第9話 道端に落ちていた人形

 一向に家に帰りつけない話と言うのは、昔話でも出てくる典型的な物語の展開のひとつだ。昔話の場合の原因は狐か狸に化かされたと言うもの。もしかして、今の俺は化かされていると言うのだろうか?

 狐も狸もこの辺りにはいないはずだ。見た事がないし。


「何でだ?」


 道がループしている理由を何も思いつけなかった俺は、思わず振り返った。そうした理由は特にない。何となく振り返っただけだ。さっきまで歩いてきた道だ。何もないのは分かりきっていたはずなのに。


「え?」


 振り返った俺の目に異物が映る。さっき歩いていた時には気付かなかったもの。それか、さっきまでは存在していなかったもの。その謎の物体が俺の興味を掻き立てる。

 気がつくと、俺はそれが落ちているところまで歩いていっていた。


「何でこんなところに人形が?」


 そう、そこにあったのは可愛らしい人形だ。今どきの萌えキャラやちびキャラじゃない、昔ながらのオーソドックスな少年をモチーフにしたおままごとに使われそうな人形。

 普段ならこんな人形が落ちていてもスルーするのだけれど、異常な状況で異常な出現パターンで現れたこの人形に、俺は興味を抱かずにはいられなかった。


「おお~きれいなもんだ。よく出来てるなあ」


 俺は人形を拾い上げると、様々な角度から観察する。一通りクルクル回して気が済んだ俺は、改めてその人形の顔を確認した。可愛らしく作られているとは言え、そこは人形。どこか冷たい感じもして、少し寒けも感じてしまう。

 そうやって観察していた時、突然人形の閉じていたまぶたがカッと見開いた。


「うわあっ!」


 この突然の展開に、俺は人形を放り投げる。しかし人形は上手に着地したかと思うと、ポケットからナイフを取り出して俺に向かって突進してきた。余りにスピーディーな流れだったために、俺は一瞬反応が遅れる。

 そして、飛び上がった人形が勢い良く俺の心臓を刺した。余りに一瞬の出来事だったので、避ける事も防ぐ事も出来なかった。


「うがああああ!」

「キシシシシシ……」


 人形の顔が邪悪に歪む。こいつ、殺人人形だったのか。俺は人形に興味を持ってしまった事に後悔しつつ、もう時間は戻らない事を実感する。

 苦しみを覚えた俺は前のめりに倒れ、もう二度と立ち上がる事は出来なかった。



 狂気の呪い人形に殺されたエンド




 もう一度最初から

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330648990233938

 このエピソードの最初から

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649068856685

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