ただ家に帰るだけの簡単なミッション

にゃべ♪

ミッションスタート

第1話 いつもの放課後

 ゴールデンウィークが終わったばかりの風薫る5月の上旬、授業が終わり放課後を迎えた俺は筆記用具やノート類を詰め込んだカバンを手に、速攻で教室を出ようとした。


「ハルト!」


 聞き覚えのある声が背後から聞こえる。ここは当然無視だ。


「ハルト! おい! 吉川ハルト!」

「うっせーな! 名前をフルネームで呼ぶな!」


 安い挑発に思わす振り返ると、見覚えのある顔がマジ顔で俺をまっすぐに見つめている。木島サトシ、同じ部活に入っている特に面白みのない真面目男だ。このタイミングで言うヤツの言葉はいつも決まっていた。


「お前、今日も部活に来んのか?」

「気分じゃないんだよ……」

「お前才能あるんだからよ。辞めんなよ」


 サトシは心配そうな顔で俺を見つめ、それ以上は追求せずに教室を出ていく。ヤツは理解がよくて助かるぜ。俺は教室を出るとまっすぐに下駄箱に向かう。そして靴に履き替えると、そのまま最短コースで校門へと歩き出した。

 校庭では様々な運動部がキツい練習を繰り返している。多分あれが青春の1ページってやつだ。俺も1年の頃はちゃんとあの中に入っていた。でも今は――。


 2年生なってすぐくらいにやってきた謎のスランプ。何もかもが上手くいかなくなった。それで一度サボったら罪悪感が襲ってきて、それからはずっと部室に入れないでいる。きっとこのまま辞めちまうんだろうな……。


 校門から出ると、その呪いの糸がプツンと切れる。開放感で空でも飛べそうな勢いだ。気がつくと、俺は意味もなく両腕を上げていた。


「さて、今日はどうするかなぁ」


 寄り道をするか、まっすぐ帰るか。流石にどこにも寄らないのは早く家に着き過ぎるだろう。それもまた何か勿体ない気がする。ある程度通学路を歩いたところで、俺は――。



 空を見上げる

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330648990267674

 地面を見る

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330648990884893

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