどころが違うかもしれないけれど、きっとこの言葉で締めたいと彼女は思った。


「ハッピーハロウィン。ジャック」


自分に大切なものをくれた妖精に、一生忘れない感謝を胸に秘めながら、少女はぬいぐるみと共に眠りについた。

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カボチャ男と少女のレクイエム 平御塩 @12191945

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