僕たちは病み人……。

　全体を通して口語調で書かれているので、非常に心地良く読むことができた。ともすると、軽薄な印象を与えることもあるが、この作品は口語調文章の良い所を全て詰め込まれていると思った。軽やかであり、コミカルでもある。喜劇には必要な技術が自然と身に付いているのだな、と感じた。

　また、主題の設定も良いと思った。斬新な切り口でテーマを掘り下げている。ああ、こういう手があったかと感心してしまった。最終的には原点に回帰してしまうが、すっきりとまとまっていて美しい。秀逸なオチであると思う。

　構想力にも富んでいる。的確な分量を的確な展開に割いており、引っ掛かるところがなく読み通すことができた。「A⇒B⇒C……」といった具合に、まとまった要旨が流れるように展開して行くので、全体を通してとてもまとまった作品になっている。ショートショートのお手本のような作品だった。